コオロギ騒動 不確かな情報の拡散と企業側の対応
コオロギパウダー入りの商品を巡り、提携企業は風評被害に対し、法的措置も辞さないとしているそうです。Twitterを見ていると、不確かな情報をツイートしている人がたくさんいます。なぜ、情報を確かめずに拡散してしまうのでしょうか。
コオロギパウダー商品の提携企業
以下、J-CAST ニュースから一部引用です。
提携企業、昆虫食の大学発スタートアップ「FUTURENAUT」(群馬県高崎市)のサイトには、食用コオロギに対する考え方が書かれたページがあります。
たとえば、発がん性があるという情報については、下記のように書いています。
私もTwitterで発がん性に関するツイートを多数見ましたが、昨日の時点では論文を提示している人は見当たりませんでした。
以下、個人攻撃をするつもりはないので、実際のツイートを少しアレンジしたものを例として挙げます。
というようなツイートはありますが、どの研究かは書かれていません。
このようなツイートは、同じアカウントが何度もツイートしているのも気になりました。
どのニュースかは書かれていません。
↓
「らしい」というだけで、情報源不明。
↓
こういったツイートを見た人が、
などとツイートしてしまい、どんどん拡散されていったのだと思います。
このようなツイートが拡散されると、たとえ正しい情報だったとしてもデマ扱いされる原因となり、正しい情報が埋もれてしまう可能性もあります。
軽率なツイートやリツイートによって、多くの人が正しい情報を得ずに物事を判断する流れができてしまうことは、とても危険だと思います。
発がん性の根拠とは?
コオロギに発がん性があるという論文を探したのですが、直接書かれたものは見つけられませんでした。
「マイコトキシン産生真菌がコオロギから分離された」と書かれた論文(翻訳)があり、マイコトキシン(カビ毒)に発がん性を示すものがあることから、「コオロギには発がん性がある」ということになったのかなと推察しました。
カビ毒については、食品安全委員会メルマガ総集編に説明があります。
https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/sousyuhen.data/07.pdf
以下、一部引用します。
下記が翻訳された論文(概要)です。
ただ、この翻訳は日本語がかなりおかしいので、原文を探しました。「熱帯ハウスcrick」ってどう考えても変です。
下記が元の論文(2018年)です。
Tropical House Cricketsは、「熱帯性のイエコオロギ」ということでしょうか。( )書きの「Gryllodes sigillatus」は、カマドコオロギです。
「コオロギからマイコトキシンを産生する可能性のある真菌がいくつか分離された」と書かれていました。熱処理により減少したが、加熱しても死なない細菌(休眠状態の細菌)が2.4 log CFU/g残っていたとあります。2.4 log CFU/gがどれくらいなのか、私にはわかりません。もし、これを読んで発がん性があるという人がいるなら、この数値がどれくらいだから危険であるということも示す必要があると思います。
そのほか、参考になりそうな論文がありましたが、読む余力がないのでリンクだけしておきます。
下記の研究成果アーカイブに、毒性に関する論文があります。
コオロギ推しは何が問題なのか?
今回の炎上騒動で気になったのは、コオロギパウダーに関わる企業が強気であることです。敷島製パンは、Twitterで炎上してもずっと無反応でした。不安に思う消費者に、丁寧な説明をしようとする姿勢が見られません。誤解されていることがあるなら、丁寧に説明をするべきだと思うのですが、提携企業の回答も、「弊社ではそのような学術研究があることを把握しておりません。ご覧になった査読付き研究論文をご提示ください」などと、けんか腰な印象を与える文章だと感じました。
以前の記事に書きましたが、コオロギ推しは国のプロジェクトとして進行しています。国はなぜ、説明をしないのでしょうか。
追記:敷島製パンと提携企業は、下記のプロジェクトには参加していません。
下記のページの目標5に、昆虫食のプロジェクトがあります。
(2)食品ロス・ゼロを目指す食料消費システム
プロジェクトのサイト
プロジェクトに関する資料
国民の健康にとって大切なことを説明せずに、流行を作りだして浸透させるようなやり方をしてよいのでしょうか。
下記に参加企業などが書かれていますが、これだけの教育機関や企業が参加しているプロジェクトなのに、なぜコオロギを食べる必要があるのか、安全性は確認できているのかなど、テレビなどを通して丁寧に国民に説明してくれてはいません。
水産・畜産飼料原料としての虫粉供給体制が整ったら、自分が食べようとしている肉や魚に虫粉が使われているかどうかを、表示などで知ることはできるのでしょうか。
先日、コオロギ炎上問題(徳島県の給食)をワイドショーが取り上げていましたが、このプロジェクトのことは一切触れませんでした。周知させるよい機会だと思うのですが、なぜ触れなかったのでしょうか。
追記:給食に参入した企業はプロジェクトに参加しています。
農林水産省による「研究開発の事業評価書」
農林水産省の事業評価書の拡充課題に、「昆虫食」について書かれた研究がありました。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000834020.pdf
以下、一部引用(表紙も入れて28ページ~)です。研究は昆虫食だけではなく、アフリカ豚熱のワクチン開発なども含まれているので、全体像を知りたい方はPDFで確認してください。
「危害要因(重金属、かび毒、アレルゲン)の特定とリスク評価、リスク管理が必要になることが考えられる」とあり、これからデータベースを作成すると書いてあります(令和4年8月時点)。
つまり、データはまだ集まっていないということでしょう。
コオロギを含めた昆虫食に関するデータは少なく、まだ「これからデータを集める」という段階なので、安全であるとも安全でないとも、ハッキリとしたことは言えないと思います。そのようなものを急に推されたら、消費者が不安に思うのも当然ではないでしょうか。
発がん性があるからコオロギが問題というより、このような事業が国主導で進められていることを国民に周知せず、いつのまにか、これまで食べてこなかった昆虫食が消費者の生活に紛れ込んできたことが大きな問題だと思います。