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「推奨」という言葉のウラ側

何か困っていることがあり、ある商品を使ってそれが解決できたら、同じように困っている人にオススメしたくなります。困っている人が実体験からのオススメと出会えれば、問題は解決できるかもしれません。ところが、実体験ではないオススメも、世の中にはたくさんあります。手に入れた情報だけでも、記事は書けるからです。

WHOの自信

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厚労省が公開している「副反応疑い報告の状況について」という資料の12ページには、Pfizer BioNTech COVID-19 vaccine, BNT162b2(コミナティ筋注)の安全性についてWHOの見解が書かれています。WHOは高齢者や基礎疾患を有する人にも接種を「推奨」。2021年1月22日時点で「推奨事項の改訂はしない」と言っていますが、判断の基準は「入手可能な情報」です。原文では「available」と書かれていますが、具体的にどんな情報から判断したかは書かれていません。おそらく、ファイザー社が提供した情報以上のことは、確認していないということではないでしょうか。

Based on a careful scientific review of the information made available, the subcommittee came to the following conclusions:

一方で、Vol.1から取り上げている厚労省の「コミナティ筋注 特例承認に係る報告書」では、WHOより慎重です。

特例承認に係る報告(1) 53ページ2

53ページで、基礎疾患を有する人について「十分な安全性情報が得られていない」と言っています。しかしWHOは、「安全性と有効性を確認している」として「推奨」。WHOは第2/3相臨床試験(phase 2/3 clinical trials)から判断していると書いてあるので、おそらく、WHOも厚労省も同じ情報しか得られていないでしょう。それなのに、WHOはかなり強気です。その自信は、どこからくるのでしょうか? もし、より安全性を示せるデータがあるのなら、厚労省にも提出されるはずです。

「推奨」<「指示」

厚労省が出している資料のもとになっている「Interim recommendations for use of the Pfizer–BioNTech COVID-19 vaccine, BNT162b2, under Emergency Use Listing Interim guidance 8 January 2021」を確認すると、「推奨」は原文では「recommend」です。

・Vaccination is recommended for older persons.
・Vaccination is recommended for persons with comorbidities that have been identified as increasing the risk of severe COVID-19.

「Dictionary of Epidemiology」(疫学辞典)には、recommendationはguidelineより強く、recommendationよりdirectiveの方が強いと書かれています。

In the terminology developed by the European Community, directives are stronger than recommendations, which are stronger than guidelines. In North America, guidelines is normal usage also for recommendations.

いずれにしても、推奨が「入手可能な情報」から判断した結果だということが重要です。長期の安全性に関するデータなど、まだ誰も持っていないのですから。

承認するための「審議」

今日(5月20日)開催された「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」において、アストラゼネカ社とモデルナ社のワクチンも特例承認されました。

発表される前から、結果はわかっていました。モデルナ社のワクチンを使って大規模接種することが、すでに決まっていたのですから。アストラゼネカ社のワクチンは、承認される前から製造受託契約により国内で生産されています。では、何を審議していたのでしょうか。報告書が公開されたら、確認したいと思っています。

ファイザー社の場合、承認するために必要な情報が揃っていたわけではないと思います。厚労省は申請者に対して、足りない情報について質問はしていますが、回答をもらって納得しています。例えば、Vol.2で触れた「安全性薬理試験を実施していない」ことについては、報告書を読む限り、実施したデータを求めてはいません。

審議というのは、「安全性薬理試験のデータがないなら、承認できません!」というぐらい強気で行うものだと思っていました。使用前例がない新添加物も使われているのに(Vol.1参照)、ラットの毒性試験で肝臓への影響も出ているのに(Vol.2参照)、安全性薬理試験を飛ばしています。それでも、承認されるのです。