文徒インフォメーション vol.12

Index------------------------------------------------------
1)【Book】那須正幹の死去、この夏の〝課題〟図書たち
2)【Publisher】徳間書店がSNS差別発言の編集者を迅速処分
3)【Advertising】四マス中唯一の減少予測の雑誌広告と雑誌の未来
4)【Digital】コロナ禍で焼け太りするGAFA帝国
5)【Journalism】続報待たれるセネガル人音楽家開会式キャンセル問題
6)【Magazine】開会式〝答え合わせ〟が証明した週刊文春の取材力
7)【Comic】〝日本のマンガ、アニメの優位性が一気に消える〟夏野剛構想
8)【TV, Radio & Movie】開会式視聴率は56・4%も、全米では大幅ダウン
9)【Newspaper】金メダル狙撃兵はアマチュア規定違反のはずだが
10)【Marketing】盛り上がる新潮社「しゃばけ」20周年
11)【Store】丸の内丸善の五輪グッズ急速に大盛況
----------------------------------------2021.7.26-30 Shuppanjin

1)【Book】那須正幹の死去、この夏の〝課題〟図書たち

◎「2021年ノンフィクション本大賞」のノミネート作品が発表された。
「あの夏の正解」 早見和真/新潮社
「海をあげる」 上間陽子/筑摩書房
「キツネ目 グリコ森永事件全真相」 岩瀬達哉/講談社
「ゼロエフ」 古川日出男/講談社
「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」 河野 啓/集英社
「分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議」 河合香織/岩波書店
https://news.yahoo.co.jp/nonfiction/
この顔ぶれであれば上間陽子の「海をあげる」が本命か。対抗は早見和真「あの夏の正解」としておこう。

◎「ズッコケ三人組」シリーズで知られる児童文学作家の那須正幹が死去。享年79歳。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/118652?rct=obituaries
作家・脚本家の中沢健がツイートしている。
《中学生のときに那須正幹先生にファンレターと一緒に、自作の小説を大量に送ってしまったことがあったのです。
そしたら、那須さんはちゃんと読んで感想もくれてさ。
しかも、それが「面白かったです」と一言で済ますような適当な感想じゃなくてさ、作品の良い面と悪い面がびっしり書いてあったんだ。》
《「ここは君のいいところだから大事にしてほしい」「ここは君の弱いところだと思うから頑張って」と便箋7枚も使って本気でアドバイスしてくれたんだよ。
自分も作家デビューした後は、たまに「小説を書いたんで読んでくれませんか?」と送られてくることはあるけど、あんな丁寧なお返事は絶対無理。》
《その後も那須さんとは文通みたいにそれぞれの作品の感想を送り合って。
こっちはファンレターを出しているんだけど、那須さんからしたら素人の送ってきた作品を毎回ちゃんと丁寧に全部読んで、感想やアドバイスしてくれていたんだもんな……。 あんな優しい人、自分は他に知らないです。》
《自分のデビュー作は刊行後すぐに送らせていただいき、コメントをいただけたことも忘れられません。
1番大好きで尊敬していた作家の那須さんに、デビュー前から面倒を見ていただき、デビュー後もいつもご丁寧に感想をいただけて、本当に感謝しかありません。》
https://twitter.com/nakazawatakeshi/status/1418135072054468612

https://twitter.com/nakazawatakeshi/status/1418137664658698242
「ズッコケ三人組」シリーズは累計発行部数2500万部を超えている。毎日新聞は7月22日付で「児童文学作家・那須正幹さん死去 79歳『ズッコケ三人組』」を掲載している。
《1942年、広島市生まれ。3歳の時に爆心地から約3キロの自宅で被爆した。「原爆の子の像」のモデルになった佐々木禎子(さだこ)さんは同学年で、後に同級生らに取材して像建立の舞台裏を描いた「折り鶴の子どもたち」を記した。
島根県立島根農科大(現島根大)では森林昆虫学を専攻。自動車販売の営業マンを経て、家業の書道塾を手伝いながら文筆活動に入った。初の長編「首なし地ぞうの宝」が70年、第2回学研児童文学賞の佳作に入選し本格的に作家の道を歩み始めた。》
https://mainichi.jp/articles/20210722/k00/00m/040/163000c
毎日新聞は7月22日付で「行動し続けた那須正幹さん 被爆体験語る『民主主義の申し子』」(上村里花)を掲載している。
《最後まで平和の大切さを説いた那須さんは今年3月、安保法制違憲訴訟の原告として山口地裁で意見陳述し、訴えた。「5年後、10年後に『あのとき違憲判断を下してよかった』と思える日が必ず来ます」。7月21日、請求棄却の地裁判決が出た。それを見届けるかのように那須さんは逝った。ズッコケシリーズで自由の精神を学んだ人々が那須さんの思いを引き継ぐ。》
https://mainichi.jp/articles/20210722/k00/00m/040/219000c
「絵で読む広島の原爆」(福音館書店)が私のオススメだ。全く情緒に流されない那須の文体に圧倒されることだろう。
https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=607
核戦争後の世界を描いて、どこまでも暗く、救いなど全くないけれど「The End of the world」(ポプラ社)のファンは多いはずだ。私もその一人だ。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8101258.html
田村淳がツイートしている。
《ズッコケ3人組
小学生の頃によく読んでたなぁ…
那須正幹さんありがとうございました。
ご冥福をお祈りします。》
https://twitter.com/atsushilonboo/status/1418124788950700034

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