文徒インフォメーション vol.18

Index------------------------------------------------------
1)【Book】「活字で利用できない方のためのテキストデータ請求券」とは
2)【Publisher】「ひとり出版社」故・小林達也の教え
3)【Advertising】博報堂出身・尾形真理子、7年ぶりの小説第2作を刊行
4)【Digital】デジタル庁、デジタル監・石倉洋子の謝罪とひろゆき不採用
5)【Magazine】「マガフェス'14」で生まれた女性誌「LaLa Begin」
6)【Marketing】編集はマーケティングを取るのか、「やべー」を取るのか
7)【Comic】「よしながふみ 『大奥』を旅する」は平凡社刊
8)【TV, Radio, Movie & Music】ベルモンド、澤井信一郎、岡田博、滝良子、逝く
9)【Journalism】テレ朝「報ステ」飲酒転落事故処分発表
10)【Bookstore】神保町・三省堂書店本社ビル、建て替えのため解体決定
----------------------------------------2021.9.6-9.10 Shuppanjin

1)【Book】「活字で利用できない方のためのテキストデータ請求券」とは

◎文藝春秋は、9月発売の東野圭吾「ガリレオ」シリーズ第10弾、待望の長編「透明な螺旋」発売と、映画化が決定している「沈黙のパレード」の文庫化を記念して、二つの特別キャンペーンを実施。
キャンペーン第一弾は、刻印入りのバカラグラスや、主人公の“ガリレオ”こと天才物理学者・湯川学が愛飲しているインスタントコーヒー「湯川ブレンド」など、オリジナルの賞品が当たるアンケート企画「ガリレオ マイ・ベスト・カバー」。
第二弾は、「ガリレオ」シリーズの二次創作を募集し、東野圭吾が優秀作品を選考する特別企画「ガリレオファンアート大募集」だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000113.000043732.html

◎千葉雅也の第二小説集「オーバーヒート」(新潮社)が刊行されたことを記念して、社会学者・宮台真司とのトークイベントが、10月1日に代官山 蔦屋書店で開催される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001285.000013640.html

◎「B面の岩波新書」に連載されている山本ぽてとの「在野に学問あり」第6回は「読書大全」(ダイヤモンド社)の読書猿を取り上げている。読書猿の「独学」は林達夫に「私淑」していることがわかる。読書猿は次のように語っている。
《ぼくが私淑している一人が林達夫です。彼は岩波書店の『思想』や、平凡社の『世界大百科事典』の編纂に携わった人物です。ぼくは百科事典に出会ったのが遅くて、その分感激したというか、すごく助けられてきたという気持ちがあって、彼を知った時は興奮しました。
書くものはどれもすごく面白いんだけど、その上、あの百科事典って人がつくっているんだ、しかもとんでもない物知りのおじさんが編纂しているんだと。今まで百科事典は人がつくっているとイメージできてなかったんですね(笑)。》
https://www.iwanamishinsho80.com/post/zaiya6
毎日新聞は9月4日付「今週の本棚」で長部三郎の岩波新書「伝わる英語表現法」を取り上げている。
《著者は米国国務省で通訳の仕事をし、日本の大学や高校でも教壇に立った、実践と指導の両面で深く英語に携わってきた人物。2001年の刊行後、品切れになっていたが、今年8月に復刊された。岩波書店によると、ある英語講師がSNSで名著の再来を願う投稿をしたのがきっかけで、復刊を決めたという。》
https://mainichi.jp/articles/20210904/ddm/015/070/017000c
読書猿がツイートしている。
《おお、『伝わる英語表現法』が毎日新聞「今週の本棚」に。新聞・雑誌の書籍欄は新刊を取り上げるので、これはすごい。
しかし「ある英語講師」って…。》
https://twitter.com/kurubushi_rm/status/1433932665166589952
「ある英語講師」とは駿台予備校の田中健一のことである。
https://www.iwanamishinsho80.com/post/fukkan
「ダイヤモンド・オンライン」は7月24日付で田中健一の「人気予備校講師が断言『自分から努力できる子』と『予備校任せの子』の決定的な差 『独学大全』私はこう読んだ」を発表している。
《――田中先生はTwitterで「受験勉強本」として『独学大全』を強く推薦してくださっていました。具体的にどのような点が「受験生向けに」優れているとお考えでしょう?
田中: まさに、「続けたいけど続かない」人の助けになるのが『独学大全』です。一番いいと思う点は技法が多種多様で「あらゆる挫折に対応可能だから」です。先ほど申し上げた「ひとりひとりに適した『継続の工夫』」が見つかる可能性が高いのです。
くり返しますが「なぜ自学自習を続けられないのか」は受験生各人で異なります。》
https://diamond.jp/articles/-/273338

◎パラリンピックも終わった。パラスポーツを「感動ポルノ」からどこまで解放することができたのかは検証する必要があるだろう。「NumberWeb」は9月3日付で松尾奈々絵の《「『頑張りました』っていう話にしているだけ」人気漫画原作者が語る、パラドラマを“感動ポルノにさせない”方法》を公開している。「ビッグコミック」に連載されている原作・香川まさひと、作画・若狭星による「ましろ日」はブラインドマラソンを題材にした作品だが、コミックスの帯には「「“感動ポルノ”と一線画す」という惹句が刻まれている。
《原作者の香川さんは「感動ポルノは型が決まっている」と話す。
「(感動ポルノと呼ばれるものは)障害者のことを考えているわけではないので、都合のいい障害を持っている人をチョイスして、『頑張りました』っていう話にしているだけ。頑張る姿に感動ができるって言うんだけど、別に頑張れなくたっていいじゃないですか。趣味で走っている人も、つまらない冗談を言う人も、ちょっと冷たい人もいる。それをきちんと描けば、『感動ポルノ』にはならないですよね」》
https://number.bunshun.jp/articles/-/849434
実は、この「ましろ日」は特設サイトが設けられ、視覚障害者から寄せられた「絵で表現されている漫画だから読めないけど、読みたい」という声に応えるべく、原作シナリオを公開している。このシナリオを代読してもらえば、漫画を楽しめるということだ。
https://bigcomicbros.net/webwork/6479/
どんな出版物であっても、その奥付に切り取り可能な「活字で利用できない方のためのテキストデータ請求券」をつけておけば良いのではないだろうか。これは理想論ではない。現代書館では総ての出版物にこの請求券がついているのだ。ボイジャーの萩野正昭は「朝倉喬司芸能論集成」を購入した際にこのことに気がついたようだ。6月17日にフェイスブックに次のような記事を写真とともに投稿している。
《本に驚かされた。『朝倉喬司芸能論集成』(現代書館)。ご覧ください、この厚み。大部な本でもあるしAmazonで買うのは控えるべきと版元へ注文した。丁寧な荷姿ですぐに届いた。驚かされたのはそれだけじゃない。奥付に角の切り取り線が入っていて、こう書いてあった??活字で利用できない方のためのテキストデータ請求券。ついに時代はやってきた。》
https://www.facebook.com/mhagino/posts/10223090674949701
現代書館が自らの刊行物にこの請求券をつけたのは今に始まったことではない。2012年に刊行された拙書「三角寛『サンカ小説』の誕生」にも、この請求券がついている。漫画で莫大な利益を享受している出版社などは、こういうことを考える編集者はいないのだろうか。・・・集英社インターナショナルにはいた!川内有緒の「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」がそうだ。川内有緒がツイートしている。
《【知ってもらえたら嬉しいこと】『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』は、書籍巻末にQRコードがあり、全テキストデータがダウンロードできます。つまり目が見えない人にもPCや携帯の読み上げ機能で読むことができます。特設サイトでは最初の章の音読も公開中!バリアフリー型書籍。》
https://twitter.com/ArioKawauchi/status/1434706215410438146
https://www.shueisha-int.co.jp/publish/%E7%9B%AE%E3%81%AE%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%A8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%8F
今野書店のベストセラーランキングの1位は「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」だ。2位は和田静香の「時給はいつも最低賃金 これって私のせいですか 国会議員に聞いてみた」(左右社)だ。ステキな書店である。
https://twitter.com/konnoshoten/status/1434432920626688001

◎文芸評論家・池上冬樹のツイート。
《▼文学賞の下読みをしているのだが、編集者から連絡があり、何番のXは過去の某文学賞の最終候補作なのでボツにしたいと。作品名と筆名を変えているので検索にひっかからなかったが、下読み委員が「これ読んだことがある」ということで判明。作品名と筆名を変えて送ってよこすなんてタチが悪いよ。》
https://twitter.com/ikegami990/status/1434132673820127235
他の文学賞に応募していても受賞していなければ応募は可という文学賞があっても良いとは考えないのだろうか。マンガには、そういう賞は存在する。栗原裕一郎がリツイートしている。
《おれ、これがタブーになっている理由がよくわからないんだよね。最終選考に残るくらいの作品は正味レベルに差がないことも多い(全部論外の場合もあるが)。受賞は選考委員の趣味と運によるので「絶対売れるだろー」というのも落ちる。落ちたらそれきりにするより売りゃあいいじゃんと思うんだよね。》
https://twitter.com/y_kurihara/status/1434613080445444098

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