オーガニック素材に、天然酵母。パンにまかれた「ひとつぶ」の思想@滋賀県東近江市
滋賀県東近江市にある、こじんまりとしたパン屋さん「ひとつぶ」。
開店直後にうかがうと、次から次へと運ばれてくる焼き立てパンに会うことができました。どれも200円前後と、手に取りやすいお値段です。
ここでは自家製天然酵母を用いた、こだわり素材のパンをいただけます。しかし、そのおいしさの裏側には、中川さんが伝えたい想いが隠されていました。
地域性を反映したパンづくり
「良いものをつくって、良いと思った人に買ってもらいたい」
こう語っていたのは、オーナーの中川雄介さん。
広告関係のサラリーマンとして働いたのち、ルヴァンの甲田幹夫さんの本に書いてあった「パンには矛盾がない」という言葉に感銘を受け、パンの修行を始めたのだそうです。
そして2017年に独立し、縁もゆかりもなかった滋賀県にお店を構えました。
「天然酵母のパンはハード系で噛み締めるイメージが強いですが、うちのパンは柔らかめだと思います。滋賀という土地の空気感を汲み取ってパンに反映したら、自然とそうなりました」
たまたま辿り着いた今の場所ですが、もしお店を違う土地に構えていたら、違う特徴のパンになっていたのかもしれません。滋賀の空気に触れ、人と触れ、ここでしか生まれないパンを日々研究しています。
「柔らかめにしているのはもうひとつ理由があって、子供にも喜んでもらいたいんです。子供が小銭を握りしめてきてくれるような、親しみやすいパンを心がけています」
パンを通して提案する、有機的な生き方
中川さんはとにかく原材料にこだわり、粉やドライフルーツなど、できるだけオーガニックなもの使用しています。あんこやカスタードなどのフィリングはすべて手作りで、甘すぎない優しい味わいに胃袋と心が虜になります。
そもそも原材料にこだわるようになったのは、お子さんが生まれてからだそうです。親として無農薬・無添加などの食品を探すのに苦労した経験から、子育て世代にも安心して通ってもらえるお店を目指しています。
しかし根本にあるのは、オーガニックうんぬんよりも、生き方に通ずるどっしりとした心構えでした。中川さんにとって、体に良いこと、おいしいことは二の次で、「人間らしく有機的に生きること」に重きを置いていました。
「酵母も単なる道具ではなく、生き物なんです。イースト(※)は超エリートだけど、本当はもっといろんなやつがいて、言うこと聞かんやつもいるもんやろって。僕たちもロボットではないので、ここでは接客ひとつ、人間味を感じてもらえるような場でありたいと思っています」
(※)製パン性に優れた菌だけを人工的に培養した単一酵母
売られているのは、パンという鎧をまとった中川さんの思想でした。中川さんはパンを通して、生き方を提案しているのです。
「どうやって生きていきたいか」「こんな世界になるといいよね」という思いをパンに乗せて、店名通り「ひとつぶ」ずつ丁寧に種をまいています。
滋賀に来たのは決して偶然ではなく、中川さんのそういった思想がこの地と結びつき、土地が中川さんを引き寄せたのかもしれません。この地を中心に、中川さんのパンが、想いが、広がっていきます。
店舗情報
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自家製酵母パン ひとつぶ
・営業時間 10:00-16:00
・定休日 木・金
・滋賀県東近江市佐野町657 ファブリカ村内
・駐車場 5台(ファブリカ村と共用)
パンギャラリー
※季節限定商品や、いつもあるとは限らないパンもあります
もちもちで分厚くてボリューミーだけど、半分残すなんてできないおいしさ
焼き立ての皮パリッ、中もちっは、幸せしか感じない
裏までカリカリなメロンパン。甘すぎないクッキー生地に夢中になる
スイートポテトロール(1〜2月限定)。はちみつの香りをまとった優しい甘さのさつまいもフィリングがたっぷり
店名と同じ「ひとつぶ」という名のパン。外サク、中ふんわり、砕かれたナッツがまろやか
チーズパン。表面にちょこんとのせられたチーズの香ばしさと、中に入っているチーズのまろやかさがベストマッチ
あんぱん。一口食べた瞬間、あんこの豊かな風味に驚く
クロックムッシュ。惜しげなくたっぷりとチーズが使われている
レーズンパン。もっちり生地に、レーズンがぎっしり詰まっている
バレンタイン・シュトレンのぷちサイズ。濃厚なカカオ生地に、ナッツやドライフルーツがたっぷり
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