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追悼オリビア・ニュートン=ジョン『グリース』【映画レビュー】

人気ミュージカル映画『グリース(Grease)』への出演で世界的な人気を得たオーストラリア人歌手で女優のオリビア・ニュートン・ジョン(Olivia Newton-John)さんが8日、死去した。73歳。家族が発表した。 50年以上にわたり芸能界で活躍したニュートン・ジョンさんは、1992年に乳がんと診断された後、慈善活動に打ち込んでいた。

AFPBB News

世界的な人気歌手のオリビア・ニュートン・ジョンさんが8日、米カリフォルニア州で亡くなったと公式インスタグラムが発表した。73歳だった。
死因は乳がんだった。夫のジョン・イースタリングさんは、インスタグラムで文書を発表。
「オリビア・ニュートン・ジョンは、南カリフォルニアの彼女の牧場で、今朝、家族と友人に見守られながら、安らかに亡くなりました。30年以上、乳がんと闘い続けた彼女は、勝利と希望の象徴でした」と乳がんとの闘病の日々を明かした。
その上で「彼女の、植物医学に関する先駆的な経験と癒やしの発想は、植物医学とがんの研究に取り組む、オリビア・ニュートン・ジョン財団に引き継がれました」とつづった。  
公式インスタグラムは、オリビア・ニュートン・ジョンさんの家族には、イースタリングさんとの間の長女のクロエ・ラッタンジさんのほか、兄妹のトビーさんとサラさんや数人のおい、めいがいると説明した。

日刊スポーツ

訃報のニュースが飛び込んできた。悲しい。
澄んだ歌声で日本でも広く愛された、歌手オリビア・ニュートン=ジョン。
ここでは、映画『グリース』(1978)の女優オリビアを偲ぶ。



『グリース』(1978)

★★★★★
アメリカ映画
監督:ランダル・クレイザー
ジョン・トラボルタ
オリビア・ニュートン=ジョン

第51回アカデミー賞
歌曲賞ノミネート(ジョン・ファーラー作詞作曲「愛すれど悲し(Hopelessly Devoted to You)」)
1978年ゴールデングローブ賞【ミュージカル/コメディ部門】 
作品賞ノミネート(受賞は『天国から来たチャンピオン』)

歌手としてのオリビアではなく『グリース』のサンディで存在を知った。
歌もダンスもイケているオリビア=サンディに恋した。
トラボルタとのデュエットもキマッていて、サントラをヘビロテしていた。


公開当時オリビア30歳。出演者皆が高校生には見えないのだが、そんなことはこの映画の魅力の前では、些末なこと。
舞台はまだ麻薬もベトナムも知らない50年代、ゴキゲンに楽しいハイスクール・ミュージカル。
リーゼントとポニーテール、革ジャンにペチコート?ファッションもいい。プロムにダイナー、ドライブインシアター、パジャマパーティー、カーレース、ダンスパーティーそして卒業カーニバル。
アメリカの高校ってスゲーってちょっと憧れもあったりして。

明らかに相思相愛なのに、仲間の前では見栄を張っちゃう純な不良男子高校生ダニーと、こちらも純でまじめでキュートなサンディのもどかしい青春ストーリー。って正直ストーリーは二の次で。
本作品に否定的な人をたまに見かけるが(話がつまらない、演者が歳をとりすぎ等々)、頭固くせずに、スクリーンから溢れ出る青春エネルギーを楽しめばいいのだ。
時にそれが眩しすぎるために、受け止められず否定的になるかもしれないが。青春は短い、朱夏を生きる身としては懐深く受け止めたい。


当時劇場で観れておらず、水野晴郎の水曜ロードショー(日テレ)、淀川長治の日曜洋画劇場(テレ朝)をビデオに録画して、擦り切れるほど何度も観た。なので吹き替えも馴染みがある。

ラストの卒業カーニバルの覚醒サンディとそれに射たれたダニーの「愛のデュエット(You're The One That I Want)」、最高のエンディング。
オリビアとトラボルタのカップル最高。いいキャスティング。
サントラも最高。「愛のデュエット」「想い出のサマー・ナイツ」「愛すれど悲し」「グリース」等々ヒットした。


歌手として世界的に有名であったオリビアが『グリース』に出演することになったのは、プロデューサーのロバート・スティグウッドが空港で、ヨーロッパツアーに出るオリビアを偶然見つけ、一目ぼれして口説き落としたとか。キャリー・フィッシャーが候補に挙がっていたみたいだが、今となってはサンディはオリビア以外考えられない。

トラボルタは当時、スティグウッドと映画を3作つくる契約をしており、本作品は『サタデー・ナイト・フィーバー』に次いで2作目だ。2作とも大ヒットしたが、3作目はというと…『年上の女(Moment By Moment)』知らないなー。

『年上の女(Moment By Moment)』
「サタデー・ナイト・フィーバー」のJ・トラヴォルタが出演し、年上の女との切ない愛を描いたラブ・ロマンス。一流不動産業者の夫を持つトリーシャはある日ドラック・ストアーで定員ともめている最中、若い男ストリッブと出会う。最初言い寄って来る彼を全く相手にしない彼女だが、やがて彼の親友が死んだことをきっかけに強く惹かれてゆくようになる。

allcinema
大団円!


ニュートン・ジョンさんの訃報を受け、トラボルタさんはインスタグラムなどで追悼コメントを発表した。
「親愛なるオリビア、あなたは私たちの人生をとても素晴らしいものにしてくれた。あなたの影響は信じられないものでした。私はあなたをとても愛しています。 私たちはきっと、この道のどこかでまた出会うでしょう。そしてまた、一緒になりましょう。あなたに初めて出会った時から、あなたは永遠なのです」 そして、最後には、『グリース』の役名を引き合いに、「あなたのダニー、あなたのジョン!」と記した。

HUFFPOST
2018年『グリース』40周年イベントにて。プライベートでも仲が良かったオリビアとトラボルタ


再び共演した『セカンド・チャンス』(1983)は興行的には大失敗。
だがサントラは良かった。「運命のいたずら(twist of fate)」、トラボルタとのデュエット「Take A Chance」がヒット。

2012年には約35年ぶりに、トラボルタとデュエット・アルバム『The Christmas』をリリースした。


トラボルタは80年代に入り、作品に恵まれず『パルプ・フィクション』(1994)で復活するまでの十数年間低迷する。16歳の息子を亡くし、2年前妻ケリーを乳がんで亡くした。(パンフレットを読むと当時の恋人を白血病で亡くしている)

オリビアは80年代もヒット曲を連発するも、1992年乳がんで闘病中と公表。
以後はがん治療の啓発活動に力を入れた。環境保護活動、ユニセフ親善大使もつとめた。59歳の時ジョン・イースタリングと結婚。

人生何が起きるかわからない。波乱万丈な2人。

だが色褪せることないサンディとダニーの物語。
オリビアとトラボルタが出会って起きたケミストリ、あの時あの瞬間にしか出せない若きエネルギー、奇跡のコラボ。
名作として語り継ぎたい。

パンフとCD 「そよ風の誘惑」「愛の告白」「ザナドゥ」「ジョリーン」「愛のデュエット」「運命のいたずら」「フィジカル」等々名曲揃い


オリビアのCDを引っ張り出し聴いている。「グリース・メガミックス」なるものが収録されていたから買ったCDもある。映画のシーンが目に浮かぶ。
澄んだ美しい歌声、世代を超えて聴き続けられるだろう。
日本を愛してくれた、いつも笑顔のひとであった。
オリビアの歌声を聴くことで追悼としたい。

                     (text by電気羊は夢を見た)

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