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ノベルメディア『文活』参加作家紹介⑤:雪柳 あうこさん

読者の生活に、月にいちど物語をおとどけする文芸誌『文活』。参加作家紹介の5人目は雪柳 あうこさんです!

※文活とは
noteの小説家たちで、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸誌です。生活のなかの一幕を小説にして、おとどけします。価格は390円。コーヒー1杯ぶんの値段でおたのしみいただけます。詳細は以下の紹介記事をご覧ください。
https://note.com/bunkatsu/n/n16565e0a2b10

とめどなく、ことばを紡ぎ続けるあうこさん。詩や小説で、いくつもの誌面掲載や受賞歴の経験をお持ちです。運営ふたりと同じく、note文芸部の部員でもあります。また、2021年以降に詩集の出版予定も控えており、活動の勢いはとどまるところを知りません。

あうこさんの作品の魅力は、五感をくすぐる、うつくしい文章にあります。

庭に、出てみる。
吹き荒ぶ春の嵐の中、不規則な螺旋を描いて舞い散る桜は、白く千切れ飛ぶ。花冷えに身を縮めて庭を横切り、盛り上がるように咲きこぼれる桜の下へ。
春が巡るたび、あの人を今も慕う私の心にも花は無言のままに積もる。桜爛漫、見上げて私は己を見失う。
(『 春揺れる 』より)
ふるさとの風景が呼び起こす、五感の記憶。
その匂いを、わたしはほとんど知らない。人と生き物が共にあった、生活の匂い。肥溜の苦さが混じる、耕されたばかりの土の匂い。
ただ、乾いた空気に、草ばかりのわずかな青い匂いだけが渡っていくのが感じ取れるだけだ。
(『 【短編小説】匂いのない光景 』より)

鮮やかな情景であふれた作品はどれも魅力的。あうこさんはまさに、ことばで景色を描いてしまう人でしょう。また、登場人物の内面における、優しさ、つよさ、儚さ。それらがあうこさんの作品には垣間見えます。生活の中にこぼれている「ゆらぎ」を拾い上げる、かけがえのない書き手です。

過去のおすすめ作品

以下、おすすめの小説をご紹介します!ぜひ読んでみてくださいね。

✎ おすすめ作品①『 季節の小部屋 』

秋と読み書きが大好きな少女。その少女の仕事は、季節書記官。晩秋の小部屋の担当である彼女は、窓の外に広がる秋の終わりを記す。しかし窓からの景色を見ては、気分が落ち込むことが次第に増えていた。秋が大好きな少女のこころはどこに向かっていくのか──。心情の揺れと季節の空気感がどこまでもうつくしい、ファンタジー作品です。

✎ おすすめ作品②『 12月のひまわり 』

老人ホームに入っている、同じ話を繰り返すおばあちゃん。かつて山の上の家に二十年間、おばあちゃんと二人でくらしていた「ぼく」は今、市内の作業所で働きながら一人ぐらしをしています。おばあちゃんの教えで、「ぼく」はひまわりの種を植え続けました。知的障害を抱える「ぼく」と、おばあちゃんが残してくれたひまわりの種。一読の価値のある、傑作です。

※『12月のひまわり』は作品の題材上、紹介をするかどうかを大変悩みました。しかし、こうした問題に対して読者が考えるきっかけをつくることは、小説の重要な役割のひとつだと考え、掲載をいたしました。この作品に胸を打たれた読者のひとりである私自身も、この作品がおおくの人に読まれることを願っております。

雪柳あうこさんからのコメント

あうこさんから、読者のみなさんへのコメントをいただいています!

こんにちは。雪柳あうこと申します。
普段は小説と詩の両方を書いています。
2020年は詩で二つ賞を頂き、来年は出版社から詩集を出していただくことになりました。
「文活」にお誘いいただいたときに、ことばを通じて新たなつながりが生まれていくことを本当にうれしく思いました。
わたしは、くらしの中の実感として「手で書くことば、文通」を文活における自分のテーマとして、連作を行っていきたいと思っています。
生活の実感を誰かに伝えたいな、と思うとき。メールやSNSももちろんいいですけれど、手書きのことばや語り口は、有形無形のものを伝えてくれるように思います。
そうした温かみを物語に変えて、真実と虚構を上手く織り交ぜて。あなたのくらしの中に、小説という形で、瑞々しい感情たちをお届けできたらと思います。

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以上、参加作家紹介で、雪柳あうこさんでした!文活創刊号の刊行までは【あと2日】。明後日となりました。ぜひぜひおたのしみに!

※文活は以下の購入ボタンから定期購読いただけます。
※この下はオマケです!12月の創刊号に掲載される、雪柳あうこさんの小説の冒頭を公開しています…!

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