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環境負荷低減と働き方改革に繋がるスチールドアの「接着工法」が本格スタート

こんにちは。

文化シヤッターnote編集部です😊

現在、当社ではシャッターの他にも、ドアの製造・販売を行っており、特に商業施設やオフィスビルの非常階段などに多く設置される「スチールドア(防火ドア)🚪は、当社の収益を支える主力製品です。

これまで「スチールドア」の製造は、「溶接」および「小ねじ止め」の2種類による組立方法が国土交通省が監修する「公共建築工事標準仕様書(以下、標準仕様書)」で規定されていました。そして、このほど刷新された標準仕様書の令和4年版において、「接着剤を使った組立方法(以下、接着工法)」が新たに追加され、3種類の組立方法が可能になりました。当社グループにはスチールドアを製造する会社がありますが、さっそく2022年4月より、当社グループ各社で「接着工法」によるスチールドアの製造を開始しました。

商業施設やオフィスビルの非常階段等に設置される
「スチールドア(防火ドア)」

そこで今回は、国が定める標準仕様書への「接着工法」の追加記載の実現に尽力した当社ドア事業部の上田部長と西井顧問に登場頂き、これまでの経緯や苦労されたエピソードをはじめ、「接着工法」によるスチールドア製造のメリットについてインタビューしました🎤

―標準仕様書に「接着工法」が追加されましたが、そもそもこの新しい工法を提言されようとしたねらいや目的について教えてください。

まず私と西井顧問は、当社が加盟している(一社)日本サッシ協会のスチールドア部会や中小企業委員会の委員として、ドア業界の底上げや各種基準作成、研修会開催などに取り組んできました。現在、スチールドアの製造工場は全国に約200社あり、そのほとんどが中小規模です。このスチールドアの製造企業の方々とは、中小企業委員会などで話す機会がよくあり、多くの企業が人員や設備、財務状況等に悩みを抱えていることがわかりました。また、昨今の鋼材値上げによる影響もあり、事業を縮小される企業も増えてきているのが現状です。さらに、重い鉄板の持ち運びや、溶接作業に時間を要するなど、労働環境は決して良いとは言えません。

ドア事業部 上田部長

その一方で、スチールドアの需要はこれからも増えていくと見ている中で、このようなスチールドア業界の状況を改善するためには、生産性向上と働き方の改革に繋がる取り組みが必要だと長年考えていました。そのためには、「公共建築工事標準仕様書(以下、標準仕様書)」に、スチールドアの組立方法として「接着工法」を追加させることが不可欠であると一念発起し、(一社)日本サッシ協会と協議を始めたのが2年前のことでした。

「接着工法」が新たに記載された
令和4年度版の「公共建築工事標準仕様書」

―標準仕様書に追加されるまでの2年間は、具体的にどのような取り組みを進めて来たのですか?

標準仕様書は国が定めるバイブルのようなもので、設計事務所などへの影響は測り知れません。ここに「接着工法」が記載されることで、全国的な普及に繋がることは確かでしたが、その一方で、国に新しい施策を認めてもらうためには、想像もしないくらい時間と労力がかかることは、過去の経験からわかっていました。

ドア事業部 西井顧問

そこで、まずは担当省庁である国土交通省(以下、国交省)に確認し、「業界各社の同意」「過去3年以上の十分な実績」「一つの企業に特定されることのない技術」の3つの前提条件をクリアする必要がありました。同省には、文化シヤッターとしてではなく、(一社)日本サッシ協会や(一社)日本シヤッター・ドア協会として提案する立場から、競合他社も含めた業界各社の同意が必要でした。そこで、「接着工法」の利点を知ってもらうために、まずは北海道から九州まで全国の主なスチールドア製造企業の社長や工場責任者に説明し、理解を求めました。次に、両協会を通じて接着剤の使用実績およびその種類について全国調査を実施しました。当社では既に小山工場と御着工場において「接着工法」で製造しているドアなどがありましたので、それらの実績をまとめました。

こうして、国交省との本格的な協議が始まったわけですが、当初は相当手強い方だなというのが第一印象でした。特に接着剤についての質問が多く、専門的な知識を持っていない我々には回答できないものばかりでした。また、コロナ禍ということもあり、協議の場も限られた中でどうすれば先方に理解して頂けるのかを考え、まずは日本接着剤工業会に連絡を取り、現状を説明。同工業会建設用接着剤議会会長であり、その後のキーマンとなるセメダイン株式会社の取締役技術部長である秋本様をご紹介頂きました。秋本様からは様々なアドバイスと併せて、国交省から求められる試験においても、多大な協力を頂きました。

接着剤の選定にあたっては、ある程度大きな設備を導入すれば「接着工法」による製造はできますが、全国の大半のスチールドア製造企業では、簡単に設備を導入するわけにはいきません。そこで、現状の設備のままでも手作業で組み立てができるよう、すぐに乾いて固まらないよう作業時間を考慮した接着剤として、当社が使用しているウレタン系接着剤と併せて、アクリル系接着剤を選定し、中小規模の企業でも製造できる基盤を整えました。そして、2021年3月には国交省をはじめ、標準仕様書を発行する(一社)公共建築協会や日本接着剤工業会の担当者の方々にグループ会社のBX鐵矢へお越し頂き、「溶接」と「接着工法」によるスチールドア製造の工程を比較して見て頂く機会を設定。溶接による火花や重量のあるスチールドアを製造する大変さを認識頂けた一方で、「接着工法」による製造時間の短縮化をその場で確認頂くことができました。また、翌月には当社の試験・検証施設であるライフイン環境防災研究所(以下、LED)にお越し頂き、「接着工法」で製造したスチールドアについて、3種類の試験を実施した様子も視察頂きました。

グループ会社のBX鐵矢で行われた
「接着工法」による「SD」製造を視察する国交省の担当者ら(2021年3月)

国交省との協議は、毎回難しい課題が提示される中でのやりとりとなりました。しかし、当社の必死に取り組む姿勢や、企業の利益追求のためだけではなく、溶接に伴う有毒ガスの発生を防ぎ、作業環境の改善が図れるなど、環境負荷低減や社会貢献にも繋がることを高く評価頂きました。

今回の標準仕様書への「接着工法」の追加掲載が実現したことを受け、国交省の担当官からは「接着工法の公共建築工事標準仕様書への新規掲載については、今回追加となった他の工種の材料・工法などと同様に、あくまで標準仕様書の掲載の考え方に沿っているか多方面から確認させて頂いた結果です。今回の改定では鋼製建具に限らず、他の工法なども単に机上の議論、確認だけで標準仕様書への追加の可否を判断するのでなく、製造過程や施工の現場も実際に確認して判断しました。様々な角度から確認させて頂けたため、むしろこちらの方がお礼を言いたい。できれば、今後もそのような場や機会を提供頂けるとありがたいです」とのお言葉も頂きました。

通常、国が定める仕様書というものは、JIS規格の制定や学会発表によるバックグラウンドがあるものが記載の条件になることが多いのですが、「スチールドア製造業界の状況を改善したい」という当社の強い想いが各協会や関係団体、国交省を動かし、異例の採用に繋がったものだと実感しています。

―改めて「接着工法」で製造したスチールドアのメリットについて教えてください。

最大のメリットは「生産性向上」です。「接着工法」であれば、接着剤で組み立てるだけですので、スチールドアを1枚製作するのに組立工程は約15分で作業が完了します。溶接による作業時間と比べて、約60分の短縮になります。また、溶接痕を消して意匠性を向上させるためのサンダー仕上げが不要ですから、ドアの表面に施された亜鉛メッキ層を傷つける心配がないため、耐食性が向上します。さらに、これまでスチールドアでは溶接があったために扱いづらかった色・柄の付いた、いわゆる化粧鋼板の対応の可能性が広がります。
もう一つの大きなポイントは、「脱炭素社会の実現に貢献できる」ことです。アーク溶接や半自動溶接機を使用する際は、どうしても溶接ヒューム(溶接の過程で発生する有害性の粒子状物質)や一酸化炭素などが発生してしまいます。「接着工法」であれば、そういった有毒ガスが発生することもなく、電力使用量も削減でき、結果として、CO₂削減にも繋がるわけです。

―「溶接」と比較しても製品の品質は変わらないのでしょうか?

先ほども説明したとおり、LEDでは「接着工法」で製造されたスチールドアの「吊り下がり試験」「ねじり強度試験」「10万開閉の耐久試験」などを行い、品質基準が保証されていますので、溶接で製造したものと何ら変わらない性能が実証済みです。また、接着剤そのものについても、日本接着剤工業会のご協力により、接着剤の強度を測定する「引っ張りせん断強度試験」をはじめ、「耐湿耐久性試験」「熱劣化試験」「寿命予測」を行って頂いています。

ライフイン環境防災研究所で行った
「ねじり試験」の様子

―今後、「接着工法」によるスチールドアの供給量を拡大していくには、どのような取り組みが必要になりますか?

まずは、「接着工法」をスチールドア業界に浸透させることが第一段階だと考えています。そこで、「接着工法」によるスチールドアの製作過程を撮影した動画を(一社)日本サッシ協会として制作しました。5月からはこのツールを活用して、まずは当社向けにスチールドアを供給頂いている協力会社に説明を行った後、協力会社に伺って「接着工法」による指導を行っているところです。

「接着工法」については、「アプリケーター」と呼ばれる連続して接着剤を塗布できる専用機を導入するだけで、大がかりな設備の導入が不要なことから、今後はスチールドア業界に浸透していってくれると信じています。そして、当社グループにおいても接着工法による「SD」が大量生産できるようになれば、さらなる生産性向上と働き方改革、そして環境負荷低減に繋がっていくと考えています。そのためにも、「接着工法」の良さを知ってもらえるよう、裾野を広げていきたいと思います。

連続して接着剤を塗布できる「アプリケーター」


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