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平安の子安地蔵、帰山 善福寺

※文化時報2020年8月1日号の掲載記事です。

 臨済宗東福寺派の善福寺(京都府舞鶴市)に、安産の御利益で知られる平安時代の木造地蔵菩薩坐像(子安地蔵尊)が、3年間の保存修理を終えて帰山した。7月23日に行われた開帳法要には檀信徒ら30人以上が参列し、3年ぶりの対面を喜んだ。

 子安地蔵尊は高さ約133センチ、ヒノキ材の一木割矧造=用語解説=。胸の薄い体や柔和な表情に、平安時代の仏師、定朝=用語解説=の影響がうかがえる。

 内部に見つかった銘文から、1175(承安5)年に作られたことが判明。2015年に舞鶴市、翌16年に京都府の指定文化財となった。修理では、明治時代に施された表面の彩色を取り除き、制作当時の姿に近づけた。

修復を終えた子安地蔵尊

 檀家総代を務める上羽仁さん(65)は「幼い頃から見慣れたお姿が一変して驚いたが、優しいお顔立ちに親しみを感じる」と話す。田中文秀住職は「修理を終えてひと安心というよりも、これからが本番という気持ち。正しく保存し、次世代に受け継ぎたい」と意気込みを語った。

【用語解説】一木割矧造(いちぼくわりはぎづくり)
 1本の木から彫り出した像を前後に断ち割って内刳(うちぐ)りを施し、再び接合する技法。複数本の木から作る寄木(よせぎ)造よりも大きな内刳りができ、ひび割れ防止などに効果がある。

【用語解説】定朝(じょうちょう、?~1057)
 平安時代後期に活躍した仏師。円満な表情とゆるやかな衣紋線を特徴とし、長く仏像彫刻の模範とされてきた。代表作に、平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の本尊阿弥陀如来坐像などがある。

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