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映画館で観たような余韻があったドラマ『うきわ-友達以上、不倫未満-』最終回

少し前になるけれど、テレ東さんのドラマ『うきわ-友達以上、不倫未満-』が最終回を迎えた。

(以下、ドラマの内容を含みます)

このドラマ、映像美なのか、それとも 演出美(?)とでもいうのか。毎週映画館に通って観たような気持ちにさせてくれた。砂場での麻衣子と二葉さんや、溺れてうきわに助けられるシーン、最終回では麻衣子がひとりで泳いでいくシーンなど、現実ではなく心の動きを表わす映像がときどき差し込まれていたのだが、わざわざ切り取っただけあり、私にはとても効果のある映像だった。

最終回は、福岡への転勤が決まった二葉さんが、麻衣子を誘って(というより呼びかけた、という感じ)カラオケボックスへ。2人が隣同士に座り、互いがうきわであったこと、それぞれ幸せに生きていこうと会話するシーンで、麻衣子のうなじから横顔が映し出されるカットはとても切なく映る。涙を目にいっぱいためこんだ門脇さんは最強だ。

このドラマは、なんといってもキャスティングの素晴らしさがツボ。二葉さんを演じた森山直太朗さんは、この後オファーが殺到しそうである。転勤先の福岡で探してしまうかも。それぐらい、二葉ロスだよ。と思ったら、同局で今度は明日から始まるドラマ『スナック キズツキ』のエンディングテーマを担当するらしい。

そして麻衣子。漂っているような瞳が印象的な門脇さん。ほわんとしていながら、実は登場人物の中では一番強い人間だったかもしれない。浮気に気づいていたと、たっくんに告白した彼女。淡々と静かに語りはじめる口調は、後戻りしない、というよりもう目の前の相手が愛しい人ではないと本人が明確に感じている証拠のようなものだった。どちらかと言えばうつむき加減だった麻衣子が、エンディングでは髪をばっさり切って、さっぱりとした表情で水たまりを越えていく。麻衣子に幸あれ。

個人的には、大東駿介さんが演じたたっくんのクズ加減(褒めてます)も最高。2話あたりだったか、たっくんの実家からの荷物に、彼の好物である義母の手づくりドーナツが入っていた。これは原作にあるのかな。これだけで、たっくんの生きてきた道がなんとなく理解できた。麻衣子が、二葉さんと食事した日の行動を「なかったことに」されて、ほぼ失恋気分で情緒不安定になったとき、浮気がバレたと勘違い(まあ実際バレてるんだけど)したたっくん。二葉さん夫婦のことばを借りれば、かなりのツボ押し間違い指圧師である。

浮気がバレているのか気が気じゃない彼は早く帰宅するようになり、麻衣子にドーナツを買って来るというトンチキまでやらかす。ドーナツは、あくまでもたっくんの好物。主体性のあまりない麻衣子が、おいしいと食べていたから彼女もドーナツが好きだと思い込んでいる。考えてみれば、もうつき合っていた頃から2人のズレはあったのだ。本心をなかなか言葉にしない麻衣子の悪い癖が、そうさせてしまった部分もあるだろう。夫婦って難しい。

一方で、お互いに思いやっていたからこそ、こじれてしまった二葉さん夫婦。やり直す前に、二葉さんは「聖さん以外に愛しいと思った人がいた」と謝罪することで聖を救った。もちろん、自分自身もこのままでは進めないと思ったのだろうけれど。二葉さんはどこまでもやさしい。



最後まで、きっちり楽しませてもらった。 ハマったドラマは、いつまでも余韻が残る。そろそろ秋ドラマモードに入らねばと思いつつも、このドラマの登場人物のことを考えたり、喜多見チーフの世界進出(配信)おめでとう!と喜んだり、3話のみだけど犬の着ぐるみのやさぐれオダジョーが思い出されたり。頭を切り替えないとまずいなあ……。


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