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研究者の軽やかなオタクエッセイ/『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(川上和人・著)

「はぁーい、どうもこんにちはー、 川上デース!!」

挨拶も軽い。

NHKラジオ『子ども科学電話相談』では、ダイナソー小林(小林快次先生)と人気を二分するバード川上(川上和人先生)。もちろん、心と体の篠原先生や大日向先生をはじめ、昆虫の丸山先生や植物の田中先生など、この番組に登場するその道を究めた諸先生方はそれぞれに人気なのだが、殊、子どもたちから親しまれているのが先のゴールデンコンビ。専門がそれぞれ恐竜と鳥、お互いの目線での主張が面白い。しかも個性が際立つキャラクター。そうなるのも仕方あるまい。

川上先生は鳥類学者。それだけでオタク感がずば抜けている気がするが、この本は、下手すると難しい専門用語が並ぶ鳥類研究の日々が、あっけらかんとエンタメ性にのせて軽やかに書かれている。おそらく、軽やかすぎて鼻につく、と感じる読書家が2割ぐらいいるはずだ。「その例えは、ツイッターだと炎上案件」と思しきものも多少ある。それを差し引いても、一般的になかなか触れる機会のない、みんなが縁遠いと思っている鳥類学に興味を持ってもらうことや読み手を飽きさせないことには成功している。要するに、面白いのだ。そしてタイトルとは裏腹に、そこには川上先生の鳥への愛が溢れている。

自分はエンタメ好きだし、おそらく世代も近いので、先生が映画やアニメの登場人物に例えて書いていることが手に取るように分かり、ゲラゲラ笑いながら読んでしまった。笑いながら本を読むなんて久しぶり。いちいち発想がオタク学者っぽくて(学者だけど)、先生の脳内どうなってんの? と思う箇所がたくさんある。文系の人間には書けない文章。それは、ある鳥キャラクターまで学術的に説明するあたりから、さらにエンジンがかかる。

リアルに過酷な小笠原諸島での調査話や海外での涙ぐましい話(これも笑える)などを読むと、研究者はさぞかし刺激的な毎日なのかと誤解しそうになるけれど、それは日々データとにらめっこしながら飽きるほど同じことを繰り返している上に成り立つに過ぎない。

この本を読んで、改めて研究者の努力(別名・オタクの偏愛)に拍手と敬意を送りたい。

と同時に、「好きなものは好きでいい、他人から笑われようが自分さえブレなければそれでいい。いや、たいして好きじゃなくてもやってみたら面白いかもしれない、そういうチャンスがあればやってみたらいい」と思える一冊だった。

で、何故にカールと一緒の写真をアップしているかは、読んだら分かる。こんな傑作スナック菓子が、どうして東日本では売れなかったのだろうか。おばさんでも10日に1度は食べてるけどな(食べ過ぎて、歯の詰め物が取れたことが2回ある。しかも週末の夜に)。不思議。

それにしても、本の装丁と菓子のパッケージの色彩が予定外に似ている。同化。

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文庫本がアマゾンで売られていない。一応、単行本を貼っておこう。

注)‘’オタク‘’という言葉は、褒め言葉として常日ごろ使っております。


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