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主人公の危うさと対照的なテンポの良い台詞/金曜ナイトドラマ『和田家の男たち』

こんな見出しだと、「このドラマ、ほのぼのしてるじゃないのよ」と視聴している人から叱られるかもしれない……。

実を言うとまったく観るつもりではなかったのだが、段田安則さんだけでなく小池栄子さんも出ると知り、視聴しはじめた。

主人公は相葉雅紀さん演じる和田優。例の疫病で勤務先が倒産し、デリバリーの配達で生計を立てていたが、ひょんなことからネットニュースの記者になった37歳の男だ。26年前に亡くなった母(小池栄子さん)の再婚相手、血のつながらない父親で報道番組の総合プロデューサー・和田秀平を佐々木蔵之介さん、祖父で元新聞記者の和田寛を段田安則さんが演じている。世代の異なる独身男性の家族が、再会をきっかけにひとつ屋根の下で暮らすことになる。

37歳にしては、ぼんやりしている役どころの相葉くん。優はやさしく穏やかでありつつも、早くに母親を事故で亡くし、その原因を聞かされなかったことが幼心に少々闇をつくってしまった様子。忙しい両親に代わって献身的に家事をこなしていた幼い彼は、母亡き後も秀平と暮らし、大学卒業・就職を機に自立。そんな優だが、どうにも子どもの純真さが残ったままで危なっかしい。

「こんな37歳、いるのかな?」と不思議に感じながら観ているが、男3人が食卓を囲むシーンは面白い。業態は違えども全員がマスコミ関係者。三世代のジェネレーションギャップを感じさせる台詞が、ポンポンと気持ち良く飛び交う。特に蔵之介さんと段田さんのやり取り。報道マンと元新聞記者という役柄なので、とにかくぬかりない2人なのである。そこにちょっと間の抜けた相葉くんの台詞が入るのがツボ。

それにしても、ガウンも着こなすダンディな祖父役の段田さんって珍しい。しかも彼女(草刈民代さん!)にフラれて落ち込んでいるとき、ちょっと可愛らしかった。個人的に、この段田さん推し。NHK大河ドラマ『天璋院 篤姫』で将軍家定を演じた堺雅人さんが、当時田渕さんに「バカ殿っぽいけど(うつけだけど)、上品さと可愛らしさのある将軍を演じてほしい」みたいなことを言われた話を思い出した。「ダンディ」と「可愛い」を共存させる役も大変だ。

軽快な台詞を書いている脚本家は誰なのかと調べたら、大石静さん! そうだったのか。知らずに観ていた。『あのときキスしておけば』ではお世話になりました。

金曜22時から他局ドラマでハラハラ&ギュンギュンし、「うちは大ちゃん派やよ」「いや、加瀬派ですから~」と熱くなった後でも、ボーッと視聴できるのがいい(全然褒めてない感じになっちゃってるけど、会話劇は面白いんですよ)。考察などとは縁遠い、おいしそうな料理の数々。朝から秋刀魚とは豪勢な!!  ……と、食卓のシーンはテンションも上がる。これが『何食べ』のシロさんだったら「ケンジー、朝から秋刀魚なんて贅沢過ぎだろ」と怒られてるよ、ってことは自分の脳内だけのお話。

「考察などとは縁遠い」と書いておきながらあれだけど、母親の死の真相には何かあると匂わせる場面が1話に1シーン必ず登場。ホームドラマに括られる一方で、現代メディアの在り方についての問いかけも見え隠れする。そこに、主人公の危うい純粋さ。彼はどう成長するのだろう、37歳にして。

ところで週末、蔵之介さん結婚のニュースが届いた。相葉くんに続き、新婚さんが2人に。どうか劇中の和田家の男たちにも幸せを……と願いながら、第3話以降もテンポの良い会話劇を楽しめるなら視聴を続けたい。

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