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ひと足早く桜を愛でる。

先日直売所で桜の枝を買った。ずいぶん蕾が下向きなので、寒緋桜?と思ったのだが、時期がちょっと違うし、色は薄ピンクでかなり花が小さい。

じゃあ啓翁桜? この時期、私の好きな笠智衆さんのふるさと・旧天水町では、「草枕温泉てんすい」のロビーに別名「てんすい桜」と呼ばれる啓翁桜が展示され、温室で咲かせた切花が販売されるのだ。ついこないだ正月だったのに、もうそういうシーズンか。

てんすい桜の切花と似ていたので、見かけた桜も啓翁桜だろうと買って帰った。しかし調べれば調べるほど、分からなくなってしまった。脳内混乱中(『不適切にもほどがある!』を観たばかりで、こちらも脳内混乱中!)。ネットで調べると桜は種類がたくさんあり、「アレとアレの交配したもの」なんてものが山ほどあった。

こちらは日本花の会の「桜図鑑」というサイト。

サイト内で検索したら、啓翁桜は「シナミザクラとカンヒザクラの雑種と推定される」とある。これは、「確定ではないけど、そういう説がある」という解釈だろうか。

私が知っている桜の品種は、他に染井吉野と大島桜、河津桜、陽光桜、十月桜ぐらい。あと、3月の半ばごろに山肌に咲いている白い桜は、すべて山桜と呼んでいる。だがこのサイトには401種類の桜が掲載されているとあった。桜って、そんなに品種があったのか。

以前、動植物園で撮影した陽光桜。

最近、昭和の時代に植えられた桜が老木となり、朽ちていくのを見かけるようになった。昔住んでいた実家の池のほとりにも、大きな桜の木があった。子どものころ、よく登ってセミを採っていた木だ。春になると毎年花を咲かせ、見頃を過ぎると花吹雪が舞った。

桜は、国語の教科書に取り上げられている「言葉の力」(大岡信)にも登場する。皆さん、おそらく記憶にあると思う。染色家・志村ふくみさんの話である。学校の帰り、「この黒い幹の皮で染めたら、本当に桜色になるのか?」と、実家の桜を見上げたのは遠い昔。その木は私が大学生になったころ、空洞ができて倒れる恐れが出てきたため仕方なく伐採。樹木にも寿命があるのだと、実感したできごとだった。

桜の開花は、春の訪れとともに人生の旅立ちと重なることが多い。ひと足先に切花で春を楽しませてもらっているが、そろそろそんなシーズンがやってくる。美しくも儚い花が、それぞれの人生を彩る季節がやってくる。

結局、これは啓翁桜なのだろうか……。

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