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中国茶のある暮らし――5月のお茶「岩茶」


長い歴史に磨かれた豊かな中国茶の世界。
四季折々の甘味や食に合わせるお茶を、中国政府公認の評茶員・茶藝師の澄川鈴が提案します。
心に余裕がなくなりがちな日々だからこそ、めぐる季節を愛で、自分を癒すひとときを。
そして、お茶を通して見える中国の人々の素顔と暮らしにも、ほんの少し触れていただけたらと思います。


☜ 連載「中国茶のある暮らし」


5月のお茶請け「柏餅」

 5月5日は「こどもの日」。日本では端午の節句でもあり、街中でもベランダなどに鯉のぼりを飾っているご家庭をちらほら見かけます。

 この端午の節句も、起源は中国にあるとされています。ただし、農歴(旧暦)が用いられている中華圏では、今年の端午の節句は6月3日となります。

 そこで今月と来月は、端午の節句の際にそれぞれの国で食べられているものをお茶請けにしたいと思います。

 今月は日本の端午の節句です。日本では古くから鯉や栗、ちまき、柏餅が食べられてきたようです。今回は、あんこの名店「御座候ござそうろう」の「かしわ餅」をご用意いたしました。

「御座候」の「かしわ餅」と、「老欉水仙」

 淹れる茶は、福建ふっけん省の武夷山ぶいさんが産地の「老欉水仙ろうそうすいせん」という「岩茶がんちゃ」です。

「岩茶」とは、しっかり火が入った青茶(烏龍ウーロン茶)のこと。香ばしい香りと深みのある味が特徴で、飲むと力が漲ることからお茶好きのあいだでは〝茶のリゲイン(栄養ドリンク)〟と呼ばれていたりもします。豊かな土壌で育った茶葉を使い、手間ひまかけて製茶されます。

「岩茶」には「肉桂にっけい」や「水仙すいせん」という有名な品種があり、「老欉」とは樹齢50年を超える茶樹を意味します。

 季節の変わり目になかなか身体がついてこない今日この頃。力を漲らせる岩茶とあんこの優しい甘さで疲れを癒しませんか。

 サントリーの烏龍茶のもとになったという点で日本でもファンの多い岩茶。烏龍茶だけでなく、ほうじ茶が好きな方にもきっと気に入っていただけるはずです。

「老欉水仙」の茶殻


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