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連載「中国茶のある暮らし」澄川鈴

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「中国茶のある暮らし」には、2つの意味が込められています。 日本の暮らしで中国茶をもっと気軽に楽しむこと。そして、お茶を通して見える中国の市井の人びとの横顔。 歴史に磨かれた豊か… もっと読む
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3月下旬発売 『順茶自然』澄川鈴 著者インタビュー

〈本の予約はこちら〉  大阪・高槻市で中国茶教室を営む澄川鈴さん(中国政府公認評茶員・茶藝師)が、これまでに得た〝茶縁〟の数々を綴るエッセー集『順茶自然』(3月下旬発売)。  同書の予約受付をBUNBOU STOREで始めるにあたり、著者インタビューを行った。 取材・文:BUNBOU WEB編集部 写真:SHISHIDO Kiyotaka 〝線〟を曖昧にしたい―― 『順茶自然』は、noteの「BUNBOU WEB」上で2021年9月から翌22年8月まで連載した「中国茶の

中国茶のある暮らし――8月のお茶「正山小種」

☞ 連載「中国茶のある暮らし」 かき氷と正山小種  今年は6月末から暑いですね。年々、夏が暑く長くなっている気がするのは、私だけでしょうか。  中国では、夏でも体を冷やす冷たい食べ物や飲み物はあまり好まれません。しかし、アイスクリーム(冰淇凌/bīngqílín)は別のようです。食べる人は夏だけでなく、冬にもアイスクリームを食べます。 「暖気(nuănqì)」と呼ばれる石炭を使った暖房設備が建物を丸ごと暖めてくれるので、真冬でも室内では半袖で過ごすことができ、アイスクリー

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中国茶のある暮らし――7月のお茶「擂茶」

☞ 連載「中国茶のある暮らし」 7月は擂茶のアレンジレシピを紹介 「客家擂茶」という茶をご存知でしょうか。茶葉と数種類の雑穀をすり鉢で〝擂り潰し〟、そこに湯を加えて飲む擂茶は、中国・客家の伝統的な飲み物とされています。  客家の人々は、黄河中流域の中原地方(現在の河南省一帯)を原郷として、一説では東晋時代(317年〜420年)の末頃から各地に南下したと言われています。現在では、主に広東省や福建省に住んでいますが、広西チワン族自治区や四川省、湖南省、さらには台湾や東南アジ

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中国茶のある暮らし――6月のお茶「白茶」

☞ 連載「中国茶のある暮らし」 6月のお茶請け「551ちまき」  今回は、白茶の老寿眉(lǎoshòuméi)に551蓬莱の「551ちまき」を合わせようと思います。  関西では「551の豚まんがあるとき/ないとき」のCMがお馴染みの551蓬莱。「豚まん(肉まん)」や「アイスキャンデー」がよく知られていますが、「551ちまき」のほかには「甘酢団子」「焼売」「焼餃子」「551ラーメン」などのメニューがあります。 「551ちまき」には「豚肉・栗ちまき」「鶏・うずらちまき」「海

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中国茶のある暮らし――5月のお茶「岩茶」

長い歴史に磨かれた豊かな中国茶の世界。 四季折々の甘味や食に合わせるお茶を、中国政府公認の評茶員・茶藝師の澄川鈴が提案します。 心に余裕がなくなりがちな日々だからこそ、めぐる季節を愛で、自分を癒すひとときを。 そして、お茶を通して見える中国の人々の素顔と暮らしにも、ほんの少し触れていただけたらと思います。 ☜ 連載「中国茶のある暮らし」 5月のお茶請け「柏餅」  5月5日は「こどもの日」。日本では端午の節句でもあり、街中でもベランダなどに鯉のぼりを飾っているご家庭をちら

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中国茶のある暮らし――4月のお茶「龍井茶」

清明節を祝う? 中国では、今年は4月5日が清明節です。清明節とは、日本で言うところのお盆のお墓参りを行う節日です。  ちょうど緑茶の生産時期と重なることから、日本の中国茶業界では毎年盛大に清明節をお祝いします。  しかし、よくよく考えてみてください。日本のお盆にあたる清明節を〝お祝い〟するというのは少しおかしくないですか。新年に「明けましておめでとう」とは言っても、お盆に「おめでとう」とは言わないはずです。  中国本土の茶業界の人々も、かねて清明節をお祝いする日本の中国茶業

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中国茶のある暮らし――3月のお茶「八宝茶」

3月のお茶請け「ひなあられ」 3月3日は桃の節句。ひな祭りの由来については諸説あるようですが、もともとは中国の慣習だったものが平安時代に日本に伝わったと言われています。  旧暦の3月3日はちょうど桃の花が咲く時期。桃の花は邪気を払うとされ、子供の健やかな成長を願う節句として今日まで続いてきたのです。  そこで今回は、京都の老舗煎餅・あられ・おかき専門店「小倉山荘」のひなあられ「春ひいな」と、八宝茶の組み合わせを提案します。  八宝茶(bābăochá)とは、ドライフルー

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中国茶のある暮らし――2月のお茶「普洱生茶」

2月のお茶請け「水餃子」 春節快楽!  先月に引き続き、あけましておめでとうございます! 中国最大のイベントである春節の到来です。  春節とは、農暦(中国や台湾で用いられている暦。日本の旧暦にあたる)における正月(旧正月)のこと。新暦に置き換えると、今年はちょうど本日2月1日が春節となります。  日本には大晦日に年越しそばを食べる風習がありますが、中国では東北地方(遼寧省・吉林省・黒竜江省)を中心に大晦日に水餃子(水餃・shuǐjiǎo)を食べる習慣があります。  そこで

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中国茶のある暮らし――1月のお茶「黄茶」

1月のお菓子「花びら餅」 新年快楽! あけましておめでとうございます!  2022年の幕が明けました。  と言っても、中国はチャイニーズニューイヤーの春節に盛大にお祝いするので、西暦の新年は世界に合わせてさらっとカウントダウンをする程度です。  昨年もおうち時間が長く、お茶を飲んで気を紛らわせた方も多かったのではないでしょうか。今年こそはコロナ禍が終息して、皆さまの日常が戻り、海外との往来ができることを切に願っています。  そんな新年の茶菓子は「花びら餅」を。  そ

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中国茶のある暮らし――12月のお茶「龍脊古樹紅茶」

12月のお菓子「ショートケーキ」  ふと気付けば、きょうから12月ですね。  振り返れば今年もコロナに翻弄された1年でした。中国に行くこと叶わず、残念無念。  そんな寂しさを、せめて美味しいケーキと中国紅茶で紛らわせようと思います。  選んだのは、神戸の名店アンテノールのショートケーキと、広西チワン族自治区の龍脊古樹紅茶です。  じつは紅茶も中国が発祥の地です。  この龍脊古樹紅茶は、私の中国茶の先生の後輩が、数年前に現地の皆さんと開発した茶です。  中国紅茶の中でも群を

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中国茶のある暮らし――11月のお茶「普洱小沱茶」

11月のお菓子「どら焼き」 「1」が4つ並ぶ11月11日。  日本では「ポッキーの日」として知られていますね。「ポッキーの日」が日本記念日協会から認定されたのは、1999年(平成11年)11月11日のことです。  中国では90年代から、この日が若者たちの間で「独身の日」と呼ばれるようになっていました。「光棍節」や「双十一」とも称されます。光棍とは樹皮をはがしてピカピカに磨いた棍棒のこと。つまり、もう地面に植えても繁殖することのない植物になぞらえて、独り身を自虐気味に表して

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中国茶のある暮らし――10月のお茶「茉莉花茶」

10月の点心「豚饅頭」  中国語では、逆上せることを「上火」と言い、熱を取ることを「去火」と言います。  中国の考え方では、食物には主に「温・熱・寒・涼」の4つの〝食性〟があるとされ、人々はそれらを組み合わせて体調を整えるのです。  北京の人々は、その多くが日常的にお茶のボトルを携帯しています。茉莉花茶や菊花茶の茶葉をボトルに直接入れ、湯を注ぎ、継ぎ足しながら飲むのです。北京に行けば、タクシーの運転手さんがそうやってお茶を飲んでいる光景を見られるはずです。  私が北京で

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中国茶のある暮らし――9月のお茶「鉄観音」

9月のお菓子「月餅」  旧暦8月15日の中秋節は、中国では「団圓節」とも呼ばれます。団圓は中国語では「团圆(túanyuán)」と書き、団欒する、集まるなどの意味をもっています。  満月を観賞しながら、親族や友人が集まって月餅を食べる。これは秋の風物詩で、新暦に直すと2021年は9月21日が中秋節にあたります。  月餅は横浜の老舗菓子舗「和昌」の豆沙(黒小豆の餡)を。お茶は私が福建省の安渓で入手した鉄観音の秋茶を選びました。  満月の形を模した甘くて香ばしい月餅と、同じく

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