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フラッシュ!超速にして傑作!

映画『ザ・フラッシュ』を観る。

ここからはネタバレも交えて、だらだらと書きます。

DCユニバースの最新作である。私はマーベルとDCならDCの方が好きで、マーベルはフェイズ4に入ってからほとんど観ていない。
とはいえ、DCも同様で、『ブラックアダム』と『シャザム』2作、『ハーレクイン』の4本は観ていない。8月の『ブルー・ビートル』は観ようかなと思っているが、お金のことを考えると、『トランス・フォーマー/ビースト覚醒』とどちらにするか悩むところである(まぁ、どちらもバカ映画臭いが、映画館で夏に観るのは、バカ映画と相場が決まっている!)

映画は1,500円とか2,000円とかかかるので、漫画や小説を買ったほうがいいかなど悩んでしまう。特に、この前観ようと思っていた横浜流星さん主演の『ヴィレッジ』なんか、もうNetflix配信になるので、映画館で観なくて良かった〜と思った次第。

で、『ザ・フラッシュ』なのだが、まぁ非常に凝った作品で、傑作だと思う。DC作品の中でも群を抜いて素晴らしい。『ジョーカー』や『ザ・バットマン』も良かったが、ビジュアルの作り込みや物語の転がし方などが大変に良くて、入れ子構造的にヒーロー誕生譚とヒーロー成長譚の、要は2本分を2時間半で描いていて大変に良かった。
物語的には、フラッシュことバリー・アレンの超速によって、過去へと戻ることが可能になり、最愛の母が死んだ原因を取り除く行為を行ったため、別の時間軸が出来上がる。その時間軸に、何者かの攻撃によりはじき出されてしまったバリーはなんとか脱出しようとするが、そこに最愛の母に愛されて育てられたその世界のバリーが現れて、という話。

私は原作の『フラッシュ』には疎いので、元となるエピソードがあることは識ったのだが、然し、無論読んでいない。そもそも、アメコミは苦手である。『フロム・ヘル』や『ウォッチメン』、『スワンプシング』などのアラン・ムーア作品は読んでいるのだが(海外でしか出ていない『LOST GIRLS』とう性愛版おとぎ話も読んだ(読んだ、というか見た))、その他は『シン・シティ』や幾つかの『バットマン』作品、それも『キリング・ジョーク』とかそういう有名所だけであり、完全にコミックブックに関しては知識はまぁ素人に毛の生えたところである。

なので、今作はやはり昨今の異常なマルチバース、所謂多元宇宙、枝分かれしていく幾つものあったかもしれない、或いはあった可能性の世界、それが交差して物語が進んでいく、あのブームがもうどうにも私的には限界である。
いや、恐らくは多くの観客が同様の思いを秘めていると思われるが、まぁ、これはある種のトレンドのようなもので、何れは無くなる気はする。
映画、特にアメコミ映画はそもそもは2000年代に入るまでは冬の時代、2010年代からは日本ですら『スパイダーマン』、『ダークナイト』(といっても国内興行収入はそこまでだ)とかはヒットしていても、『アベンジャーズ』が公開されるまではMARVELの映画も大したことはなかった。

奇しくも6/16には『ザ・フラッシュ』と『スパイダーマン/アクロス・ザ・スパイダーバース』というマルチバース展開のアメコミ映画が同時公開という異常事態で、ただ、このマルチバースというのは映画との親和性が非常に良いなと思ったり。と、いうのも、2000年代、2010年には、漫画の続編ものが異様に流行った。要は、30代、40代のおっさんが少年時代に焦がれた漫画たちを、金を持ったおっさんに向けて届けるという、おっさんにも、そして漫画家にも嬉しい一挙両得の企画だったのである。
まぁ、少し違うかもしれないが、このマルチバース展開はアメコミ、特に『スパイダーマン』や『バットマン』など、演者が複数いる作品にとっては非常に美味しい手法なのだろう。新旧共演というのは、誰が観てもワクワクするものだ。親世代も、子供世代も、自分たちの世代のヒーローたちがスクリーンでクロスするその感動、そして、悲しいかな、オタクはその両方に思い入れがある。

まぁ、そんなこんなで、今作にもマイケル・キートンバットマンがメインキャラクターとして登場し、更に◯◯◯◯・◯◯◯◯バットマンも登場するし、ベン・アフレックバットマンも登場する。バットマンのバーゲンセールや〜!だから、1989年版の『バットマン』のファンは、あの、ティム・バートンのバットモービルが出た瞬間、恍惚のため息をついたことだろう。それほどに美しいのだ、あのデザインは、凄まじく洗練されている。無論、ベン・アフレックバットマンの無骨さもいいが、あれはやはり、クリスチャン・ベールバットマンの、ノーランのリアリズムを受け継いでいて、あまり好きではない。私的には、やはり『バットマン』はティム・バートン、それから『ザ・バットマン』のゴシックバットマンなのだと再認識に至る。

美術が最高に美しい。『リターンズ』も。
こんな車に乗って京都の夜を爆走したいね。

まぁ、然し、『バットマン』はサービスであり、あくまでも主役は『フラッシュ』である。
今回のフラッシュは冒頭の病院の大破壊からの、赤ちゃん救出シークエンスというとびきりにクールな映像表現で観客を沸かせて見せたあと、もう一人のフラッシュとの間に芽生える師弟関係的な漫才演技の妙、更には、過去へと至る超速スピードにおいて見せるこれまた飛び切りにcool!cool!cool!な映像表現で観客の脳内を気持ちよくシェイクしてくれる。

許斐先生〜!

私は、基本的には映画を観るときも、次に書く文章の構成を考えており、つまらない映画の時はその構成構築作業が捗るのだが、今作では何回かその作業を忘れてしまった。

さらには、今作でも白眉なのは、後半に登場する、映画化企画のあった作品を多元宇宙として描くことで、ファンの妄想を爆発歓喜させて、なお物語の帰結としての、まぁ、言っちゃえば、『バタフライ・エフェクト』的な、あの切なすぎるラスト(いや、これは、惹句であっただけであり、私が言っているわけではないのだが)とまさに虚実で重なる、本当にはあったんだ、そんな気がしたんだ、的な、一瞬の白昼夢めいた作品内容を比喩としても抜群に機能しており、まさにウルトラC的な演出、かつ、今作における紛うことなき神聖は主演のエズラ・ミラーであり、彼の作り上げたキャラクターは最高にcoolかつ愛すべき人物に仕上がっており、誰もがスクリーン上の彼に恋すること請け合いの、まさにアドニス!と言っても差し支えないほどに素晴らしい名演を見せている(とはいえ、彼はプライベートで色々問題がある。然し、私の誰よりも愛する俳優マーロン・ブランドも、プライベートは狂った野獣であった)。

とにかくウルトラに素晴らしい作品であり、その顛末もまさにドラえもん的な、壮大なことやってるんだけど、本当にはなかった、いや、あった?そしてあんなことするから〜という、小気味の良い終わり方、まぁいい映画だった!堪能した!

無論、ツッコミどころは山とあるのだが、この映画を劇場で観て良かった〜。


暫定2023年ベスト(映画館で観たものに限る)

1位:ザ・フラッシュ…96点
2位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー.Vol.3…93点
3位:フェイブルマンズ…83点
4位:AIR/エア…80点
5位:クリード/過去の逆襲…75点
6位:アラビアンナイト/三千年の願い…74点
7位:シン・仮面ライダー…62点

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