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グレイランド事件クライマックス

以前、noteでも書いたのだが、私は『ベイグラントストーリー』というゲームが大好きである。


発売は2000年2月10日、つまり、『FFⅧ』の発売日のほぼ一年後(『Ⅷ』は11日)。


ディレクターは松野泰己、キャラクターデザインの吉田明彦、コンポーザーは崎元仁、アートディレクションは皆川裕史、と、こう聞けばおわかりになるであろう教団ことスクウェア第4開発事業部の作品で、同チームは『FFタクティクス』や『FFⅫ』、そして『タクティクスオウガ』を作った人々で構成されているのだが、当時中学生の私はちょうどファミ通ブロスを読みながら、『ブレイブフェンサー武蔵伝』を楽しんでいた精神年齢の幼いクソガキだったので、『ベイグラントストーリー』はダサいとすら感じていた。

然し、1999年7月15日に発売された『聖剣伝説レジェンドオブマナ』に付属されていた体験版にやられてしまったのだ。正確には、デモ映像であるが。
この体験版は私には神DISCと言っても過言がなく、まず、都会の夜景を思わせるアレンジ版のジャジーな『FF』の前奏曲をBGMに、今までのスクウェアから発売された全ての作品が写真付きで紹介されているデータログを閲覧することが出来る。この時点で満点である。はっ、たかだかその程度の情報じゃないかとお思いになられるかもしれないが、思い出して欲しい。少年少女の頃に捲ったお正月やクリスマスのゲームソフト屋のチラシの輝きを、月に1冊だけ買ってもらえるコミック雑誌を。あの、幼い頃に巡り合う僅かな書籍の類を、私は枕元において何度も読み返したものだ。その宝は記憶となって、想い出となって、私を形成している。

話を元に戻そう。そのDISCにはこれから発売される4本のソフト、1999年9月3日に発売を控えていたフロントミッション3rd、同年10月14日に発売を控えていた『デュープリズム』(このゲームは宝石である。そして、サントラはもっと宝石である)、さらには同年11月18日に発売を控えていた『クロノクロス』、そして、翌年ミレニアムに生まれる『ベイグラントストーリー』である。

私は全てのゲームを一通り体験し、発売までの間の疼きを抱えながら、『ベイグラントストーリー』をセレクトし、ボタンを押した。
初見の感想は『なんでぃ。ただのムービーだけじゃんかよ!』と憤慨したのだが、この時の私はまだ念という概念を識らず、念能力者の作ったゲームであることを見抜けなかったのである……。

と、話をもっと元に戻そう。要は、この、ディレクターの松野泰己氏、あの天才的な人買い人(褒めている)である、坂口氏の愛した男(実際には愛していると本人に言っていたし)が作る、彼曰くこの火曜サスペンス劇場を目指したこの魔都への潜入を試みる戦士の物語は、とんでもないほどに濃厚に洋画の香りが漂う極上の映画的ケレンに満ちた大傑作であり、私はそれに、まぁ簡単に言えば筆おろしされてしまったわけである。

今作は、狂信的カルト教団メレンカンプの首謀者シドニーがバルドルバ公爵邸に侵入占拠し、彼の愛息子を人質に取り立てこもるところから始まる。
ゲームスタートはそこからで、それがグレイランド事件クライマックスであり、曲名でもあるのだが、このシーンは約10分ほどだが、是非観ていただきたい。
映画的な演出がそこここに散りばめられており、特に、主人公アシュレイとシドニーが相対し、ワイバーン召喚か〜ら〜の戦闘開始、までが見事な描き方である。


私は『ベルセルク』を思い出していた。『ベルセルク』の何が面白いかって、それは単行本5巻における不死のゾッドとの初めての邂逅、ワイアルドがあの邪悪な姿を顕すところ、寝物語の世界の話だと思っていた化け物が現実に立ち顕れて呆気に取られる人々、恐怖を感じ、どうしたらいいのかわからない時に叩き潰しに向かうガッツのドラゴン殺しの迫力である。

あの火花散るような奇蹟とも言える使徒との闘いのゴングがなるその瞬間がたまらなく面白いのである。

今作はまぁ、だから私にとっての『ベルセルク』なのである。そういえば、この年かその前年くらいに、『ベルセルク/生誕祭の章/喪失花の章』というドリームキャストのゲームがあって、それはちょうど『ロスト・チルドレンの章』くらいの分量で、単行本でいうところの21巻〜22巻の間なので、実はこの話とかを漫画化してもらいたかったり。ちなみに喪失花はマンドラゴラであり、敵キャラは最後キメラみたいな使徒になっていた。

画像をお借りしました


『FFT』でも元人間が石の力でルカヴィ(化け物)になったり、主人公のラムザとディリータの関係性もガッツとグリフィスに酷似しているし、これはまぁどう考えても影響下にあると思うのだが、まぁ、いずれにせよ、『ベイグラントストーリー』は傑作であり、難易度は相当に高いのだが、その映画的な香気を失うことなく、寧ろボルテージを上げていって最後には名画を観終えた程の感動を与えてくれる、そのようなクオリティの格別な1本に仕上がっている。

『ベイグラントストーリー』は35万本売れているので、家族間、中古流通を考えたら100万人はプレイしていると思われるが、もっともっと『ベイグラントストーリー』を愛する人々を増やしていきたい思いでいっぱい。



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