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文学的ゲーム


私はPS時代にはゲームをたくさんプレイしていて、最近ではめっきりしなくなったけれども、好きなゲームクリエイターは断然松野泰己氏である。

松野泰己氏といえば、『伝説のオウガバトル』、『タクティクス・オウガ』、『ファイナルファンタジータクティクス』、それから途中降板になってしまったが、『FFⅫ』などがあります。

しかし、その中でも一等好きなのが『ベイグラントストーリー』である。『ベイグラントストーリー』は2000年2月10日に発売された。ちょうど、『FFⅧ』が1999年2月11日発売なので、その一年後である。
パシフィコ横浜で開催されたスクウェアミレニアムで、『FFⅨ』、『FFⅩ』、『FFⅪ』の同時発表、プレイオンライン構想などが発表された時期である。

この『ベイグラントストーリー』は『聖剣伝説レジェンドオブマナ』の体験版ROMにオープニングのデモが入っていた。大体10分足らずの物語冒頭のデモであるが、度肝を抜かれた。

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物語は貿易都市グレイランドのバルドルバ公爵邸をシドニー・ロスタロット率いるカルト教団メレンカンプが占拠、公爵の愛息子のジョシュアや使用人たちを人質に取って立て籠もり、治安維持騎士団に囚えられた仲間の釈放などを求める。治安騎士団のエリートであるリスクブレイカーのアシュレイ・ライオットは単身公爵邸に潜入し、シドニーを拘束するために動くが、彼はそこで『魔』を見てしまい、シドニーも取り逃がす。そうして、シドニーに導かれるまま、廃墟となった魔都レアモンデに単独潜っていく…という筋書き。

まぁ、難しいゲームで、ダンジョンをどんどんどんどん奥深く進んでいきます。
魔法は出てきますが、それはもう滅びた技術のようなもので、大体18世紀とか、それくらいの文明感の世界なのですが、このレアモンデの退廃感がたまらなく良い!
また、登場人物は十数名ほどですが、それぞれに思惑が在り、当時のキャッチコピーにもあった、『近づけば近づくほど』真相が靄に包まれていくシナリオはよく出来ていて、その演出も映画的です。松野氏はFFは映画だから、こちらは火曜サスペンスで、とインタビューで語っていましたけど、実際に映画にひけをとらない素晴らしい作品です。

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崎元仁氏の音楽、吉田明彦氏のキャラクターデザイン、またスクウェア旧第4開発部(通称教団)のゲームデザインには本当に唸らされました。
開発中にメタルギアショック(『メタルギアソリッド』)が襲ってやばいやばいとなったらしいですが、全く、同等かそれ以上の作品です。

この作品を私は文学的なものだと感じていて、それは言葉よりも表情で語る、つまり、行間を読むことを要求されるゲームだからですが(小説も駄作ほど説明が多い、その方が売れますからね、全員を対象にするから。反対にそれは読者を莫迦にしているんですが)、彼らは雄弁に語るようで真実を語らず、結局真実はどちらもでも良い、それを選ぶのはお前だという、現実と地続きのことを語っている作品です。
人は立場によって見方が変わり、物事は多面的ですが、この作品は多面的に見ようとも完全な結晶体になっている、傑作です。

ちなみにこの作品の舞台レアモンデの舞台はフランスのモンサンミッシェル修道院、また、南フランスのサン・テミリオンというワインの名産地で、私の夢はサン・テミリオン旅行なんですが、いつか行けるといいなぁ。

世界遺産・サン=テミリオン地域


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