文章の6系統 向き不向き
小説を書く際、短編が得意な作家、長編が得意な作家がいる。
川端康成は前者で、長編作品も多くをものしているが、けれどもやはり真価は短編だろう。
短編よりも短い掌編小説を集めた、『掌の小説』(或いは、たなごころ)という作品集もあるが、短編は抜群に巧い。
長編でも、『東京の人』など私はとても好きだが、これはダラダラと続いており、新潮文庫で4冊、川端最長の小説ではあるが、着地点は見当たらない。
川端の小説は着地点が見当たらない。これは、構想を丁寧に練ってプロットを書いて書くのではなく、なんとなーく書いているのが得意なのだからと思うが、これは向き不向き、というものが確かにあるものだ。
つまり、プロットを書く、起承転結を丁寧に練り、設計図を書いてから書くのが出来ないタイプ、というのは結構いるもので、そういう人は無理してプロットを書く必要性はない。
村上春樹とか推敲が大好きなようだが、推敲が嫌いな人もいるだろうし、その場のドライブで書く人もいる。
つまりは、『HUNTER×HUNTER』における念の六系統であり、強化系、変化系、具現化系、操作系、放出系、特質系といるなかで、自分の系統を伸ばすと、念能力における発(個人個人の特殊な能力)において精度が増す。
そして、小説にも系統は存在する。
文章の場合、①論文系、②純文学系(私小説含む)、③詩歌系、④ミステリ・ホラー系、⑤エンタメ系、⑥エッセイ系、と六系統あり(適当ダ!ちなみに隣り合うものが念と同様に親和性が高いのダ!つまり、純文学系は詩歌系とも親和性があるのダ、的な感じでミステリとエンタメは同じじゃね?とか、他にも色々あるやん、とかそういうツッコミはいらないゾ!)
自分がどれに該当するのかを考えると、自ずと自らの書くべき文章が見えてくるのである。
エンタメ系を得意とする人は、他系統の能力を上げるよりも、それを磨くのが最善だということだ。
川端康成は恐らくは詩歌系よりの純文学系に属しており、彼は新感覚派であるため、そのテイストを小説に持ち込んだ。そのため、彼の文章(特に短編)は、ある種散文詩であり、長編でもそれに親しいものがある。
と、いうのも、川端康成は代表作『雪国』も『千羽鶴』も『山の音』も、一つ一つの章ごとで発表し、それはある意味「任せた!未来の俺!」的な、つまりはオシシ仮面のような、どう考えてもぼんやり着地しか考えていない作劇方法で物語を進めていく。
『雪国』に至っては、掲載誌が毎回変わるし、連載というか、書いたら発表的な、ある種『HUNTERXHUNTER』的長期休載&連載で完結まで進んでいく。そして、『雪国』は一話ごとで物語が完結していても、それはそれでいいような話になっている。何故ならば、『雪国』は小説の体裁をとった詩だからである。
あれは、川端=島村が、雪国で見た景色と女の生命に虚無的な美しさを感じるだけの小説であり、大きな物語というものはない。
で、まぁこの文章系統はお遊びのようなものだが、然し、実際にそういう自身の文章系統を伸ばすのは重要で、何故ならば、人は苦手なことは克服はできるが、それには多大な忍耐を要すること、また文章は基本的には
自分自身しか味方がいないため、これもまた根気を必要とし孤独であること、明確な正解がないため、自分の立ち位置がわからないことなど、様々な問題が山積しているためである。
まぁ、純文学を書くのが好きな人は、どうしてもエンタメ系では力を発揮するのは難しくなるから、必然純文学に寄っていくわけだが。
私なんか、自分は恐らくはエッセイ系だと思っているので、純文学とかミステリーとか書くのは苦手である。
だからか、詩や短歌、俳句などを得意とする詩歌系のような、美的な目、繊細な目、飛んでいく目が持てない。飛んでいく言葉が書けない。
詩人は、社会を射抜く目を持っているので、その眼差しから見えたものを、別の何かに仮託して、美しい詩を作りあげるわけである。
短編しか書けない!という人は、まぁ短編をつらつら書いてつなげる川端康成メソッドがオススメである。短編をつなげて長編をでっち上げたらいいのである。
新人賞など規定で長編(とは言っても、10万字程度)での募集が多いため、ここで詰む方が多く、必然規定枚数の少ない方に流れる方も多いと思うが、まぁ、長編というのは本にしやすいという事情も絡んでいる。
売り手側も、そして大多数の物語形式が好きな買い手側も、長編であることを求めている。
だから、基本的にはエンタメ系、ミステリー・ホラー系が有利な状態ではあるが、純文学系を書かれる方は、もう一度言うが、川端康成メソッドがオススメである。
性格別診断(私の偏見)※お遊びです。
論文系=傲慢、知識量が豊富、意識高い系、面倒見が良い
純文学系=根暗、攻撃的、なのに優しい、繊細
詩歌系=ナルシスト、打たれ弱い、理想主義、
ミステリー・ホラー系=真面目、猜疑心高し、理論派、リアリスト
エンタメ系=社交的、事なかれ主義、リア充
エッセイ系=対岸の火事、マイペース、虚無主義
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