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落語のマンガに聞き惚れて

今、話題のコミックの『あかね噺』の1巻、2巻を購入して読む。

1巻は既に三刷目。なかなか刷ってるな〜。

『あかね噺』は落語漫画であり、それが週刊少年ジャンプで連載されている。
落語漫画といえば、私が1年に1回は『どうらく息子』を読み返している。


『どうらく息子』はビッグコミックスで青年マンガなので、少年漫画とは異なるフォーマットで作品が作られている。私はその違いに面白さを感じながら読んだ。

週刊少年ジャンプは友情努力勝利の3本柱を軸にしているが、何よりもキャラクターの濃さ、というかケレン味、というか、そこに力点が置かれている。
落語、これは確かに少年ジャンプ的、少年漫画的や作りに合致している。
師匠(強者)に弟子入りして前座になり、二つ目、真打ちと駆け上がっていく。部活動系漫画で言うところの先輩キャラとして、前座や二つ目の同門キャラが登場したり、力関係の描き方もわかりやすい。
『あかね噺』は王道のジャンプ漫画以外の何物でもなく、誰が読んでも面白い作りになっている。

まぁ、私は『どうらく息子』寄りではあるが。

『どうらく息子』はおっさんが読む漫画なので、基本的には『あかね噺』から仄かに漂う、所謂「わたしツエー系」のチート系少年少女夢物語とは異なり、①怒られてばかりであり、②上下関係は絶対であり、③稽古は厳しい、が、然したまに褒められたり、良かったよ、なんか言われたりしてジーン、としてしまう、そんなタイプの漫画である。

2つは落語という同一の素材を根底に抱えながらも、然し明確に御客様の層が異なっている。
これは、小説でも同じことが言える。プロの作家を目指す方も多いと思うが、新人賞には明確にカテゴリーエラーというものが存在する。
どんなに優れていても、想定していない御客様へ届かない作品というのはゴミでしかないのだ、その場所においては。
自分の作品を置くプラットフォームの性質、そこから考えて、戦略的に闘わなければならないのは明らかだ。

映画『プラットフォーム』の明らかだ、ばかり言う爺さん。

『あかね噺』の中で好きなキャラクターはこぐま兄さんである。

こぐま兄さんは落語の噺を演る時に、その噺の時代の風俗や舞台となった土地などを徹底的に調べるのであるが、その識る魅力、識ることで作ることのできる地平を体現したキャラクターであり、これは大変に重要なことである。
こぐま兄さんの「君の言い立ては未だ音だね 言葉に成っていない」は名言であり、こういう付け焼き刃ではないが、本当に本人のものにするためには、不断の努力が必要であることが描かれていてなかなか興味深い。

私はあくまでも『どうらく息子』に一票を投じるものだが、『あかね噺』も大変に面白いのでオススメである。
痛快に楽しみたいのなら『あかね噺』、シンミリとしたいのなら『どうらく息子』、になるのかなぁ。
まぁ、『食戟のソーマ』と『美味しんぼ』みたいなものである(全然違う)。

小説家を目指す人は、落語を聞くのがオススメである。
言葉のリズムを掴むための勉強になるし、単純に、心動かされるからだ。



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