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石が、僕を書く

ロジェ・カイヨワの『石が書く』を読む。

昔、稀覯本として流通していた本が、今年お求めやすくなって発売されたのである。
Amazonとかだと、40,000円超えているね。
私の買った本は4,200円で、まぁ、高いね。税込で4,620円だからね。

ロジェ・カイヨワが石について延々と語る本であり、私は石マニアではないので、その凄さを100%理解しているかといえば、全く理解出来ていないといえよう。

石、と言えば、つげ義春の漫画の『無能の人』のエピソードに石を売る話があるが、この話の中にも石の好事家たちが現れて、様々な石があることを教えてくれるが、石、には記憶が宿っている。いや、それは別の話で、確か『ファイナルファンタジータクティクス』だったかな。
忘れたが、キングストーンなる石も存在し、それを巡って『仮面ライダーブラックサン』では怪人たちがバトルを繰り広げていた。
そして、只今公開中の映画、『すずめの戸締まり』では災厄を防ぐための楔としての要石が登場する。
石、という自然の芸術は、様々な文学、芸術作品にも登場し、現実でも大変に重宝されたり、大いなる意味を持たされたりしている。
愛を囁く際に、美しい石を想い人に贈るのは今でも続いていることだ。

この本は石の断面をページ1枚にドドン!とレイアウトし、カイヨワの端正かつ小難しい文章と薀蓄が語られる仕様だが、まぁ、文章はおいておいて(私はカイヨワのいい読者ではない)、石の写真の美しさ見事さを愛でる本である。

石に大枚叩くはたなんて!なーんて声が聞こえてくるし、私自身、石に大枚かけられるかよってな派閥の者であるが、この本を読んじゃうと、千金積んじゃう気持ちもわからんでもないね。

カイヨワの名付けた(のか?)あばら屋石の見立てにはほとほと陶酔するばかりであり、その他に、山頂に見立てた石も大変に美しい。


素敵な御名前


絵画のような石。何らかの石、じゃなかった、意思を孕んでいるような…



そうした、天然自然の芸術である石の美を、カイヨワ一流の言葉で考察、紹介していく。

鉱物の美しさには、不可思議なものがあって、どう考えても作為的(要は、神の悪戯ではないか)と思われるものが往々にして存在していて、何故ならば、数千年に渡る蓄積がこのような不思議を形作るのであって、それはどうしても偶然性を伴ってはいるが、ほとんどもう、人間と変わりないように思われる。人間というのも、年輪や石ほどとは言わないけれども、先天性と偶然性によって形作られる作品で、CTスキャンで輪切りにされた写真にも、同様に神や自然の美が宿って見えるかもしれない。世の中は広いので、スキャンされた輪切りの脳みそのコレクターもいるだろう(ツェリードニヒ?)

話が逸れてしまったが、カイヨワの書くこの本は、装丁も美しいものだ。
この本は、御本人も石を愛する菅谷曉氏の翻訳で、丁寧に紡がれている。

カイヨワにしても、一筋縄ではいかない作家で、世の中には大変に難しい文章を書く方々が鬼のようにいて、全部を読む、なんてことはもはや叶わないことであるが、願わくば、なるべくならば、会いたかった!と心からいえる作家に会えたのならば、それはもう十分に恵まれているのかもしれない。

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