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ダンス・マカブル ②

先日、『ダンス・ダンス・ダンスール』のことを書いたが、同じようなダンス漫画をもう一つご紹介。

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まぁ、ダンスというよりも、お能なんですが。

『ワールド・イズ・ダンシング』というタイトルである。

明治に入り能楽と称される前、猿楽を大成した誰もが知る世阿弥が主人公である。
物語は彼の幼少期から始まり、幼名である鬼夜叉(世阿弥)がなぜ舞うのか、舞うとは何なのか、そして、舞うために必要な肉体、感情に関して思索を巡らしていく王道の青春物語である。

父である観阿弥に小さな頃から厳しく稽古をつけられてきた鬼夜叉は、然し舞うことにイマイチ『よい』と思えないのだが、これを、ある日あばら家で春をひさぎながら生きている女の舞を見て、『よい!』と感じる。ここから、鬼夜叉の舞への探求が始まり、これに室町幕府三代将軍の足利義満が関わってきて…という筋運び。

日本の美は、中世にある。室町時代の美こそが、おそらく一番美しいのではないか。藝術大好き川端康成も、三島も、共に中世における美に視線を注いでいた。

猿楽とか、世阿弥だとか、室町幕府だとかいうと、取っ付きにくいかもしれないが、描き方はあくまでも現代のメンタリティに沿っていて、絵もあっさり気味で読みやすい。ライバルの登場など、非常に漫画漫画しているため、すぐに入り込める。
鎌倉幕府の滅亡した1333年から始まる時代、といえば、週刊少年ジャンプで連載中の北条時行を描いた『逃げ上手の若君』などもあるから、どうしてだろうか、何故かこういう時代がリンクしているような漫画というのは、同時多発的に現れる気がする。

この漫画と『ダンス・ダンス・ダンスール』の共通項は、共に美少年が主人公であることに加えて、その主人公たちは、どちらも初めに踊りの真髄を目にして、幻視してしまうところだろうか。

『ダンス・ダンス・ダンスール』の潤平は天才ダンサーのニコラス・ブランコの踊りを見て、目の中で星が爆発する。世阿弥は、名も知れぬ女の魂の舞を見て、過去現在未来(現代まで)を一瞬で見てしまう。共に真理を見て、それを体現するためにその道を歩み始める。

舞、というのは古代から神との交信であり、ある種交配ですらある。今作でも、2巻において『まぐわい』が重要な要素であることを描いているが、まぐわうシーンが結構エッチなので、読むときには注意が必要だ!




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