デザインチームをつくるということ 第一回:デザインのケイパビリティってなんだろう?
こんにちは!CreativeDirectorの森下晶代(Akiyo Morishita)です。
先日無事出航と申し上げましたが、ここからはそこまでの準備を数回にわけてお伝えしていこうかなと思います。クリエイティブチーム始動と宣言したのに、デザインチームって書いてある?と思った方もいるかもしれないですね。そうなのです、クリエイティブチームを動かしていくにあたって、最初にはじめたのがデザインチームをつくることだったのです。これがなかなか興味深かったので、何が起きていたか記録に残していこうと思います。
▪️みんなのできることは何ですか?
私がジョインした4月にデザイン活動に関わっていたメンバーの総数はだいたい10人。この数が多いのか少ないのかという議論はさておき、メンバーのみんなが自己紹介やこれまでの活動を教えてくれました。新しい組織なのでずっとこの会社にいる人の方が当然少なく、ずっといる方も途中でデザインに興味を持ちキャリアチェンジをしてきている方なので、本当に多種多様。アパレルから入った人、広告代理店でクリエイティブディレクターやってた人、コンサルティングやってた人・・・・本当に様々です。なので、できる特技が本当にバラバラ。誰一人として近しいキャリアという人がいないので、チーム活動の最初は、「みんなは何ができるの?」から始めることになりました。
このチームのメインの活動は、クライアントワーク。なので、基本的にはPJごとにアサインされて動くスタイルが多いです。それぞれのPJの都合があるので、みんなで集まれるのは貴重な時間。そしてそんなにたくさん時間がとれるわけではないのが現実。そういう理由もあってなかなかこの「みんなで集まって何かを考える」ということが難しかったという事実もわかってきて、この場でついに、自分たちのできることが可視化されていったのでした。キャリアが多種多様なので、本当にたくさんの「できる」が集まりました。もう少し大きな組織だと、UXUIとかプロダクトとかデザインの種別にチームがあらかじめ組成されている場合も多く、こんなに隅から隅までのスキルが揃って一緒の状態というのは私にとって初めてで、ある意味の衝撃でした。これは。。。どうやってまとめていくのだろう?と一瞬の不安がよぎらなかったかと言われたら、確実によぎりました笑 でも、新しい組織なのだなということをしめかみしめるとともに、これまでとは違った活動、そしてチームができるかもしれないという期待の方が膨らむのでした。
▪️粒度をそろえる
実に様々なことができる可能性を秘めていることはわかった!のですが、わかっただけでは何も起こらないので、どうしていくのかが次のステップ。何をしたかというとデザインという言葉に込められている中身の粒度を揃えること。「○○なスキルを持っています!」の背景が、キャリアが違うために絶妙に違います。言葉だけだと同じように感じるのですが、聞いていると全然違ったりするのです。UXなんて、もはやバズワード。基本は同じでもそのカバーエリアが全然違う。このあたりの違いをグラデーション的に整えていきました。デジタルビジネスといえど、ゼロかイチかではなくグラデーションで捉えることができるのは、デザイナーでよかったなとか思いながら、ケイパビリティを可視化して、みんなの立ち位置を少しずつ確認していきました。みんなの中でも、そんなこと得意だったんだ!みたいな新しい発見のある瞬間でもありました。
▪️棚卸って超重要
みんなのできることを全部集めて、それを可視化する。一言で言ってしまえば、スキルの棚卸をしたのですが、この活動本当に重要だなと改めておもいました。なぜそう思ったのか、理由は2つです。
一つ目は、じぶんたちの足りないことがよくわかったこと。新しい組織ですし、デジタルビジネスという今成長の真っ只中にある領域をデザインしていくということで、みんなの熱量はかなり高いです。それ自体はとても良いことなのですが、これから活動を充実させていくにあたって、何を足していけばいいのか?何を伸ばしていけばいいのか?というところがあまり整理されていない状態が現状でした。実際何が起きていたかというと、クラシックなITの知識や、エンジニアへの理解が十分かといわれるとそうでもなかったり、ビジネスのどのフェーズにどんなデザイン活動があって、そこでは何を知っていればデザインできるのか?といったことが足りないことがわかってきました。
もうひとつは、自分たちの現在地を知れたこと。本当にこれは良かったなと思います。組織がちゃんとできていて、キャリアパスがはっきりと提示されていればあまり悩むこともな気がしますが、私たちの環境だと、ある意味ロールモデル不在という状況です。自分のことは自分で考えてというのはある意味正しいとはおもいますが、誰かとの共感とか違いとかそんなものから自分のカラーが見えてくることの方が多いんじゃないでしょうか。私自身も、色々な場所や人と関わることで、自分はこれが得意かもしれない、そして自分が好きなのはここかもしれないと見えてくることの方が多かった気がします。今回の棚卸で改めて、この多様なデザインのケイパビリティの中で、自分の得意だったり好きを再確認するとともに、メンバーそれぞれのキャラクターも見えてきて、こんなPJをこの人がやったらおもしろそうだなとか、こんな活動をやるとチームが成長しそうだなとか妄想できたのでした。
・デザインのケイパビリティ
今回は、チームで今リアルに使われているスキルから、デザインのケイパビリティを紐解いていきました。調査としてのデザインのスキルマップではなく、現場の手触り感としての可視化。なので、一般に言われているもののように綺麗にまとまっているわけでもないし、足りないところもいっぱいの、いわばちょっと虫くいもある葉っぱの状態です。
今回この活動を通して、思ったことがあります。この成長途中のものがこれからビジネスに花を咲かせていくエネルギーになるという感覚とこの成長している手触りがビジネスには圧倒的に少ないこと、でした。
デザインという言葉の語源はRe+Signと言われていて、再構築という意味があったりします。つまり何かは今あるかもしれないけど、それを新しく組みなおしていく。それには過去のことにとらわれない何かが確実に必要になってきます。このちょっと虫食いもありそうな1枚の葉っぱは、新しく養分つくり、花を咲かせるための栄養を送り出す機能があって、その葉っぱ自身も成長していきます。この活動の原資が葉っぱを構成しているまさにデザインのケイパビリティなのかなと感じました。普段ビジネスというものに接していると、その多くは去年よりどれだけ大きくなったか、どれだけ大きくなれるのかということに着目しがちで、大きくするために養分をつくっている1枚の葉っぱに着目することは少ないなと感じています。これからの未来にたちむかっていくためのデザインのケイパビリティ、それはこれから成長するための葉っぱのような存在なんだなと感じました。
今回は大きな木そのものではなく、葉っぱから、スタートをきりました。この葉っぱがどんどん日を浴びてチームとして成長していくための「問い」の話はまた次回しようと思います。