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ジモティー【7082】の企業価値分析

今回はROICランキングの常連。
ジモティー【7082】ビジネスモデルと企業価値を分析してみます。決算の数値は主に2024年12月期(通期)のものです。

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ジモティーとは

ジモティーとは、地域密着型の掲示板サービスです。 商品を譲りたいと思っている人が掲示板に投稿します。商品を探している人は、掲示板で欲しい商品を見つけて譲ってもらうことができます。
いらなくなった不用品を手放せる人と、欲しい人との利害が一致するサービスです。
また、地域や目的によって分類された募集広告を、一覧形式で掲載する広告媒体の一つであり、一般的に掲載料が無料で、個人・法人を問わずユーザーとして利用でき、誰でも手軽に広告掲載ができる点が特徴です。

2024.12期 ジモティー決算説明資料より引用

サービスの概要

地域に根付いた情報をあらゆるカテゴリで”無料”で掲載可能にしている。
地域内で必要なものと不要なモノやサービスをマッチングすることでより、地域住民がより豊かな暮らしを送れるようにする。

業績推移

バフェットコードより

23年12月期、売り上げは減少したものの、営業利益は増加している。
営業利益の5年平均成長率(CAGR):16.0 %※予想

売上

売上の構成は、広告売上、マーケティング支援売上、その他売上の三本柱です。

売上内訳

広告売上が約7割を占める。広告売上は単価下落したものの直近は伸長している。
その他売上(ジモスポ領域)を中心に成長している。

2024年決算説明資料より引用

売上区分

高いROIC(投下資本利益率)

ROICは投下資本に対する営業利益率。投資した資本コストをどれだけ効率的に本業の儲けである営業利益にしているかを示します。
継続性を見るため、複数年の数値を確認しましょう。
2023年 ROIC:38.4%
(参考 メルカリ ROIC:5.7%
2022年 ROIC:30.0%
2021年 ROIC:30.9%

フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローの推移は、長期的には株価に近似します。つまり、企業価値を予想する上でも重要な指標です。

フリーCF(キャッシュフロー)=営業CF-投資CF
財務CF=資金調達や返済といった財務活動のCF
フリーCFは高いROICを背景に、右肩上がりに着実に増加しています。

バフェットコードより

成長戦略

①ジモティー(リユース)スポット

ジモティースポットの仕組み

ジモティースポットの仕組み

自治体との連携(協定)

2024年4月24日現在、 163箇所の自治体と協定を結び、 地域の情報サイト「ジモティー」を活用したごみ減量活動に寄与しています。

リユーススポットの事例

世田谷区でのリユース実績
成果:2021年10月6日~2023年3月31日の期間において、持ち込まれた不要品の約97%にあたる約44,300品の譲渡・販売を実現し、ごみ減量効果としても約226トンとなっています。

世田谷区不要品持ち込みスポットの様子

特徴1
再販価値が低いものでも引き取り手が見つかりやすい
利用者は掲載料や手数料を支払わずに取引を行うことができます。出品時に引き取り金額を低くすることで再販価値が低いモノについても譲渡しやすい仕組みとなっています。

特徴2
配送前提では流通しない大きなモノも取り引きできる
オークションサイトやフリマアプリなどにおいてサイズが大きい家具や家電は、譲渡時に高額な配送料が発生するため、流通しづらい構造にあります。大きな家具や家電もジモティーでは近所の方が取りに来たり、近所まで届けたりすることで譲渡されやすい仕組みを提供しています。

大型リユース拠点

年間約180tのごみ減量を実現する神奈川県川崎市との共同事業を加速。初の大型リユース拠点「ジモティースポット川崎菅生店」が2024年4月19日新規開設。

ジモティースポット川崎菅生店

オフラインとオンラインのシナジー効果

ジモスポ開設エリアでは開設前後で投稿数が増えることによってPV数が増加しています。

②ユーザー数の急速な拡大

近距離取引によるコスト優位性と取引速度を上げる戦略を実施して、ユーザー数のさらなる拡大を狙う。

市場規模

  1. インターネットの「ジモティー」上でリユース品を取引(CtoCネット販売)に加えて、店舗型のジモティースポット」を通じてリアルを含むリユース市場全体をターゲットとする。

  2. HR(ヒューマンリソース:人的資本)領域について、「ジモティー」の強みである狭域性を武器に人材・アルバイト市場を開拓していく。

  3. 中古車・不動産領域は、短中期的には非注力領域とし除外している。

ユーザーの特徴

40代以上の子供のいる女性が多く利用している。

2023年7月のサービス利用者調査。サンプル数約1,000人

参入障壁①

ネットワーク効果

ネットワーク効果とは、ユーザー数が増加するにつれて、その価値がユーザーにとって増加する効果。 より多くのユーザーが関連する製品やサービスを使用するほど、全体のネットワークの価値が向上します。

参入障壁②

自治体との協定

地域密着型のサービスであることから、地方自治体との連携がしやすい。
現に、163箇所の自治体と協定を結び、ジモティースポットを全国に拡大している。

自治体は環境問題や資源問題の解決のために、ゴミの減量は不可避である。そのため、今後もこの政策の流れにも乗り、自治体と協定を結び店舗でのリユースを加速していくと予想される。
また、オンラインの「ジモティー」とオフライン実店舗での「ジモティースポット」がシナジー効果を発揮し、ユーザー数の拡大や売上げの拡大が急速に進むことが予想される。

企業価値の推定

社会の「不」や「非」の解消

以上のように、「ジモティー」は多くのユーザー数を誇り、自治体とも連携を進め、リユース市場という高い社会的価値のある企業活動を行っている。
大量消費、大量購入によるゴミの増加などの解決は喫緊の問題であり、これらの「不」を解決する。
また、利用者の「もったいない」けど捨ててしまっていた安く買いたいけどリサイクルショップではお目当てのものが見つからないフリマアプリでは配送料により割高になってしまっていたという「非」も解決することから、価値のあるビジネスといえる。

株価が低迷している理由?

しかし、株価が低迷しているのはなぜだろうか?
一つの要因として、「広告売上が7割以上を占める」ことから、価値が利用者からでなく、広告を出す企業から流れてきていることが挙げられます。これが、当社のビジネスモデルのリスクとして考えられるのです。

広告売上のボラティリティ

今後、利用者が増加していっても、広告主の単価減少や市況等により、売り上げの増減がぶれる可能性があります。企業の価値創造においてボラティリティ(増減幅)は価値を毀損してしまうのです
よって、本来、価値の恩恵を受けている利用者や自治体から収益を得れるビジネスモデルであることが望ましいのではないかと考えられます。
例えば、利用者の手数料や利用料等による収益や提携する自治体からの定額の利用料等によるストック収益等があれば、収益が安定し、安定的に価値が創造されていくかもしれません。

競合他社「メルカリ」

競合他社として「メルカリ」などのフリマアプリが想定されますが、こちらのビジネスモデルは個人間の売買における販売手数料や決済手数料を収入としているので、広告収入を主にしている「ジモティー」とはビジネスモデルが若干異なっています。どちらかというと、利便性の高いプラットフォームを提供し、広告費によって収益を得るビジネスモデルである「Google」などに似ています。

ジモティースポットの可能性

また、実店舗の「ジモティースポット」は、リサイクルショップに性質が似ているますが、オンラインの「ジモティー」と連携することで、集客率や購買率(=購入客数÷来店客数)は通常のリサイクルショップよりかなり高いと想定されます。
このことから、自治体と連携した「ジモティースポット」の拡大は、人件費や施設維持費がコストとしてかかりますが、不用品を無料で回収し、価格を付加して売却することで、効率的に利益を得ることができます。こうした利用者から直接収益を得ることができる新たなビジネスモデルを生み出し、今後、オンラインの「ジモティー」とシナジー効果を伴い、全体の企業価値を上げていくと考えられることに、期待しています。

最後に企業理念がよくわかる、社長のインタビューを紹介します。

がんばれ、ジモティー。
地域社会のために。
個人的には大好きな企業です。

あなたの幸せに、お役に立てたら嬉しいです。