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交差減価率の重要性

ラーメン屋で釜玉ラーメンを出している店が増えているようだ。
聞き慣れないメニューだが、作り方は釜玉うどんと一緒だ。茹でたての麺に生卵を絡ませタレとませて食べる。要は油そば。汁なしラーメンのことだ。

なぜ増えているか?背景にはインフレがある。
エネルギー価格の値上がりが、メニュー構成に影響を与えているのだ。
2022年の終わりくらいから水道光熱費が値上がっており、うちの店も1、5倍〜2倍に高騰している。
だから飲食業界の中でも売上に占める水道光熱費の割合が高い業態はきつい。
例えば焼肉屋。各席に置かれているダクトを回すのに電気をたくさん使う。
回転寿司もだろう。回転レーンを回すのにも電気を大量に使う。

そしてラーメン屋。スープ作るのにとにかくガスや電気を使う。
ラーメンスープの煮込み時間は5時間前後といったところだが、とんこつの店に限っては10時間以上煮込む。とんこつの店はよりキツイわけで、国立市のラーメン屋も去年の秋から3店舗閉店したが、2店舗がとんこつの店だった。
そのうちの一つはラーメンチェーンで、店でスープをとってるわけではないのだが、工場やセントラルキッチンでスープを作ったとて状況は同じだろう。全国で電気代が上がってるわけだから。
ラーメンチェーンで有名な一蘭は豚骨スープを福岡のセントラルキッチンで作っている。それを全国各地と世界に配送しているので非常に効率が良い経営をしているのだが、それでも昨年から値上げの連続だ。
ちなみに立川店は今年に入って一杯980円になった。大手でそうなので、個人店はよりきついだろう。
日本のラーメン屋は今や1000円以上取らないと経営的に厳しいと思う。
しかし感覚的にはなるが、日本の消費者はラーメン一杯1000円を超えると店に足が向かわなくなる。だから一蘭も980円で踏みとどまってるんだと思う。

このようにインフレがラーメン屋経営を圧迫しており、さらに日本は給料が上がらない構造なので、値上げするにしても1000円以上は厳しい。ラーメン屋の利益は下がる一方なのだ。
だから原価の帳尻を合わすために利益率が高い汁なしラーメンを入れるようになったのだろう。
ラーメンはスープに手間とお金がかかる。スープをそこまで使わない油そばとつけ麺は利益率が高く、特に油そばは簡単にできる上に原価率も低い。インフレ時代に強い商品なのだ。

このようにインフレ時代を乗り切る方法として一つに、利益率の高い商品を入れて、原価の帳尻合わせていく方法がある。汁なしラーメン以外の例を出すと、ドリンクメニューを強化したり、餃子を出すのもいい。
飲食店の世界では交差原価率と言われていて、昔から当たり前にあるものであるが、今後はより重要になっていくだろう。

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