読んだ人の気持ちの変化を考える。~パーシェプションってなんじゃい~
読んだ人に、商品を買ってもらう/サービスに申し込んでもらう/問い合わせてもらう/定期購読してもらう/メルマガの設定をONにしてもらう……。
そんなふうに、人に行動を起こしてもらう文章を書くために、便利な考え方があります。
カスタマージャーニーマップを作って、パーシェプションチェンジを意識しよう!
……って、どういうことじゃい!!??
商品を知って、すぐ買ってくれる人はいない
ここではひとまず、わかりやすく「購入という行動」を起こしてもらうことを例に説明します。
スーパーで買い物をしていて、
「へぇー、これギリシアヨーグルトっていうのか。ふーん。ぜんっぜん、1ミリも興味ないや。でも、買うか。」
と、なる人はいません。
購入するなり問い合わせるなり、何か行動を起こすというのはそれなりにコストがかかります。それは労力であったり、お金であったり。
そのギリシアヨーグルトを買ったら、ヨーグルト代の182円を別の用途に充てることはできなくなります。
お金だけでなく、時間に関しても同じこと。同じ「限られたコスト」です。
だからこそ、何か行動してもらうためには、「〇〇だから、買おう!」と、強く思ってもらわなければなりません。
初対面で押し売りされるとキツい
YouTubeの動画が始まる前のプロモーション映像で、一時期、こんなCMが流れていませんでしたか?
「ワタシノナマエハ、サトウレイコ、28サイ、OL。サイキン、カレノヨウスガオカシクテ、ナンダカホントニツキアッテルノカワカラナイミタイ。ソンナトキ、カレカラワカレバナシガ……」
みたいなやつです。
漫画っぽい止め絵+早口&高速加工で、私たち視聴者がCMスキップできるようになるまでの数秒間にめちゃくちゃ情報量を詰め込んでくる、アレです。(最近あんまり見ないよね? 一度も見たことがない、という人は幸運ですね。)
結論はダイエット的な何かを勧めてくるのですが、正直、けっこうキツかったです。
理由は簡単で、まったく興味がない段階で押し売りされるから。
顔を合わせるや否や「買って、買って」と、しつこくされるとウンザリしちゃいます。このように、強制的に認知させようとする試みは反感を買いやすいのです。
以前別のページで、ターゲットにはガン刺さりして効果あるかもしれないけど、刺さらなかった人のこと、考えてる? というお話をしました。(「笑い」のところです。)
該当のCMも、もしかしたら、刺さる人にはしっかり訴求できて、効果が上がったのかもしれません。雨後の筍のように、同型シリーズが大量に生産されていたのがその証拠。
ですが、刺さらない人が覚える「え……俺これ、何見せられてんの? 何なの、この時間……」という不快さを打ち消すほどのメリットがあるとは思えません。
段階を踏んでユーザーとの関係を築いていき、ある程度、購入を検討してもらえる段階であれば、使用前後をイメージしやすくなるストーリー形式のプロモーションは有用です。ですが初対面でそれをされると、キツいです。やめましょう。(ヤメテ。)
認知→検討→購入……いや、もっと細かいよね「気持ち」ってさ
初めて商品を知ったときから購入までの段階を、「認知→検討→購入」と説明されることがあります。
概ね合っていると思いますが、「よし! ユーザーに商品は提示したし、認知段階は終わったな! 次は検討段階に入ってくれているから、検討向けの施策をしよう!」と、グングン進んでいくのはオススメしません。
「へぇー、これギリシアヨーグルトっていうのか。ふーん。ぜんっぜん、1ミリも興味ないや。でも買おうかな。やっぱりやめようかな。迷うな。」
ってなります!? ならないよね!?
商品を知ったすぐ後で、さっそく買おうかどうしようか迷い始めるなんてことは、めったにありません。
初めて商品を知ってから、ずーっとその商品を覚えている、ということも珍しいでしょう。何度か目にして、覚え始めて、少しずつ気になり、調べ、理解し、ほかの商品と比較し、やっぱり自分にとって必要だ! 買うべきだ! という結論になって初めて、購入してくれるのです。
認知段階のなかにも、検討段階のなかにも、もう少し細かい気持ちの変化があります。
段階を進んでもらうには、絶対に「きっかけ」が必要
「ちょっと興味ある」から「すごく興味ある」に変わり、そして「ほしい」に気持ちが動くには、何かの「きっかけ」が必要です。
自分たちで「この施策をきっかけに、ユーザーに気持ちを変えてもらうぞ!」と計画し、実行することが大事。
そうすれば、後から振り返って施策の成否を判断できるからです。間違っていても次回から修正できるし、成功したのならノウハウとして残せばよいでしょう。
時間を置くことでユーザーの気持ちが変化したり、勝手に好きになってくれる場合もあるかもしれません。ですが、自分たちの行動をキーとしない変化があちこちで起こると正しくユーザーデータと対話できなくなってしまうし、もはやそれでは運まかせです。
「勝手に、うちの商品がバカ売れしないかなぁ。」と、妄想するのは自由ですが、原因不明で爆売れされても、今後に何も活きることはありません。
ユーザーの気持ちを変化させ、購入までの段階を進んでもらう「きっかけ」は、絶対に自分たちで作りましょう。
デマンドとかアーとか、いろんなモデルはユーザーの気持ちを示している
BtoBで新規顧客の獲得モデルを示しているデマンドジェネレーション。
BtoCのカスタマーリレーションを示したAARRRモデル。
ユーザー行動を時系列で可視化したカスタマージャーニーマップ。
ほかにも、PASoNA、AIDMA、AISAS、DECAX、FMOT、ZMOT、などなどなどなど……。
商品購入や、そこから始まるユーザーのファン化・リピーター化においては、いろいろなモデルが考えられています。
共通するのは、ユーザーの気持ちがどうであるか、それがどのように変化するか。を、示しているということです。
BtoBやBtoCやBtoBtoCや、ほかにもいろいろなビジネス形態があると思います。ですがいずれにおいても、そしてどのマーケティングモデルを採用して戦略を策定するにしても、「ユーザーの気持ちをモデル化したもの」を使うことになります。
パーシェプション=こんな感じ、っていう気持ちのこと
カスタマージャーニーマップでは、行動と共にパーシェプションも示しておくことが推奨されています。
パーシェプションとは、そもそもの意味は「認識」や「認知」。
マーケティングの世界で使われる「パーシェプション」を意訳するなら、「ユーザーは今、こんな感じの気持ちだよ。」と、言ったところでしょうか。
「へぇー、これギリシアヨーグルトっていうのか。ふーん。ぜんっぜん、1ミリも興味ないや。」
『1ミリも興味ない、って感じの気持ち。』←これがパーシェプション。
これを、店頭POPなのか、プッシュ広告なのか、DMなのか、テレビCMなのか、さまざまな手法を使ってプロモーションし、
『ちょっと気になり始めた、って感じの気持ち。』←このように変えていくことが、パーシェプションチェンジ。
そして、例に挙げた「店頭POP」「プッシュ広告」「DM」「テレビCM」などの手段が「きっかけ」です。
「気持ちの変化」を、一気に全部はできない
初めて商品を知ってもらって、深く知ってもらって、商品の利点を理解してもらって、興味をもってもらって、欲しいと思ってもらって、他社商品やほかの商品じゃなくてこの商品を選んでもらって、買ってもらう。
そんなことを全部、一気にやり切れる、そんなすごい施策はありません。
YouTube早口漫画風広告メソッドは、これを全部1回のCMでやり切ろうとしたため、どうしても無理が生じてしまっていたのです。
1回でできないなら、分割してやるほかありません。
例えば、高級車のテレビCMは、全然なんにもクルマの性能を伝えていません。確かな走り、とか、大人だけが纏う魅力がどうだとか、野生を解き放つだとか……そんなポエティックなヤツばっかりです。
では、高級車はふんわり雰囲気のテレビCMだけで売れるか? というと、そんなことはありません。試乗して高級感を味わってもらったり、販売店でセールストークをしてもらったり、試乗への感謝メールを送ったり……。
このように、何回も接触しながら、分割して「気持ち」を変化させていきます。
この施策は「こんな気持ちを、あんな気持ちに変える」を意識する
重要なのは、自分が担っている施策が「どんな気持ちを、どんな気持ちに変化させる施策であるか」を知り、効果を上げられるように工夫すること。
そのためには、どのマーケティングモデルを取り入れたのか、可視化してチームで共有する必要があります。
そして「認知」とか「検討」とか、わかりにくい言葉ではなく、「クルマを知ってもらった。でもあんまり良い印象はない」とか「ちょっと気になってるけど、値段がネックだと思っている」とか、チーム全員が理解しあえる「気持ちの名前」で整理しましょう。
「気持ちの変化」は、数値で見たい
自分たちが与えた「きかっけ」で、どれだけの人が気持ちの変化を起こしてくれたのか(=パーシェプションチェンジしてくれたのか)は、できるなら数値で確認したいものです。
商品紹介ページのPVと、値段ページへ遷移した人の数値比較。
問い合わせの増加数。
アンケート回答数。
などなど、とにかく与えた「きっかけ」(何かしらの施策)がどんな結果を生んだのか、数値を使って確認しましょう。
施策の結果を数値で確認できるから、施策を正しく評価できるのです。正しく評価できるから、改善できます。
まとめ
・認知→即購入 にはならない。段階を踏んで「気持ち」を変えてもらう。
・「気持ち」を変えるには「きっかけ」が必要。
・この「きっかけ」は、どんな気持ちをどんな気持ちに変えるのか、前提を把握する。
・「気持ち」を変えられたかどうかは、数値で判断。後日に活かす。
これらを行うことで、読んだ人の気持ちの変化(=パーシェプションチェンジ)を考えた、効果が上がる施策を行うことができるでしょう。
文章制作であれ、ページ制作であれ、プロモーションであれ、あるいは創作作品で読者の心を掴むのであれ、とても重要だと信じている考え方です。
チームで進めることを前提にお伝えしましたが、自分ひとりで行う場合も同様に行ってみてください。
それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?