「共感が大事」なんじゃない。そのくらいしか、使えないんだ。その3(完結)
これまで5つの強い感情のうち、怒り、恐怖、笑い、感動は使いにくい。というお話をしてきました。
ここでは、残る最後の一つ、「共感」についてお話します。
「共感」とは、霊長類がもつ原始的だけど高度な機能
他者が何か行動をしているのを見たとき、まるで自分も行動しているかのように脳が活動することがあります。そのような活動に関係しているのが、ミラーニューロンです。
主に霊長類で発見されており、特に人間においては、これが「共感」と強く関係しているのではないか、と考えられています。なぜ言い切れないのかというと、まだ研究途中だからです。
「共感」は、ヒトがまだサルだった頃からもっていた、でも脳が発達している種しかもっていない、原始的だけどちょっと進んだ機能のようです。
それほど生命の危機に直結した感情ではないため、強く行動を喚起することはありません。ですがそれなりに付き合いが長く、頼りにしてきた感情ではあるので、それなりに行動を呼び起こすのです。
「共感」=あるあるネタ。と、(ひとまず)理解しておこう
で、結局「共感」ってなに?
と思った方は、「あるあるネタ」を思い浮かべてください。
<小学校あるある>
めっちゃ牛乳早く飲むヤツがいる。
「ちょっと男子~!」
真冬でも半袖短パン、「寒くないよ」ってヤツ。
<田舎あるある>
都会の喧騒から離れたかと思いきや、むしろカエルの声がうるさい。
タヌキが、場合によってはシカが飛び出してくる。
父親やおじいちゃんは、イノシシと戦ったことがある。
「あるあるネタ」は、そんなこと、あるよね! という共感を呼び出します。すると、なぜかちょっとうれしくなったり、自然と笑みがこぼれたりします。「分かってくれてる感」や、「自分のことを知ってくれている感」も手伝っているかもしれません。
共感するとき、悪い感情は起きません。
「共感」させられなくてもダメージは少ない
先ほどの<田舎あるある>ですが、都会生まれの人には、まったくピンとこなかったはずです。でも、気分を害されたり、「田舎あるあるだと! てめぇ!」といった勢いにはならなかったと思います。
このように、「共感」は刺さらなかったときの反動が少ない、という特徴があります。これが、スベったら死だった「笑い」、押しつけでシラケる「感動」との大きな違いです。
外した際のダメージが少ない理由も、実はヒトがもつ共感力によるもの。共感力が高い我々は、情景を想像できます。過去に体験したことがなくても「なんか、そんなこと“ありそう”だよな」と思ってくれるのです。
共感特訓:小さな愉快、ふとした感情を書き留める
では、どうやったら共感されるライティングができるのでしょうか。
今はまだ、できていない。というなら、やはり訓練するしかありません。
オススメの特訓法は、日常で「あるあるネタ」を探すことです。
たくさん自分の「あるあるネタ」が集まってくると、「あるあるネタ」を想像できるようになります。
共感力が高い我々は、情景を想像できます。過去に体験したことがなくても「なんか、そんなこと“ありそう”だよな」と思ってくれるのです。
先ほどの「体験してないけど、なんとなく“ありそう”を想像できる」という、我々人類がもっている能力を活用します。
「あるあるネタの想像」を行うことで、共感される事柄を見つけやすくなっていきます。共感を見つける感覚が研ぎ澄まされる、と言うか……。
地味な特訓で、申し訳なく思います。もっと良い「共感力特訓法」をご存じの方、教えてください。
どんな点に共感されがちなのか。どんな共感がウケるのか。それは、業界や状況によってかなり変わるため、一概には言えません。
ですが個人的には、ちょっと目立っていて気になったり、自分が「おや?」と思ったことは、なんとなくですが、「あるあるネタ」になりやすいと思います。
なぜなら、自分が違和感に思ったことは、ほかの人にとっても違和感を生んでいて記憶に刻まれていることが多く、共通の話題になりやすいからです。
まずは「共感」を「あるあるネタ」に使おう
「あるあるネタ」を探してもらったのは、なにも「あるある芸」をしてほしかったからではありません。「共感」を使って、何か行動を起こしてもらえるライティングに活かすためです。
自分と同じ悩みをもっている人が使っている商品だから、自分も買おう。
"同じ悩み”の部分に、「共感」を使っています。
<乾燥肌あるある><最寄りが無名駅あるある><ミニマリストあるある>など、あるあるネタを探せるようになった嗅覚を、ここに活かせます。
「共感」は、「あるあるネタ」、だけじゃない。
最大の広告効果がある媒体は何か?
答えは「口コミ」だそうです。
信頼できる友人や家族など、自分の身近な(=より共感できる)人の口コミが、特に効果を発揮するといいます。
これを利用しているのが、インフルエンサーやYouTuberです。彼らを頻繁にチェックするユーザーたちは、インフルエンサーやYouTuberたちを、まるで友人であるかのような感覚で見るようになります。
テレビや映画で活躍する芸能人が「憧れのあの人」であることに対して、インフルエンサーやYouTuberは「身近な(共感できる)あの人」という位置づけになります。
そして、身近な、共感できるあの人が「これ使ってるの。みんなも買ってね~」と言うから、行動に移すのです。
「共感」を使って読者やユーザーから信頼してもらうことで、仲の良い友人や家族、あるいはインフルエンサーやYouTuberと同じ位置づけに置いてもらうことも可能かもしれません。
「共感」を使ったセールスライティングやコンテンツライティングのコツは、また今度!
全体のまとめ
・「怒り」は絶対に使わないで!
・「恐怖」もできれば使わないで!
・「笑い」が一番難しい。
・「感動」はすぐに感動慣れされるから、多用できない。
・「共感」が一番まろやか。これを使うしかない。
・「共感」はあるあるネタから初めて、徐々に磨いていこう。
ライティングやマーケティングで悩んでいる方に、少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。
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