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独立書店ラッシュとクロスする出版流通崩壊〜その1.独立書店。

本と街の本屋が滅びゆく日々が続いておよそ20年。
古書・新刊など個人が思うがままに扱う独立書店が、全国のあちこちで開業ラッシュに湧いている。今の独立書店の出店ラッシュは失われた大地というか、更地になった紙の本の再生地域である。
東京人12月号では「本屋は挑戦する」と銘打って独立書店特集を組んでいるし、SAVVY12月号でも同様だ。
日本だけではなく、台湾・香港、韓国でもこの現象が起きている。
ITの時代が当たり前になって久しい。にもかかわらず紙の本の居場所は数多く存在する。
もうひとつの文化といえるかもしれない。

ここで既存の新刊総合書店(標準書店)との違いを考えてみよう。
独立書店では、まず雑誌・コミック・ライトノベル、文芸一般書など売れ筋商品がない。そして実用書・ビジネス書・資格書・学参辞典・専門書(法経書、理工書、電脳書)なし、いわゆる実務実用的なものがない。
児童書はほぼ絵本のみ。
在庫しているのは、文芸一般書、人文書、芸術書(アート系、日本映画系、ポップ音楽系ほか)など。これも売行良好書ではなく、どちらかというとメガ書店に棚差ししている、または図書館しか在庫しない商品。
丸善&ジュンク堂梅田店の棚商品を切り取った品揃えだ。
文庫・新書は流行作家のものがメインではなく、文学好きなマニアな品揃え。旅行ガイドもマニア向けのみ。
ジャンルも児童書、文庫、新書という区分けではなく、例えば「日本映画」、「スポーツ」「生き方」といったテーマ別。
店主オススメの本、だからセレクト書店ということになる。
これに本関係の雑貨、ZINE・リトルプレス(今風のミニコミ)などが加わる。
テーマ別セレクト書店といった感じである。

実はこの流れは昔、一部の新刊総合書店に息づいていた。
ひとつが大阪梅田近辺の茶屋町のロフト梅田にあった、リブロ梅田店。
梅田ロフトのテアトルで映画→WAVEで輸入盤CD買う→リブロでフィルムアート社や思潮社の本をチラ読みして、本を買うというのが一連の流れだった。本購入パターン、ボクの場合ですが。
ミニシアターで映画→サントラ、または挿入歌のあるCD→その映画に関する本(原作、監督にまつわる本、あるいは監督が影響を受けた人物などの本)を買う。
ここに演劇、アート・デザインなどのサイクルがあればひとつの小さな文化ができたかもしれなかった。
なお、漫画やサブカルチャーの場合は同人誌ショップやまんだらけ、とらのあな、らしんばんなどすでに文化の次元を超え、産業化している。

こんな本をリアルに買い求めるならジュンク堂や丸善しかありえなかったが、今独立書店が15〜20坪ほどのお店で実現した、ということになる。

なぜこのような現象が起こるのか?

確かにメガ書店、ネット書店は読者のニーズに答えている。
しかしそこに読者と店員との交流はない。総合書店の店員はレジ対応と棚の商品管理に追われ、そんな暇や余裕もない。
本にまつわるイベントは作家のサイン会やトークイベント。しかし、読者との距離は遠い。
これって明らかに、上から目線で高いハードルだった出版流通へのカウンターなんですよね。

人はシステマチックな日常生活を送ると「デジタル疲れ」が起こる。本という文化的癒やしの空間を求めてしまう。非日常な部分を欲するのだ。
「自然回帰」「ふれあいのある店」「手作り感」が時代のキーワード。
〈ITの時代〉↔〈手作り・人とのふれあい〉は表裏一体なのかも。

……で、次回は新刊書店と出版社、出版取次(出版の卸売)が独立書店ラッシュとクロスして崩壊に向かっている現状に対し、つらつらと述べたいです。

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