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死に対するストッパー【死ぬまで生きる日記】

あまりタイトルに「死」をいれるのはどうかと思うが、今回は書く内容的にいれてみようと思う。
「死」についての話が苦手な方は読まないで欲しい。

土門蘭さんの「死ぬまで生きる日記」を読んだ。

どなたかのnoteで感想を読んで、内容が気になり、読みたくなった。
子どもの頃から「死にたい」と思っていた著者である土門さんがカウンセラーさんと一緒にその気持ちにアプローチしていくお話。
優しいご家族もいて、こんなに凄い文章を書けて、成功されているように見える方でも「死にたい」という気持ちが消えない事に最初は驚いた。
読み進めていくと、土門さんと一緒にカウンセリングを受けているような不思議な感覚になった。
カウンセラーさんの言葉に揺れる土門さんの心の描写が繊細で、でも確かに私も同じようにカウンセリングを受けたら、こんな反応してしまうように感じた。
カウンセラーさんの言葉が腑に落ちることも、疑問に思うことも、怒りを感じることも、全部がリアルだった。
2年ぐらい担当してくれたカウンセラーさんがお休みする事が決まった事を報告受けた土門さんの感情を読んだ時、私も一緒に「なんで!?」という悲しくて、寂しくて、怒りの感情が湧いていた。
あくまで土門さんの経験なのに、私自身の本に対しての没入感が凄かった。
カウンセリングってカウンセラーさんと話をしているだけのように見えるが、自分との対話、徹底的に過去から今の自分と向き合うことが求められる行為なんだなと思った。

土門さんの本を読んで私なりに「死」について考えてみた。
「死にたい」って感情、実は私、あまり思ったことがない。
突発的に「死にたい」って思うことはあっても、すぐに脳内で「でも…」という生きる言い訳が始まる。
親より先に死ぬわけにはいかない、数少ない友達が悲しんでくれるかもしれない、自分で死ぬのは痛いから怖い、迷惑をかけたくない、色々な感情が駆け巡る。
生きることに執着してるのかと考えたりするが、そこまで意思は強くない気がする。
病気や事故など仕方ない理由で死ぬ以外は、命あるならぼちぼち生きようというスタンスだ。

「死」について考えた時、ひとつだけ頭に浮かぶ事がある。
子どもの頃、父親が観ていたNHKのドキュメンタリー番組があった。
家のテレビで流れているので、私も一緒に観ていたが、その番組は「自殺に失敗した人たちのその後を追う」内容だった。
自殺は実行したとしても、成功率はそんなに高くないらしい。
現代の医療が発達していて、助かるケースが多いとのことだった。
もう随分前の番組だが、はっきり覚えているシーンがある。
自殺未遂された方が後遺症で全身麻痺になり、自宅で父親が介護している姿だ。
全身は動かないが、頭(意識)ははっきりしていて、その方はお父さんに「ごめんね。こんなことになって、ごめんね」とひたすら謝り続けていた。
お父さんは娘さんの言葉を聞きながら、淡々と介護をしていた。
娘さんは体が自分の意志では動かすことができないので、もう自分で死ぬことはできない。
その映像が幼い私には衝撃で、今もそのシーンが鮮明に頭に残っている。
「自分で死ぬ」という事が強烈に怖いと感じた。
失敗して生き残って、もし障害が残ったらと考えてしまうと、とてもじゃないができない。
自分から「死にたい」と思わないのは、そのドキュメンタリーを観たからだと思う。
「死のうと思って行動してみても、必ず死ぬことはできない」という事実が子どもの私の頭に強烈に植えつけられた。

「死」といえば、芸能人や有名人に限らず誰かの自殺報道がニュースで流れた時、とても酷い人間だと思うが「ちゃんと死ねるんだ」と思ってしまう。
それはNHKのドキュメンタリー番組で観た映像が頭に浮かび、「実行しても簡単には死ねない」という認識があるからだと思う。
「死を選んでしまうぐらい辛かったんだろうな」とか、その方に対してのお悔やみの気持ちより、その感情が湧き出るあたり、自分でも酷いなぁとは思う。
あくまでテレビやネット越しの他人だからそう思うのかもしれない。
これが身近にいる人間なら、また違った感情を抱くかもしれない。
世の中には色々なマニュアルがある。
あえてそれを検索しようとは思わないが、成功率が高い方法もあるのだとは思う。
「死にたい」と思う人に「生きた方がいい」と無責任なことは言えないが、やっぱり私は自分から「死にたい」とは思わない。

「死」について考えるってエネルギー消費がハンパない。
漠然とした自分なりの考えを今回書いてみた。
もしかしたらこの先、なにか強烈な経験や絶望を感じて、「死にたい」と気持ちが変わるかもしれない。
その時はできるかどうかは分からないが、土門さんのように、その感情と向き合っていきたい。


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