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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #41 【39日目】サンティアゴでガブリエレ、レオナルドと再会〜フィステーラへ向けて再び歩き出す

こんにちは、ナガイです。今日はサンティアゴ・デ・コンポステーラからスペイン最西端のフィステーラへ向けて再び巡礼を始めます。
前回の記事はこちら。

天気予報(アメス) 曇り 最高気温23℃ 最低気温11℃

7時起床。今日はとてもよく眠れた。まだ今日これからどうするかを決めていない。ウリーがフィステーラ巡礼用のクレデンシャルを持っており、彼はフィステーラへは行かずに帰るというので、午前中にそれを譲り受ける約束だけしている。
思い立ってレオナルドに「おはよう。サンティアゴにはもう着いた?それともこれから着く予定?僕は昨日着いたよ」とメッセージを送る。6日ぶりの連絡だ。
コンディションは良いので今日フィステーラへ向けて歩き始めることにする。ただし、午前中はゆっくり過ごし、もう一度正午のミサに参加して、昨日売り切れていたサン・ペラジョ修道院のタルタ・デ・サンティアゴに再チャレンジしてから出発するつもりだ。目的地であるネグレイラ(Negreira)までの距離は22kmなので夕方頃には着けるだろう。
アルベルゲのチェックアウト時間の10時までゆっくりしようと思っていたが、じっとしていられなくなり結局8時過ぎにチェックアウトして街へ出る。

すると間もなくガブリエレから大聖堂の写真と共にサンティアゴへ着いたとのメッセージが来る。「おめでとう!無事に到着できたようで僕も嬉しいよ!」と返信する。とりあえず朝食を食べに行こうと思い、8時半オープンのカフェへ行く。店の前に着くとまだ開いていなかったので待っていると、なんと道の向こうからガブリエレが歩いてきた。この広い街で遭遇するとは、なんという偶然だろう。思わずガブリエレに向けてブンブンと手を振ると、ガブリエレがこちらに気づき、驚きの声を上げて歩み寄ってくる。ちょうどカフェもオープンしたので二人で朝食を食べることにした。

甘いもの好きなので一度食べてみたいと思っていたチョコラテコンチュロスを注文。5ユーロ。期待を裏切らない甘さで、チョコラテの方は飲み切るのが大変なくらいだった。ガブリエレにレオナルドとの一件について話す。今朝送ったメッセージへの返信はまだない。ガブリエレからもレオナルドへメッセージを送ってみてくれるそうだ。

9時過ぎにアニータから連絡があり、もうすぐウリーと宿を出発するというのでカフェの前で待ち合わせることにした。カフェを出てガブリエレと別れる。彼は先ほど来た道を戻っていく。ここでカフェが開くのを待っていなかったら、ガブリエレがこの道を選んで歩いてこなかったら、と考えると偶然にしてはあまりにも出来すぎた再会だった。

しばらく待っているとアニータとウリーがやってきた。ウリーがフィステーラ巡礼用のクレデンシャルを、アニータがいらないからとついでにメンソールのキャンディをくれた。フィステーラ巡礼用のクレデンシャルがあるとは知らなかったが、味のある表紙だ。彼らは朝食を取ってから今日の正午のミサに出るそうで、ちょうど今から大聖堂へ行くところだったので彼らの分も席を確保しておくことになった。アニータもチュロスを食べたいとのことで、ウリーと一緒に先ほどガブリエレと行ったカフェへ入っていった。

10時頃に大聖堂前の広場へ行くと、今日も朝から到着を喜ぶ巡礼者や、団体の観光客が多くいる。その光景を眺めながら歩いていると、その中に他の巡礼者と話をしているレオナルドの姿があった。彼の姿を見るのは一週間ぶりだ。一瞬声を掛けようかとも思ったが、今朝のメッセージに返信がなかったので、きっと彼はもう自分に会いたくないのだろう。彼には声を掛けずに、踵を返して巡礼事務所へ向かう。

昨日と同様、大聖堂のミサには大きな荷物を持ち込むことができないため、今日は巡礼事務所の有料ロッカーにバックパックを預けてから大聖堂へ向かう。ロッカーは2ユーロ硬貨専用で、ちょうど2ユーロ硬貨を持っていなかったので事務所の売店で両替をしてもらってからロッカーへバックパックを預けた。

10時半頃に大聖堂の中へ入り、アニータとウリーの分も合わせて前の方の席を確保する。

席に座って待っていると「やあ、朝ご飯でも食べようよ」とメッセージが来る。レオナルドからだった。突然の出来事に頭が混乱しそうになるのをこらえて、どう返信しようか考えを巡らせる。「これからアニータとウリーと一緒にミサに出る予定だから、それが終わったらみんなでランチでもどう?もし二人だけの方がよかったらそれでも大丈夫だよ」と送る。彼から「みんなで行こう」と返信が来る。

しばらくしてアニータとウリーがやって来る。席に並んで座りながらミサが始まるのを待っていると、アニータがポストカードを渡してくれる。そこには彼女の直筆のメッセージが書かれていた。とても嬉しかったのだが、つい照れ隠しで「読みづらい字だけど頑張って読んでみるよ。ありがとう」と言ってしまう。こういう時に素直に喜べない、あまのじゃくな性格はスペイン巡礼でも直らなかったようだ。

12時になりミサが始まる。昨日は若い男女の聖歌隊がいたが、今日聖歌を歌っているのは女性一人だった。日によって形式は異なるようだ。ミサの途中で参列者同士が会釈や握手、ハグをして祝福し合う時間があるのだが、その場の空気がパッと一気に幸福感で満たされるような雰囲気が好きだ。そして今日はボタフメイロが焚かれるのを見ることができた。男性8人がかりでロープを引っ張り、ボタフメイロが大聖堂の中を煙を振り撒きながら、ものすごいスピードで振り子のように右へ左へブンブンと行き来する光景は見応えがあった。

今日のミサは50分ほどで終了。ちょうど13時頃だったため、アニータとウリーと一緒に昨日売り切れていて買えなかったサン・ペラジョ修道院のタルタ・デ・サンティアゴを買いに行くことにした。昨日の記憶を頼りに歩くが、レオナルドのことで気もそぞろだったせいか、何度か道を行ったり来たりしながらようやく入り口に辿り着く。

外から見ると中は明かりもないので薄暗く、知らない人はまさかここでお菓子を売っているとは思わないだろう。すると今日はあった。タルタ・デ・サンティアゴのホールが2サイズ売っている。思ったより大きかったので、一つ買ってみんなで分けることにした。注文は入って左手にある窓口でベルを鳴らすと修道女が出てきて受け付けてくれるという、面白いシステムだ。

そして、昨日ランチで行ったレストランを自分があまりに褒めていたので、今日のランチもそのレストランへ行くことになった。今日は1階フロアの入り口付近のテーブルに通される。アニータ、ウリーと先にメニューを見ながら待っていると、少し経ってから遅れてレオナルドがやってきた。最初はなんとなくぎこちない空気が漂っていたが、アニータとウリーがいつもどおり明るく振る舞ってくれるお陰で、徐々に雰囲気も和んでレオナルドとも直接言葉を交わすようになっていった。そして、レオナルドが声を掛けてくれていたガブリエレも遅れてやってきて、全員が揃った。
今日は一皿目に魚のコロッケ(Croquetas Caseras de Bacalao)、二皿目にチキン(Pollo asado al horno con salsa de vino tinto)、デザートにアイスクリームを注文。パンと水込みで13ユーロ。

アニータが店の人からナイフを借りて先ほど買ったタルタ・デ・サンティアゴを全員に取り分けてくれた。

ふと気づけば、アニータ、ウリー、レオナルド、ガブリエレ、彼らは全員お守りをあげたメンバーだ。自分にとってはオールスターのようなこのメンバーと一緒にサンティアゴでの最後の食事を取れるとは夢にも思っていなかったので、とても嬉しかった。

15時過ぎにレストランを出る。ここでガブリエレ、レオナルドと別れる。このメンバーの中では唯一フィステーラまで行くレオナルドが「フィステーラで会おう。同じ日に着くはずだから」と言ってくれる。自分は今日を含めて4日間でフィステーラへ行く計画だが、彼は犬が宿泊できる場所の事情もあり明日から3日間でフィステーラまで行く予定だそうだ。そして別れ際、レオナルドに「サンティアゴ到着おめでとう」と伝える。今日の午前中に大聖堂前で彼を見かけてからずっと言いたいと思っていた言葉だった。レオナルドも「君こそサンティアゴ到着おめでとう。連絡を取り合おう」と言ってくれて、別れのハグをする。そのハグで、切れかかっていた友情の鎖が再び繋がるのを感じた。人生にはやり直しのきかないことも多いけれど、こうしてやり直せることもあるのだ。

アニータ、ウリーとも大聖堂近くまで一緒に歩いてから別れる。彼らは明日の午後、二人でまずアニータの家があるロンドンへ飛行機で行き、それからウリーはオーストリアへ帰るそうだ。彼らとの別れ際に撮った二人が笑顔でバイバイと手を振っている写真は、今まで撮った写真の中でも特にお気に入りの一枚だ。

巡礼事務所へ行ってロッカーからバックパックをピックアップし、トイレで歯磨きや着替えなど出発の準備をしてから16時前に出発。半日休息を取ったので状態はバッチリだ。幸い今日は曇りでこの時間でも気温が20度くらいなので歩くのにちょうどいい。

しばらく西へ向かって通りを歩くとあった、フィステーラまで残り約90kmであることを示す道標だ。やはりこれを見ると燃えてくる。

すぐに木々や川など自然が増えてきてアップダウンのある山道に入る。

30分ほど歩いたところでサンティアゴの街並みが見える場所に来る。もう大聖堂の尖塔があんなに遠くに見える。

この時間に歩いている巡礼者は他におらず、ひたすら道標を頼りに黙々と歩く。とても美しい山道だ。出発したばかりだがフィステーラまで歩くことにしてよかったと思う。

一つ懸念していたのはサンティアゴ以降は道標が減ってルートを見失いやすくなるのではないかということだったが、今までよりも特に山道は道標が多いくらいで迷う心配はなさそうだ。

ただ少しサンティアゴに長居し過ぎたようだ。フィステーラ初日の目的地であるネグレイラには休みなしで歩いても着くのは20時過ぎになる。それだと明日にも影響しそうなので、今日は無理せず途中まで行って泊まることにしよう。

歩きながらサンティアゴまでに出会ってきた人々のことを思い出し、みんないい人だったなぁ、本当にいい人達だった、としみじみ思う。今は一人きりで歩き、誰ともすれ違わないが、全く寂しくない。もう大丈夫だ。一人で歩ける。

18時前にベントサ(Ventosa)の村へ到着。この村に一軒アルベルゲがあるようなので行ってみる。

きれいないい感じのアルベルゲだ。庭にオスピタレイロの娘さんがいて泊まりたい旨を伝えるとアルベルゲの中に案内してくれた。中はとてもきれいで設備もよく、当たりのアルベルゲだ。今のところ宿泊する巡礼者は自分以外に二人だけのようで、かなり快適そうだ。

シャワーを済ませ、洗濯は時間も遅いので明日に回すことにする。重めのランチを食べたので夕食は抜こうかと思ったが、やっぱりお腹が空いてきたのでアルベルゲ併設のバルでディナーを食べることにする。

ディナーはメヌー形式で一皿目はサラダ、二皿目はじゃがいも・牛肉・グリーンピースのシチュー、デザートにヨーグルトを注文。コーラ・コーヒー込みで11ユーロ。良心的な値段だ。アルベルゲを運営している家族とその友人知人と思われる人達がバルに集まっていたが、自分が食べ終わってバルを出る時にみんなで「また明日!」と言って見送ってくれた。

こういうマイナーな場所で良いアルベルゲに出会えると嬉しい。サンソルの公営アルベルゲや、最近だとフォンフリアのディナーがおいしかったアルベルゲを思い出す。

部屋に戻るとアニータから「今ガブリエレと一緒にいるよ!」と、彼の写真付きでメッセージが来ていた。どうやら今朝のカフェにまた行っているようだ。「僕がガブリエレと話す時、いつもスペイン語で“僕はもっとスペイン語を勉強しないといけないし、あなたはもっと英語を勉強しないといけないね”って言ってるよ」と送ると「ガブリエレがそのとおりって言ってる(笑)」と返信がある。アニータ達とガブリエレは今日が初対面だったのか分からなかったので、彼は信頼できる人だよと伝える意味で「彼も僕のお守りを持ってるよ」と送る。すると、アニータから「私たちはチームオマモリ」と、アニータ、ウリー、レオナルド、ガブリエレの4人の手を重ねた写真が送られてきた。なんて粋なことをしてくれるんだろう。「この写真ブログに載せていい?」と聞くと「うん、もちろん!」と快諾してくれた。

寝る前にアニータへ今日撮った彼らの写真を送り、オ・ペドロウソでガブリエレと別れる時にも思った「僕には“ありがとう”としか言えないけど、僕の気持ちは“ありがとう”以上だよ。おやすみ」とメッセージを送った。
22時就寝。

歩いた距離
今日9.1km 合計789.5km

P.S. おかげさまで私のスペイン巡礼記が先週特にスキ(いいね)を集めた海外旅行の記事だったそうです。いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

ちなみに、note公式の海外旅行記事まとめのマガジンにも私の記事を何本か追加していただいています。一週間ほど前からこちらのマガジンに追加されるようになり、それから新しい読者の方も増えたような気がするので嬉しいです。

引き続きよろしくお願いします。

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