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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #18 【16日目】まるで壁のような坂道、オカの山を越えてアヘスへ

こんにちは、ナガイです。今日はベロラドからオカの山越えをしてアヘス(Agés)へ向かいます。
前回の記事はこちら。

天気予報(アルランソン) 曇り 最高気温15℃ 最低気温3℃

5時起床。昨日あまり肉体的に疲れていなかったせいか、眠りが浅く何度か夢を見た。あまり眠れていない気がするが、目が冴えてしまったのでそのまま起きる。ゆっくり準備をして6時前に出発。

ここのアルベルゲに泊まっている人たちは朝が遅めのようだ。結局自分が出発するまでには誰も起きてこなかった。確かに到着するのも自分より大分遅い人たちが多かったのと、昨日の強風で疲弊した人も多いのかもしれない。

今日のルートは標高差が大きく少しハードな一日になりそうなので、早めに出られた分ペースを落とし気味にして歩こう。

町は静まりかえっている。外は寒い。天気予報だと現在5℃。ダウンジャケットはさすがに歩いていると暑くなりそうなので手袋だけ身につける。少し前の20℃を超えていた日々を考えると季節が逆戻りしたようだ。

町を抜けると街灯がなくなり、今日は月も出ていないのでほとんど真っ暗だ。iPhoneのライトで前を照らしながら歩く。

恐らくライトで気づいたのだろう。またも通り過ぎる車がプァーッとクラクションを鳴らしてエールを送ってくれる。

空を見ると月はちょうど雲で隠れているようだが、雲のないところからはたくさんの星が見える。これは早朝に歩く人に与えられる特権だ。6時半を過ぎた辺りから少しずつ空が明るくなり始め、月も顔を出す。ここからはライトを消して歩く。

7時前にトサントス(Tosantos)を通過。昨日余裕があれば行こうと思っていた村だ。今日の方が昨日より歩くのはずっと楽なので、昨日はベロラドで止まっておいて正解だっただろう。

今日は昨日の強風が嘘のように穏やかな天候で、もしかするとこれまでの中で一番歩くのに適した日ではないだろうか。

7時過ぎにビジャンビスティア(Villambistia)の村を通過。ここの教会はまだ鐘楼の明かりが灯っていてロマンチックな雰囲気だった。

ここで今日1人目の巡礼者が後ろからやってくる。オレンジのジャケットを着ているヨーロッパ系の眼鏡をかけた男性だ。何度か見かけた顔できちんと話したことはないが、向こうから「Hi, my friend!」と挨拶をしてくれた。彼は歩くのがとても速いので巡礼中は会話するチャンスがないが、気が合いそうなので機会があれば話してみたい。

ふと後ろを振り返ると雲がオレンジ色に染まっている。

7時半にエスピノサ・デル・カミーノ(Espinosa del Camino)の村を通過。

村を抜けてしばらく歩いていると、何やら丸っこい石造りの建物がポツンと建っているのが見える。

回り込んで見ると入口がある。どうやらこれはチャペルらしい。

なぜこんな辺鄙なところにあるのだろうか。それにしても妙に目を惹きつける不思議な存在感のあるチャペルだ。

しばらく車道脇の小径を歩き、8時半にビジャフランカ・モンテス・デ・オカ(Villafranca Montes de Oca)の村を通過。

ここの教会の建物は屋根がオレンジで可愛らしい。

村を抜けると道は急に険しくなる。いよいよオカの山越えだ。

少し登ると屋根のある場所があったので軽く休憩する。

昨日買っておいた軽食と水を取る。

それからこの巡礼で初めて立ちションをした。トイレを我慢するのは意外と身体や精神に与える影響が大きいことが分かってきたので、なるべくトイレがあるときにしておくか、トイレがないときもあまり我慢し過ぎず、できる時は野外で済ませてしまった方がいいだろう。

結局あれからスティックは見つかっておらず一本で歩き続けているが、やはり坂道だと如実に違いが表れてくる。一本だと二本より体重を分散できない分、足への負荷がより大きくなる。ただし、今は足にそれほど大きな問題も生じていないため、当面はなんとか持ち堪えられそうだ。

この山道はなんとなく日本での登山を思い出す。少し枯れた草木の感じや天候が、巡礼前に日本で歩いた秋冬の時期の山に近いからかもしれない。大きく違うのは巡礼路を示す矢印があることだろう。

山道は途中から表情を変える。緑が濃くなり、道が赤土になる。

9時半に標高1165mのペドラハ峠の頂上に到達。ここにはフランコ政権時代の内戦で亡くなった人々のために作られたモニュメントがある。近くのベンチでは恐らくベロラドより先の村で泊まっていたであろう人たちが思い思いに休憩している。

今日の道はアップダウンが激しく、壁のような坂道もあるが、最初の頃と比べるとあまり苦ではなくなってきており、今は歩くことをよりずっと楽しめている。

しばらくすると広い道へ出る。ここからはひたすら平坦な道を突き進む。

山道を抜けると、遠くに建物が見えてくる。11時過ぎにサン・ファン・デ・オルテガ(San Juan de Ortega)の村へ到着。

ここまで24kmの距離なので、それを5時間半で歩けたことになる。すぐそこを牛や鶏が歩いている。

村自体は小さいが、ここの教会・修道院は立派で迫力がある。

バルで休憩。お腹が空いていたのでサラミのボカディージョ、トマトとチーズのボカディージョ、アメリカーノを注文。4.90ユーロ。クレデンシャルにスタンプを押す。

リフレッシュできたので12時前に再び歩き出す。

難所を越えたのでここから比較的なだらかな道が続くはずだ。12時を回って少し日差しが出てきたが、今日は気温が低く風も涼しくて気持ちいい。

12時半に今日の目的地アヘスへ到着。

今日は難所も越えつつ20km台後半の距離を歩いたので上出来だろう。コンディション的にもう一つ先の村まで行けそうだが、Googleマップでアルベルゲやレストランの感じを見るとアヘスの方がよさそうだったので、今日はこちらで泊まることにした。
村の入り口のすぐ近くにあるアルベルゲにチェックイン。15ユーロ。

ホストの男性に2階の4人部屋へ案内されると、部屋にはカナダのポールが先にいた。彼は今朝5時15分に出発し、アヘスには11時に着いたそうだ。さすがに彼のスピードには敵わない。ポールと話しているとホストの男性が再び2階に上がってきて、こちらに何かを差し出してきた。財布とパスポート、クレデンシャルだ。受付のカウンターに置き忘れていたらしい。彼にお礼とお詫びを述べてそれらを受け取った。自分ではまだ大丈夫だと思っていたが、やはりそれなりに疲れているようだ。

シャワーと洗濯を済ませて部屋に戻ると、別の男性が部屋にいた。彼はアメリカ人のジェームス。今日はベロラドの2つ前の村から30km以上歩いてきたそうだ。1日に40km以上歩いたこともあるそうで、かなりのハイペースで進んでいるようだ。
それからベッドで昼寝をしているとドイツのデボンが部屋に入ってきた。彼とは何度か話をしたことがあり、一回目はララソアーニャのアルベルゲで彼がお腹の調子が悪いというので薬を探し回っており、自分が持っている腹痛用の薬はどうかと話しかけた時だ。二回目はサンソルの二軒目のアルベルゲで、このアルベルゲは自分に合わないから移ろうと思うんだよね、という話をした時だ。また会えて嬉しいよ、と話をする。

15時頃に町へ出る。ポールが教会でスタンプをもらえるよ、と教えてくれたので行ってみることにする。

村の片隅で遠慮がちに佇む教会は、古ぼけていて味わい深い。クレデンシャルにスタンプを押す。

甘いものを摂りたかったのでアルベルゲの1階でパンとオレンジジュースを注文。5ユーロ。オレンジジュースは専用のマシンでその場でオレンジを絞って作ってくれるのだが、その様子を見ているだけでも楽しい。

喉に少し違和感がある。きちんと食事と休養を取って回復するようにしよう。

19時に夕食を食べに出る。この村にはレストランが少なく、当たりをつけていたハンバーガーのお店は大勢の客で賑わっていた。

ハンバーガーとコーラを注文。11ユーロ。混雑していたこともあり出てくるまでにかなり待ったが、味は抜群だった。スペインの食事はほとんど外れることがない。

夕食を終えてアルベルゲに戻る。筋肉痛やマメなどはほとんど大丈夫なのだが、喉が少し痛いのだけが気がかりだ。早めに寝よう。21時に就寝。

歩いた距離
今日27.7km 合計264.1km 残り516.3km

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