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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #30 【28日目】難関イラゴ峠へ〜ラバナル・デル・カミーノで客2人だけのアルベルゲに宿泊

こんにちは、ナガイです。今日はアストルガからラバナル・デル・カミーノ(Rabanal del Camino)へ向かいます。
前回の記事はこちら。

天気予報(サンタ・コロンバ・デ・ソモサ) 曇り 最高気温24℃ 最低気温10℃

6時起床。部屋はまだ寝ている人がいるので廊下に荷物を持ち出して出発の準備をしていると、あの薬をくれた韓国人の男性が同じように出発の準備をしていた。このタイミングしかないと思い、挨拶がてら彼に名前を聞くとリーだと教えてくれた。彼とはもうすっかり顔見知りだったが、お互いの名前を知ったことでさらにぐっと距離が縮まったような気がした。6時半出発。

右足首が痛い。今日から難関といわれるイラゴ峠なのでやや不安だ。ここさえ痛めていなければ頂上手前のフォンセバドンまで難なく行けそうなのだが。

咳は相変わらず出るが少し楽になった気がする。薬があることで精神的な安心感も大きい。

ガウディと大聖堂の前を通る。闇に佇む大聖堂は昼間とは違った不気味な迫力がある。

町を抜ける前にも教会があったが、この教会はスタイリッシュでおしゃれな外観だった。

7時頃にバルデビエハス(Valdeviejas)の村を通過。村の出口には小さな教会があり、朝の掃除だろうか。この時間から女性が水汲みをしていた。

高速道路の上を通る橋を渡り、後ろを振り返ると朝焼けだ。これはすごい。これまでの中でも有数の美しさだ。

7時半頃にムリアス・デ・レチバルド(Murias de Rechivaldo)の村を通過。

昨日まともなディナーを食べていなかったので早めにお腹が空いてくる。村の通りにあるベンチで休憩し、ミックスナッツ&ドライフルーツとチョコレートクッキーの残りを食べる。

アニータから今日ウリーやレオナルドとプライベートルームに泊まる予定だけど一緒にどう?と連絡がある。そんなの絶対楽しいに決まってる、と思いながらも、フォンセバドンまで行けるか分からないからやめておくよ、と返信する。これまでにも他の巡礼者仲間に合わせるために自分のペースを崩した結果、歩くのに支障が出る程のケガを負っている人達を何人も見てきている。だから自分のペースを守ることを最優先にする。アニータもそのことは分かっているので「オッケー、了解!」とこちらの意志を尊重してくれる。

8時半過ぎにサンタ・カタリナ・デ・ソモサ(Santa Catalina de Somoza)の村を通過。家並みや石垣が美しい村だ。

バルで休憩を取る。ハムとチーズのボカディージョとアメリカーノを注文。4.70ユーロ。バゲットが香ばしくていい感じのボカディージョだ。

バルを出発して歩いていると男性4人組とすれ違う。昨日も見かけたグループだ。スペイン語で話しているのでスペインか他のスペイン語圏の国から来たのだろう。わきあいあいと話しながら肩を寄せ合って歩いており、仲の良さが伝わってくる。きっと4人それぞれのキャラクターや役回りがあり、ここに至るまで彼らには様々なストーリーがあるのだろう。そんなことを想像しながら彼らのことを見ているとなんだか微笑ましくなる。

今日の道は一見平坦だが地味にじわじわと上がり続ける坂道で、景色も変化するので歩きがいがある。

10時前にエル・ガンソ(El Ganso)の村を通過。

ここの教会は屋根が苔むしてオレンジと緑が混ざったような色合いになっており、渋くて味わいがある。

村を抜けて歩いていると徐々に坂道の勾配がきつくなってくる。肩にのしかかる荷物が重く感じるのでバックパックの胸と腰のベルトをきつく締め直す。

坂道を上ったところで遠くの山の上の方に町並みが見える。手前がラバナル・デル・カミーノ、その奥がフォンセバドンだろうか。まだフォンセバドンに行く可能性も残していたが、その遠さからしてやっぱり今日フォンセバドンまで行くのは無理そうなので諦めよう。

巡礼路沿いの右手の柵に木の十字架が延々と並んでいる。個人的には見ていてあまり楽しいものとは思えなかった。

放牧されている牛の群れの横を通り、11時半前にラバナル・デル・カミーノの村へ到着。

村に入ってすぐのところにあるバルでクラウスが食事をしている。彼はこれからフォンセバドンへ行くつもりだという。彼が20kmしか歩いてないけどもう25km歩いた気分だよ、と言っていたがまさにその通りだ。
クラウスと別れを告げ、体が今日はここで止めておけというのでアルベルゲへチェックインすることにする。公営のアルベルゲへ行き、中に入ると設備はそこそこ年季が入っている。チェックイン前だったので一瞬やめようかとも思ったが、すでにホスピタレイロの男性からシーツを受け取ってしまっていたため、そのまま滞在することにした。宿泊代は10ユーロ。決しておすすめはしないが、いつの間にかアルベルゲ生活にすっかり慣れ切っていたようで、いざ泊まってみると必要最低限のものは揃っていたので思ったより快適に過ごすことができた。

喉が渇いたのでシャワーの前に近くの商店に行き、ぶどう、パイナップルジュース、コーラを購入。4.60ユーロ。商店の女性が今日19時から教会でミサがあると教えてくれた。

レオナルドからもフォンセバドン来ないの?という連絡があった。まだ咳も残ってるから今日はラバナルで安静にするよ、と返信する。

シャワーと洗濯を済ませ、13時半過ぎに町へ出かける。近くにタベルナ(日本語で大衆食堂、居酒屋と訳されるカジュアルな飲食店)があったので、ここでランチを食べることにする。トマトとチョリソーのパスタ、ソーセージ、サラダのセットと飲み物に7upを注文。これはおいしい。昨日まともにディナーを食べていなかったので、このボリュームもありがたい。10.50ユーロ。

この町には先ほど行った店も含めて商店が3つあるようなので一通り巡ってみることにした。町の中心にある商店では店内を一周してオレンジジュースを購入。0.60ユーロ。もう一つは町の入り口に近い商店で、店の向かいにはくつろげる広場がある。品揃えは結局最初に行ったアルベルゲに近い店が一番よさそうだった。

15時頃にアルベルゲへ戻り、ベッドの上でゆっくり過ごす。たまに巡礼者が入って来るのだが、みんな踵を返して出ていってしまう。このアルベルゲはホスピタレイロの男性が基本的に受付におらず、また入ってすぐにベッドのある部屋が見えるため、この時間にしては人が少ないのを見てやめるのだろう。結局この日の宿泊客は自分と他の男性一人の二人だけだった。間違いなく今までで最少人数だ。

商店の女性が言っていた教会のミサに行ってみることにする。着いた時には19時を過ぎており、中に入るとすでにミサは始まっていた。参加者は30人ほどだろうか。言語はスペイン語なので何を言っているのかは分からないが、その空間に身を置いているだけで心が洗われるのを感じる。今さらだがキリスト教のことをあまりに知らな過ぎるので少し勉強しようと思った。日本に帰ってもキリスト教に入信しないまでも、せめてもう少し関心を持つようにしたい。

アルベルゲに戻り、今日の唯一の宿泊仲間であるもう一人の男性と会話を交わす。60代くらいだろうか。彼はイタリア人のラウル。英語は話せずイタリア語とスペイン語なら話せるというので、拙いスペイン語で「ここ二人だけですね」「パーフェクトですね」と伝えると、彼も全くそのとおりだね、という反応をしてくれて笑い合った。交わす言葉は少なくても彼がフィーリングの合う人だと分かる。正直あまりに誰も泊まろうとしないので少し心細かったのだが、何だか一気に今日のアルベルゲが特別で楽しいものに思えてきた。

アルベルゲの外階段から2階へ行くとキッチンとダイニングがある。階段でホスピタレイロの男性が本を読んでいるので挨拶を交わす。最初は彼にもっと商売っ気があれば二人きりで泊まるようなことにはならなかったのに、と思っていたのだが、すれ違うといつも飄々とした様子で笑って挨拶をしてくれる彼のことを段々と憎めなくなってきた。今日はランチが重かったので夕食はチョコレートクッキーの残りと昼間に買ったぶどうで済ませる。

部屋に戻り、今日は荷物が重く感じたこともあって少し断捨離しようと思ったのだが、結局今のところ一度も使う機会のなかった洗濯ロープしか捨てられなかった。夜になるとホスピタレイロの男性が二人だけのためにストーブを焚いてくれた。なんだ、なんだかんだで良いアルベルゲじゃないか、と思う。

明日はいよいよ今回の巡礼における最重要ポイントの一つに向かう。22時半就寝。

歩いた距離
今日20.7km 合計538.3km 残り242.1km

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