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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #32 【30日目】残り200kmを切る、ビジャフランカ・デル・ビエルソでレオナルドがまさかの涙
こんにちは、ナガイです。今日はモリーナセカからビジャフランカ・デル・ビエルソ(Villafranca del Bierzo)へ向かいます。
前回の記事はこちら。
天気予報(ビジャフランカ・デル・ビエルソ) 雨 最高気温22℃ 最低気温11℃
5時半前に起床。今日は夜中にも一度目が覚め、よく眠れなかった。そしてとうとう英語で話す夢を見た。ホームパーティーに参加する夢で、そこにいるのは知らない人達ばかりだった。
レオナルドに先に行ってるね、とメッセージを送って6時前に出発。今朝もそれほど寒くない。手袋は必要なく、半袖Tシャツに薄手のジャケットでちょうどいい。
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今日はレオナルドと話して30km先のビジャフランカに行く予定だ。夕方から降水確率は低いが雨が降る予報も出ているため、その前には着きたいところだ。
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村を抜けると街灯が全くなくなり暗闇になる。iPhoneのライトで前を照らして歩く。
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7時前にポンフェラダ(Ponferrada)の町へ到着。少し歩くとロス・テンプラリオス城が見えてくる。早朝なので内部の見学はできないが、威厳と風格を感じさせる佇まいだ。
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城の向かいにある教会越しにきれいな朝焼けが見える。
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かなり大きい町なので通り過ぎるにはもったいないが、シル川沿いの公園や閑静な住宅街を通り抜けて巡礼路を進む。
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8時頃に住宅街の中に佇む教会を通過。
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今日は朝起きた時はいける気がしたのだが、あまり調子がよくないようだ。昨日のイラゴ峠越えのダメージも加わったからか、歩くと右足首がズキズキと痛む。これまで3週間以上歩いてきて様々な痛みを経験したが、痛みに慣れることはない。毎日その日その時に抱える痛みと何とか折り合いをつけながら、やっとの思いで一日一日を乗り越えている感じだ。
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8時半前にコルンブリアノス(Columbrianos)の村を通過。
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右足首を気にしながら歩いていると、とてつもないスピードで後ろから人がやってくる気配を感じる。追い抜かれざまに挨拶すると、60代かひょっとすると70代ぐらいの男性だった。ドイツのマルコスが言っていた「老人は歩くのが早いんだよ」という言葉を思い出す。
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しばらく歩いていると残り203.9kmであることを示す道標がある。もう残り4分の1なのだ。
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9時半前にカンポナラヤ(Camponaraya)の村に到着。ここの村は新しい建物が多いように感じる。教会もそうだ。
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教会の近くにベンチが並んでいる場所があったので休憩する。ミックスナッツ&ドライフルーツの残りを食べる。3時間半ほど休まずに歩き通してしまったので少し疲れた。足を痛めていることで逆に歩けるうちに歩いておこうという変な焦りが出てしまったかもしれない。ここからは意識してこまめに休憩を取るようにしよう。
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トイレに行きたかったので近くのバルに立ち寄り、ついでにもう少し休憩することにした。カフェコンレチェを注文。1.40ユーロ。
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後から出発したレオナルドから連絡があり、彼は数km手前にいるようだったので、一つ先のカカベーロス(Cacabelos)かどこかで一緒にランチ食べられるかもね、と返信する。
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木々の濃くて深い緑が青空に映える。毎分のように目の前に立ち現れる景色に胸を打たれながら、改めて今こんなところを歩いている巡り合わせの不思議さと幸運に感謝したい気持ちになる。痛みに慣れることもないが、スペインの自然の美しさにも慣れることがない。
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11時過ぎにカカベーロスの町を通過。そこそこ大きな町のようだ。教会に立ち寄ってクレデンシャルにスタンプを押す。
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レオナルドから連絡があり、シカのことを考えるとカカベーロスに泊まった方がいいかもしれない、とのこと。自分はすでにビジャフランカ・デル・ビエルソに向けて歩き出してしまっていたため、カカベーロスに泊まるのもいい選択だと思うからシカのことを最優先に考えてあげてね、僕たちはまたどこかで会えるよ、とメッセージを送る。一瞬カカベーロスに引き返すことも頭を過ぎったが、やはり自分のペースを守ることを最優先にすべきだと考え、先へ進むことにする。
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12時頃にピエロス(Pieros)の村を通過。
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この辺りはぶどう畑が多いようだ。ところどころ一面にぶどうの木が広がる景色を見ながら歩く。
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イラゴ峠を越えたら最後の難関と言われるオ・セブレイロ峠の前までは楽な道になるものと思っていたのだが、十分アップダウンのあるハードな道のりだ。これを30km歩くというのは少し無茶をしてしまったかもしれない。ポンフェラーダからならビジャフランカ・デル・ビエルソを目的地にしても問題なさそうだが、モリーナセカからならカカベーロスに泊まるのが無難な行程だろう。
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13時半頃に今日の目的地ビジャフランカ・デル・ビエルソへ到着。
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何やら都会的な雰囲気の人達が多いなと思ったら、今日は土曜日だった。週末の休みを利用して来ている観光客も多いのだろう。
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13時半過ぎにアルベルゲへチェックイン。到着するやいなやホスピタレイラのマリアという女性が「お水飲む?」とコップに水を入れて持ってきてくれた。たった1杯のコップの水なのだが、その心遣いがありがたい。宿泊代は13ユーロ。
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シャワーを済ませて部屋に戻るとシヴがいた。彼は今日ポンフェラーダから来たそうだ。今日は平坦な道だと思ってたけど全然違ったね、と話してお互いを労う。
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2日分の洗濯物を一気に片付ける。ここのアルベルゲは別の敷地に庭があり、マリアにそこまで案内してもらって洗濯物を干した。太陽は歩いている時には多少憎いが、洗濯物を干す時にはありがたい存在になる。
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レオナルドからメッセージが来る。どうやらカカベーロスからビジャフランカ・デル・ビエルソへ向かうことにしたようだが、その道中で何者かに花火か爆竹のようなものでいたずらをされてシカが怯えてしまったそうだ。そのためシカをケアするためにピエロスのバルで足止めされているという。心無いことをする人がいるものだ。
15時半過ぎに町へ出る。バルやレストランが並ぶ広場ではテラス席で多くの人が食事を楽しんでいる。メニューにおいしそうなハンバーガーのあるバル兼レストランを見つけたので、ここでランチを食べることにする。
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ここのハンバーガーは特に牛肉のパティが日本の高級ハンバーガー店で出てくるものと引けを取らないクオリティでおいしかった。おいしいものを食べて今日の頑張りが報われたような嬉しい気持ちになる。コーラと合わせて15.20ユーロ。
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夏のようなカラッとした天気だ。これでまだ4月だから驚く。スーパーがオープンする17時まで町を散策しようと思い歩いていると、路上でガブリエレに会った。彼もスーパーへ買い物に行くところだというので一緒に行くことにした。レオナルドを楽しませようと思い、スーパーへ向かう途中でガブリエレとセルフィーを撮り、その写真をレオナルドに送った。スーパーの前でクラウスに会ったので挨拶を交わす。水、ミックスナッツを購入。3.53ユーロ。
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ガブリエレと別れてアルベルゲへ戻ろうとした時、レオナルドから「泊まるところがない」というメッセージが来た。犬を受け入れてくれる場所が見つからないのだろうか。続けて「心が折れてる」というメッセージが来る。一気に彼が置かれている状況の深刻さに気づく。何か自分にできることがないか考えるが、何も思いつかない。返す言葉も見つからない。
とりあえず買ったものを置きに一旦アルベルゲに戻ろう。アルベルゲに着いて中へ入ると、なんと受付にレオナルドがいた。彼はマリアに何かを懸命に話している。どうやらすでにシカと一緒にここに泊めてもらえる段取になっているようだ。その上で彼は今日あったトラブルのこと、いつも犬と一緒に泊めてくれる場所をなかなか見つけられないこと、このカミーノが自分の想像を超えた厳しいものであることなどを声を震わせながらマリアに語っていた。そんな感情的になっている彼を見るのは初めてだったので少し驚いたが、自分は近くで黙って彼の話を聞くことしかできなかった。
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マリアはとても器の大きな人で、レオナルドの話を相槌を打ちながら穏やかな表情で聞いていた。そんな彼女に安心したのか、レオナルドは「今日は本当に辛かったんだ…」と言って大粒の涙を流した。彼がシカと一緒に巡礼することは自分が想像していたよりずっと大変なことだったのだ。マリアは「時には泣くことも必要よ」とレオナルドのことを優しく見守っていた。
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レオナルドとシカが用意してもらったのは屋根裏の部屋で、広々としていて彼らが泊まるにはこの上ない環境だった。レオナルドがシャワーを浴びる間だけシカが吠えないように見ていてほしいというので、レオナルドがシャワーに行っている間、屋根裏部屋でシカと一緒に過ごした。シカはレオナルドが部屋から出ていくとすぐにそわそわし始めてナーバスになっているのが分かる。普段は落ち着いた振る舞いをしているシカだが、その様子を見ていかに飼い主であるレオナルドが彼にとってなくてはならない存在なのかが分かる。
19時半頃にレオナルドとシカとディナーを食べに町へ出る。しばらく町を歩いてから、あまり観光客向けではなさそうな店を選んでテラス席に座った。
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メヌーにして一皿目にムール貝、二皿目に牛肉の頬肉の煮込み、デザートにティラミスを注文。レオナルドは一皿目にソーセージ盛り合わせ、二皿目にウサギのオーブン焼き、デザートは同じティラミスを頼んだ。ここの料理がとにかく美味しかった。料理のソースはパンにつけて食べても絶品で、二人で2回くらいパンをおかわりした。デザートのティラミスも絶品で、レオナルド曰く「リアルイタリアンティラミス」とのこと。パンと水・ワイン込みで20ユーロ。間違いなくこれまでのスペイン巡礼の中でのベストディナーだった。レオナルドは今日が精神的に一番きつい日だったと言っていたが、そんな彼とおいしいディナーを一緒に食べられたことが嬉しかった。シカも元気を取り戻したようだ。
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すっかり遅くなってしまったが、アルベルゲの門限が22時半だったため、22時過ぎにアルベルゲへ戻る。すると一階のロビーにマリアがいたので、しばらく三人で話をした。そしてチャンスがあれば撮りたいと思っていた、レオナルドとマリアとシカのスリーショットの写真を撮った。レオナルドは「彼女は天使だ」と言ってマリアに感謝しきりだったので、マリアとの写真を撮ってあげたいと思っていたのだ。自分には泊まる場所を提供することもおいしい食事を作ることもできない。できるのは一緒にディナーを食べて話し相手になることや写真を撮ってあげることぐらいだ。だからこそ友達としてできることは全てしてあげたいと思う。
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部屋に戻り、23時半就寝。
歩いた距離
今日30.7km 合計594.0km 残り186.4km
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