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【読書】自分の薬をつくる/坂口恭平

昔から薬とか病院というものがなんだか好きではない。これといった理由はないが、なぜだかずっと苦手で今も変わらない。介護という仕事で、医療との関わりがあると慣れそうなものだが、そうでもない。薬というものの効果を全く信じないわけではないが、なんだか信じきれないというのもある。そんなとき、同じ病を抱える坂口恭平さんが『自分の薬をつくる』という本を出した。薬は処方してもらうものとばかり思っていた自分は、自分でつくるというタイトルに惹かれて読んでみた。

誰にも言えない悩みは、みんなで話そう。
坂口医院0円診察室、開院します。
「悩み」に対して強力な効果があり、
心と体に変化が起きる「自分でつくる薬」とは?
2019年に実際に行われたワークショップを誌上体験。
「いのっちの電話」では、なぜ電話をかけた人たちが楽になり、 元気になれるのか。いったい何がそこで起こっているのか。 その秘密とは。全部教えます。

ワークショップで坂口恭平さんが医師を演じて、参加者の悩みに答えていき、それぞれにあった薬(実際の薬ではなく、提案)を処方していくという企画が本になったものである。

坂口さんは"いのちの電話"ならぬ、"いのっちの電話"という活動をされている。個人の電話番号を公表して、自殺などを考えている人たちの話を聴く。そこで色々な人の様々な悩みを聴いてきた著者が、ワークショップで対面で同じように話を聴いて、それぞれの人にあった処方をしていくそのやりとりも面白いし、目から鱗な発見もあったりする。

例えば、人間関係がうまくいかないという悩みを持った患者さんの場合。関係を悪くしたくないからと、どんな誘いも断らずに無理して参加してしまうところがあるとのこと。相手に興味がないことが根本の原因ではないだろうかということで、そこで無理して合わせようとせず、断ることをきちんとできるように勧められる。坂口さんは、基本打ち上げなどはどう楽しんだらいいかもわからないし、余韻は家でひとりや家族で楽しみたいとのことで断っているそう。最近では、夜9時に寝ていることからそれをアピールするようになったら(この人はそういう人なんだね)とわかってもらえるようになったとのこと。たしかに、なんとなく合わせていると最初はいいかもしれないがなんだかしんどくなったりする。時にはきちんと断ることも必要かなと思った。

演劇が好きだけど最近観られてなくて辛いという患者さんには、観に行けないなら自分で作ってみてはと、受動的ではなくて能動的になにかをしたりすることも勧めたりしている。

そのほか、死にたいなど様々な悩みがでてくるが、人が抱える悩みというのは、十人十色なようでいて根本は同じようなことで悩んでいるのかもしれないと思った。ただその悩みは共有しないと見えないのでわからないだけなのだ。

なにかもやもやしたものを体に溜め込むと、こころや身体に影響がでてきたりする。そんなもやもやを人に話すということで、楽になる。そこからなにかしらの行動をすることで、悩みから気持ちが遠ざかり、結果的にその行動が薬になるのかもしれないと思った。

躁うつに限らず多くのひとに読んでもらって、感想を聞いてみたいなと思うおススメな一冊。

自分の薬をつくる https://www.amazon.co.jp/dp/4794971842/ref=cm_sw_r_cp_api_i_-hDpFb2P1MTTK

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