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ウェルテル効果は悩ましいが芸術は美しい

200年以上も前の文学がもたらす魔力


週末、有名人の悲しいニュースが世間を騒がせました。

ファンの方や感受性の強い方は影響を受けやすいので沈んだ気持ちになり、最悪の場合は”自分も”となってしまいます。

報道の仕方も工夫されているそうですが、皆さん気をつけてください。


この現象をアメリカの社会学者フィリップスは「ウェルテル効果」と提唱しました。

ゲーテの書いた小説「若きウェルテルの悩み」が当時の若者たちの脳を支配し、叶わぬ恋路の果てに自らに銃口を向けたウェルテルと同じ道を選んでしまわせたからそう呼ばれています。

実際にあった事例として、XJAPANのhideのニュースの後にはそれを追う若者が増え、アイドル歌手の岡田有希子が身を投げた後に若い女性を中心に自殺者数が増えました。

人間は、憧れを抱く象徴的な人物の行動に反応してしまう”社会学習理論”の影響を受けるため、彼らの後を追った若者たちはその手段も模倣していました。

文章や有名人が人を魅了するからこそ起こる副作用を理解しておく必要があります。 

でも実は、お気に入りの一冊


今の世の中でウェルテルを薦めるのは憚られますが、このウェルテル、本を定期的に売って身軽にしている私が自宅に残す数少ない小説です。

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思わず本棚から取り出してしまいました。

あとがきでは、ゲーテ本人ですら「もう読み返したくない」と語るほどです。

精神の内部を吐露する内容に、自らを重ねてしまうと危険なのですね。

この文学を楽しむには、客観的に物語を感じられる心の余裕が必要です。

文学の醍醐味はその単体にあらず


大昔の作品が今もなお愛されているのは理由があります。

こういった物語は、総合芸術として人々を沸きたてるのです。

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ちょうど去年の春、日本でも「ウェルテル」のオペラ上演があったので行ってきました。

この位置からでもオペラグラスは必須です。

お金を惜しまず近くの席で観れば良かったと後悔しています。

素晴らしかった・・・。

葛藤して激情のままに勢いよく展開する物語だからこそ、役者の演技も映えるし、音楽もメリハリがでます。

きっとゲーテは(というよりもこの時代の文豪はほとんど)演じられるところまで想定して書き進めていたのではないかと思うほど劇にマッチしていました。

考え抜いた台詞を最大のパフォーマンスで目の前の人々に伝える。

オペラとプレゼンテーションは根幹が似ているので、良いプレゼンテーションを見た後は観劇後のような充実感があります。


芸術と言われるような原稿を作って聴衆の心を打ちたいですね。



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