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#7 【日本人よ、Dan Vasc を聴こう】 Tale With No End (テイル・ウィズ・ノー・エンド)

この曲は、Dan Vasc  (ダン・ヴァスク) 自身のメタルバンド  Fearless  (フィアレス) のオリジナルである。

実は、この曲を収録したファーストアルバムには、おもしろい逸話がある。

皆さんは、Christopher Lee  (クリストファー・リー) をご存知だろうか。
映画『吸血鬼ドラキュラ』(1958 年) のドラキュラ伯爵、『スターウォーズ』シリーズ (2002〜2008 年) のドゥークー伯爵、『ホビット』(2012〜2014 年) のサルマン役を演じた長身のイギリス人俳優といえば、お分かりいただけると思う。
リーは 90 歳を超えてなお、ヘビーメタルにも挑戦していた。

そのリーの2枚目のコンセプトアルバム  The Omens Of Death  (ジ・オーメンズ・オブ・デス) 収録の際、ダンは  Oliver  (オリバー) 役でバックボーカルに参加したのだ。

当時のダンは全くの無名で、従来通りの "本物のミュージシャン" になりたいと願って音楽業界の門戸を叩きながら、ボーカルコーチやセッションワークなどの仕事をして生計を立てていた。
YouTube への動画投稿はほんの趣味程度の軽い気持ちで、仕事の依頼募集のためでもあった。

そんなある日、リーのアルバム制作関係者の  Juan Aneiros  (フアン・アネイロス) からギグの依頼があったという。
チャンネル登録者数が 4,000 人にも満たない頃のことである。
「とても誇らしかった。自分の動画を誰が見てくれるかはわからないものだ」
と、ダンは語っている。

アネイロスから、
「サー・クリストファーが、君のバンドの音楽を気に入ったと言っているぞ」
と聞いたダンは大喜び。
好機を逃さず、自身のファーストアルバムに収録予定だった曲の英語ナレーションを依頼してみたところ、リーは快諾。
『ホビット』の撮影が終わり次第ナレーションの吹き込みが始められるよう、諸々の契約も進んでいた。

しかし、高齢のリーは撮影終了の直後から体調を崩した。
なかなか回復せず、吹き込みは延期に継ぐ延期。
そのまま、リーは気の毒にも亡くなってしまったのだった。

「自分達のアルバムがリーの人生最後の仕事になっていたかもしれないと思うと、本当にがっかりだった」
と、ダンは苦笑していた。


🔵Tale With No End
 … ダンのメタルバンド  Fearless  のファーストアルバム  Chronicles Of Ancient Wisdom  (クロニクルズ・オブ・エインシャント・ウィズダム) に収録されている曲。

Dan Vasc  :  ボーカル・オーケストラアレンジ
Davi Vasc  :  エレキ・ベースギター
Gabriel Belozi  :  エレキギター
Giovanni Rezende  :   ドラムス


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