見出し画像

創作の全体像#3

どうも、白髪ロン毛おやじです。

前回は創作のアウトライン、外形的な特徴について書きました。

  • 創作とは、自分の創造性を発揮し、作品に投影・表現すること。

  • 創作物とは、作った人の創造性そのものを意味し実体のないもの。
    創造性が投影された作品は創造性の宿主のようなもの。

  • 創作する人は、アート系、エンタメ系、実用系、学術系の4種類。創作を仕事にしている人と趣味で創作している人を合わせた、
    創作人口の比率は全体の3〜4%。クラスに一人はいる的な存在。

今回は創作の本質的な部分に踏み込んで、全体像を考察します。

創造と創作

創作と似た言葉に「創造」があります。
まずは、考察を始める前に日本国語大辞典で「創造」の意味を調べます。

  1. 新しいものを自分の考えや技術などで初めてつくりだすこと。

  2. 神が宇宙万物をつくること。

2番目の意味が創作との違いになりそうです。

キリスト教では神を宇宙と万物の創り主、創造主と呼びます。
さらに、英語では自然(Nature)のことを”Things God made”、
その反対語としての人工物(Art)を”Things human made”と表現します。
また、「Art」には自然の模倣と言う意味があります。
つまり、神が創り出した人間が神を模倣して新しいものを作ることが創作
であり、神を超えることはないという考え方が示されていると思います。

創造と創作

創作する意味

前段で創作という概念の外側の境界線を決めましたので、
次に内側の構造を整理していきます。

そもそも、人間は何のために創作をするのでしょう。
何でも簡単に手に入るこの時代でも、創作する意味は何でしょうか。
人それぞれに違いはあるでしょうが、突き詰めてしまえば、
自分の能力と可能性を確かめたいという欲求を満たすためです。

自分は今何ができるのか、なりたい自分になれるのか。
自分はどんな人間で、何のために存在しているのか。
自分を価値ある存在として認めることができるか(自尊の欲求)、
他者から価値ある存在として認めてもらえるのか(尊敬の欲求)。
いわゆる承認欲求を満たすためです。

では、価値ある存在とは何か。
それは、人々の生活を少しでも豊かにするものを創り出す人です。
一つ一つの創作の成果は積み重なって生活様式として定着し、
それが発展して文化や文明となります。
文化は情緒的価値や精神的な豊かさ、
文明は実用的価値や物質的な豊かさです。

自分だけの個人的な欲求を満たすだけでなく、周りの人やや社会に
とっての価値を生み出すことが、創作することの本質なのです。

芸術 vs. 娯楽

文化的な創作というと、芸術とか娯楽という概念が思い浮かびます。
そして、これは芸術だ、これは芸術ではなく娯楽だ、といった区別が
行われている様子を見聞きすることがあります。
そこには、芸術は高尚なもので娯楽は大衆的で低俗なもの、
という差別意識が見え隠れしている気がします。
良し悪しとか好き嫌いみたいなことで分けるだけなら、ここでの考察に
あまり関係ないことのように思いますが、本当にそうでしょうか。

例によって、芸術を日本国語大辞典で調べてみます。

  1. 学芸と技術。

  2. 武芸と技術。

  3. 鑑賞の対象となるものを人為的に創造する技術。
    空間芸術(建築・工芸・絵画)、時間芸術(音楽・文芸)、
    総合芸術(オペラ・舞踊・演劇・映画)など。また、その作品。

  4. 高等学校における教育課程の一つ。
    各科目に必要な知識や技術を取得させ、創造的表現と鑑賞の能力を
    高めることを目的とする。音楽、美術、工芸、書道が含まれる。

近世まではもっぱら「学芸・技術」の意で用いられたが、
明治期に西洋文化の摂取が盛んになるに及んで、英語の art その他、
美の表現・創造を共通の概念とするヨーロッパ各国語の訳語としての
3の意が出現した。
ただし、明治初期にはむしろ同じ訳語に「美術」を用いることが
より一般的であり、「芸術」が新しい意義で定着するのは、
ほぼ明治三〇年(一八九七)前後である。

娯楽についても日本国語大辞典で調べてみます。

  1. 天上で、天女などのもてなしを受けて楽しむこと。また、その快楽。

  2. 心をなぐさめること。楽しむこと。

  3. 生活のための労働、仕事や勉学などの余暇に、くつろいでする遊びや
    楽しみ。

整理すると、

  • 芸術は、鑑賞の対象となるものを創作すること。

  • 娯楽は、人間の心を楽しませ慰めること。

つまり、芸術は活動の内容を、娯楽は活動の機能や効果を意味する
ということです。これらは同軸上の対立概念ではなく、
軸の異なる概念なのです。
ですから、芸術作品であり娯楽作品でもあるということが成立します。
反対に、芸術作品だけど娯楽作品ではないということは、
鑑賞者の心が苦しくなるか何も感じない作品ということなので
少し残念なことになります。
さらに、芸術ではないけど娯楽であるということは、鑑賞の対象ではないもの、例えばレクリエーションとか遊びとかを指すことになります。

芸術と娯楽

学術的創作

文明的な創作には、実用的な商品やサービス、社会インフラ、
社会制度や法律があり、私的利用と公共利用に大別できます。
それともう一つ、創作というイメージはあまりないかもしれませんが、
学術的な研究も文明的な創作であると言えます。
学術研究とは、先人の知恵や創造性の積み重ねを体系化するだけでなく、
目先の成果に囚われずに新しい知識や技術を開拓することです。
このおかげで我々は生まれてすぐに古代人よりもずっと先のスタート
ラインに立つことができ、さらに歩みを加速することができるのです。
文化や文明を発展させる基礎として、独立させておきたいと思います。

アメリカでの学位は、Bachelor of ScienceとBachelor of Artの2種類で、
研究対象が神が作ったものならScience(自然科学)、人間が作った
ものならArt(人文・社会科学)、という区分になっています。
キリスト教の文化がこういうところまで一貫して社会に根付いていて
いることに驚きます。
日本は良く言えば柔軟、悪く言えばご都合主義なところがあるので、
こういう一貫性に欠けるところがあります。

まとめ

というわけで、創作の全体像を図式化しました。

創作の全体像

ある創作が、一つの枠内に固定されるわけではなく、枠を移動したり、
枠を跨いで相乗効果が生まれることもあります。
実現不可能な夢として文芸娯楽作品の中で描かれたものが、
時を経て実用化されるようなことは十分にあり得ます。
また、自動車のように、富裕層の特権だった商品が、コスト低減により
一般に普及し、社会インフラ化が始まるといったことも現実に起こります。
文化的・文明的創作が学術研究によってアイデアやノウハウが体系化・
共有化され、そこで全く新しい要素技術が生まれると、創作の可能性が
大きく広がります。
たまには、自分が関係しているカテゴリー以外に目を向けることも、
無駄にはならないかと思います。

よろしければサポートをお願いします。 いただいたサポートは創作材料や研究資料購入などに使わせていただきます。