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分断と繋がりの一本、ダルデンヌ監督の「その手に触れるまで」に思うこと


◆「その手に触れるまで」

カンヌ映画祭の常連ダルデンヌ兄弟監督の作品です。原題は「LE JEUNE AHMED」(若いアメッド)

13歳のごく普通の少年アメッドが過激な宗教思想にのめりこみ教師を殺害しようと試みた姿を描いた一本です。ヨーロッパの現状を描いた一本として観ることもできますが、私は「人と繋がる」という視点で観ました。

作中の少年は幼さ故に、ふとしたことから過激な思想にのめり込み文字通り他人のことなど考えられなくなります。結果、繫がりではなく分断を追い求めてしまうのです。

彼が最後にようやくその思考から抜け出せたのは、自身が「身をもって」痛みを知った時でした。そう、人間は思考のみで生きているのではなく、リアルな身体(作中では痛み以外にも走ることや、並び歩き、他者と語ることで表現される)として生き、身体性を共有する(=自分の身体を通じて他者を理解する)ことで他者との繋がりをもてる存在なのです。

この作品でダルデンヌ兄弟が投げかけてくる「人間である限り他者と繋がれる」というメッセージは今の世界においては希望そのものだと思います。

今回も人に対する優しく深い視点で着地する監督に拍手の一本です。

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