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卵子凍結をしてみて

実際に卵子凍結をしてみた結果、私が感じたことや、考えの変化をまとめました。

①自分の身体を理解した

 『卵子凍結をした理由』でも書いた通り、私はもともと卵子凍結をすることで、少しの期間「子供を産みたいか」という答えの出ない問いから一時的に離れ、あわよくばその焦燥感から解放された楽観的な状態で人生を楽しみたいと思っていました。
 しかし当初の期待とは裏腹に、卵子凍結をしたことで私は、「子供を産むこと」について、より自分事として、深くかつ現実的に考え、自分の身体の生殖機能の限界に向き合うようになりました。
 卵子凍結を検討し始めてから実際に採卵するまでの数カ月間で、卵子の老化や妊娠プロセスについて、これまで知らなかった一般的事実を沢山学びました。この歳になるまで妊娠についての知識をほぼ持たず、「排卵日に性交渉すれば妊娠する」くらいの浅い考えでのうのうと生きてきた、自分の無知さ加減と勉強不足を痛切に感じる時間でした。
 また、37歳という年齢における妊娠・出産率や、私個人の子宮の状態、排卵状況、採卵できる卵子の数など、極めてパーソナルな現実を科学的数値で示されたことで、これまで見えていなかった自分の身体について、より理解が深まりました。
 そして、卵子凍結や妊娠についてより深い知識を得れば得るほど、たとえ卵子凍結をしても、将来いつか自分が子供を欲しいと思ったときに、それを確実に実現できる保証は全くない、ということもわかりました。妊娠が成立するためには、卵子の年齢だけでなく、卵子の質、子宮の状態、精子の年齢、精子の質、精子と卵子の相性など、様々な要素が合致する必要があります。また、言わずもがな、妊娠することと出産することは全く別の話です。

②焦りや不安がなくなった

 「子供を産むこと」について考えることからは解放されませんでしたが、卵子凍結をしたことで、それまで漠然と抱えていた焦りや不安はなくなりました。
 これは、将来の妊娠に繋がる卵子が冷凍保存されている、ということで生まれる安心感ではありません。①の通り、「卵子が凍結されているから子供を産める」というロジックは全くもってナンセンスです。
 そうではなく、私は自分の身体の限界を、科学的な数値や診察に基づいて知っていったことで、自分自身の現状に対する理解が深まり、それが大きな安心に繋がりました。
 私の年齢は現在37歳で、妊娠率のピークはとっくに過ぎており、卵子の老化は止められず、そしてその数は日々減り続けている。それは何をどうやっても変えられない事実としてあるけれど、これは別に、目を背けるべきことでも、恥ずかしいことでも、不安を感じることでもないんだ、というごくごく当たり前の真実に改めて気付かされました。結果、私の心は落ち着きを取り戻し、やみくもに焦ることがなくなりました。
 自分の身体の限界や漠然とした不安と向き合うプロセスを経たことで、「たられば」の話ばかりに捉われることなく、今現在の自分の身体と取り巻く環境を大切にしながら、引き続きマイペースに楽しく過ごしていけば良いんだな、と認識できたからだと思います。

③子供を産みたくなった

 これは想定外でしたが、卵子凍結をしたことで、結果的に子供を産んでみたくなりました。
 卵子凍結をするまでの数カ月の間に、不妊治療を含む妊娠についての知識を沢山学び、同時に、妊娠について周りとコミュニケーションを取る機会が数えきれないほどありました。子供を持つ友人に妊娠に至ったまでの話を聞いたり、不妊治療を中断した方の話を聞いたり、10代から婦人科に通っている後輩の妊娠プランを聞いたり。
 そんな妊娠情報にどっぷりと浸かった数カ月間は、図らずも、私のこれまでの人生の中で「子供を産む」ということについて最も考えさせられ、妊娠や出産を取り巻く社会の在り方や考え方に、最も寄り添った期間となりました。 
 そして最終的に、現実的にこの身体で妊娠することを想像し、それを実現できるかもしれない、或いはできないかもしれない、ということに考えを何周も何周も巡らせた結果、いつの間にかトライする気満々になっている自分に気付きました。
 それはまるで、1年前に「卵子凍結やってみよう」と思ったときと同様の感覚で、実現できるかどうかわからないけど、「まずはチャレンジしてみることで、何かとてつもなく新しい自分に出会えるかもしれない!」と、結構ワクワクしている今現在です。

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