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ショートヘアが好きって言う男

「ショートヘアが好き」って男に言われると、ドキッとしてしまう。

絶対過去になんかあったな?

ショートの女に惚れた経験があるな?

割合的に少ないであろうショートの女が好きということは、そうなったきっかけがあるはず。

そのこだわりっぷりにも慄くものがある。


わたしは生まれてこの方、髪を短くしたことがほとんどない。

ショートにすると髪質的にこけしみたいになりそうだし、輪郭をあらわにする自信がない。

ロングの方が女の子っぽく見えて何かとごまかせる気がするのだ。

ショートヘアが好きと言われると、ロングヘアをくるんと巻いているわたしの姿では敵わない何かがあるのだと確信させられて、気分は良くない。


好きな人がショートヘアの女が好きだと知ったら…。

ショートヘアを性癖として植え付けた過去の女にただただ嫉妬する。

ショートが似合う女の人って、顔が良くて、快活で、自分の魅力をよく理解していて、その使い方もよく分かっている、そんなイメージがある。

過去の女を容易に想像できてしまうのって、精神的にしんどい。


好きな人の気を引きたくて髪を短くしたところで、結局わたしの姿は過去の女の模倣に過ぎないだろう。

それが嫌だから、さすがのカメレオン女優のわたしでも男の意見ひとつで簡単に髪を切ることはない。

誰かの影を重ねられながら愛されることは、じわじわとプライドを蝕んでいく自傷行為のようだ。

男の趣味に合わせて自分の見た目を変えることは楽しいことだけれど、一線を引いてオリジナルな自分軸を持つこともまた、自分を大切にするため、気高く生きるためには必要なことだと考えている。

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