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スナップ写真と肖像権 『極私的写真論』            -西原敏弘さん個展「東京風景」を観て思うこと-

スナップ写真の定義について調べてみると、人物などの被写体を、撮られることを意識しない自然な形や雰囲気のなかで早撮りした写真。(一瞬の活き活きとした表情などの即興的撮影)
英語ではキャンディッド・フォト、ポーズをとらないありのままの姿・現実をとらえる写真とあります。一言で言うといい意味での盗み撮りとエロ目的の盗撮とは目的がそもそも違うという事になりますが、昨今では都市部に監視カメラ等張り巡らされたりと昔のようには随分と思うようには撮れなくなりましたね。
私の記憶が確かならばスナップ写真とは本来モノではなく人の何気ない仕草・表情をとらえるところが本質であると考えられていました。

私はかつてバブル経済の真っ只中の時代(1987-1989)に写真現像所でアルバイトしながら渋谷にある日本写真芸術専門学校のⅡ部(夜間部)の報道写真科で学んだ経験がありまして、課題の撮影の為とりわけ夜の新宿や渋谷の街に繰り出して撮って来てはモノクロプリントの自家現像をするという生活を一年半~二年ほどしていました。
一番充実していた講義というか実習は現役のフォトジャーナリストの樋口健二先生からいただくお言葉でしたが、結構自分の弱点を突かれてなにくそと毎回思ったものでした。中でも一番主張されていたのは『広角レンズでもう一歩前に出て人を撮りなさい』みたいなことをしきりに言われていたのが印象に残っています。(今同じ事やっちゃうと一発アウトですが笑)、例外もあってテーマによっては人でなくてもいいのですが、六枚ほどの組写真にすることで言いたいことを伝えるというような訓練みたいなものに徐々になっていきました。もう一つしきりに言われていたこととして不要なもの(写さなくていいもの)が多く、よくシャープカッターで「ここは要らない!」とバサバサと六つ切サイズのモノクロプリントがキャビネ(2L)や手札サイズ(通常のLサイズくらい)に小さくなるまで毎週よく切られていたものでした。しかし、いつ頃か「君もなかなかいいものを持ってるね」なんてことも言ってもらえるようになり
嬉しくてどちらかと言うと褒められて伸びるタイプなのかななんて思いました。
今の若い人に六ッ切とか四ッ切とか言っても伝わらないですし、プリントする文化も無くなってしまったのでなかなか・・・

何を撮っていいか分からず彷徨っていた頃の1980年代後半の新宿 (私が撮った写真です)
2008年に閉館した「演歌の殿堂」新宿コマ劇場 1988年頃 (私が撮った写真です)
1988年頃の新宿歌舞伎町 旧新宿コマ劇場前 (私が撮った写真です)

昔の写真を整理していてふと思ったので今回テーマにしてみましたが、2010年頃からでしたか、携帯電話にカメラ機能がそなわるようになってしばらくして、それまで撮影から公開まで一部のスキルを持った者に限られていた時代から、モラルを欠いた者までが手軽に実行できるようになり、そのことでマナーが問われるケースが増え、「どこまでがみだりな撮影か」ということの定義については未だ分からなくなってしまいました。個人を特定できる写真には許諾を取ったほうがより安全であると考えられていますが、今日益々社会的課題として困難なものになってきていると感じています。
表現の自由・報道の自由とか聞かなくなりましたが一体どこへ行ってしまったのかと・・・

2015年頃からストックフォトの写真素材として街並みなども撮るようになって早いもので今年で9年目になります。
撮っている時はポジティブなイメージで使っていただく前提で撮っていてそのまま使われるのはいいのですが、こと悪いニュースがあるとネガティブなイメージとして誤解を招いてしまう。はたまた土地や建物等の知的財産権・所有権に至っては何処までがOKなのか曖昧なことが多く(一般的に歩道から撮る分には問題ないのですが) そんなケースがごく稀にありまして最近は写真をやめてイラストとして販売しようかと真剣に考えるほどです。
購入者側の心理としても使いにくいと思うので何となく買い控えられているなというのも実感しています。
基本人物は写らないように撮るか、写ってしまった場合はボカシなどのエフェクトを掛けるなど特定できないようにしますが、写真素材に関してはほとんどモデルリリース(本人の承諾)のない写真は人物が全く写らないほうが売れやすい傾向にあります。(ここまで私の経験から)

西原敏弘さん写真展
写真集 Tokyo landscape
福島市写真美術館

先週の2月18日に福島市の某ご当地アイドルさんの撮影会に参加するため飯坂温泉まで行ったのですが、帰りにどこか立ち寄りたいなと思い専門学校の校長だった秋山庄太郎先生のゆかりのある福島市写真美術館(花の写真館)に行ってみました。新潟を含め写真専門の美術館ってなかなかないので、本当に自分は写真が好きなんだなと思いつつ大正期に建設された素晴らしい吹き抜けの趣のある建物に入り、暫し時間を忘れて作品に浸ることができました。
一番に長く目が留まったのは西原敏弘さんの写真展『Tokyo landscape 東京風景』でした。コンポラ写真『コンテンポラリー・フォトグラファーズ』という言葉は初めて聞きましたが、コンポラ写真かリアリズムか否かでかつて議論になったこともあるそうでわかるようでよくわかりませんが、代表的な写真家としては、私の自宅から隣町の加茂市出身の牛腸茂雄さんや以前写真展を観覧したことがある荒木経惟(アラーキー)さん。
西原敏弘さんの写真展を観終えてから「様々な時代に生きる人々の活き活きとした表情を見れて良かったです」のようなコメントを芳名帳に書かせて頂きました。
便利さと引き換えに写真を記録していくことが困難になり、大切さが失われていくのではと懸念されますが、イラスト・生成AIの技術の進化によって表現方法も転換点なのかなと、写真に拘らずクリエイターとして時代の変化に対応していかなければいけないのだと改めて考えさせられました。

※尚、西原さんはご病気のため二年前にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。写真集は奥様のご厚意により通常価格よりお値引き頂き千円でご購入させて頂きました。開催期間中のみですのでご興味のある方は是非お早めにお手に取ってご鑑賞下さい。(3月3日日曜日まで 最終日入館は午後4時)

マジカルバルルーンYes かなさん

最後の写真は福島県のご当地アイドル マジカルバルルーンYes かなさん。
ほとんどレタッチで修正する必要がない可愛さでした !

X(旧ツイッター)で何枚か写真アップしているので是非みてください !

撮影データ
キャノン7D &BG-E7 タムロン18-270mm
Cactus CB-60Wソフトボックス Godoxストロボ
Photoshop 2023 Lightroom Classic


久々のロードバイク用のタイヤ交換

タイヤがパンクして使ってない自転車のを付け替えました。
かかった時間1時間ほど、意外と早かった。

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