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小説を物語ることで救われてきた

感動的なストーリーや、自分の悩みに光が当たるようなセリフを読んで救われたという話を見聞きします。
よくできた小説に触れることで、自分が救われた感じがすることがあります。先日亡くなったポール・オースターの「ムーン・パレス」を青春時代に読んで、くすんでいた時間に光が差した感覚がしたのを今でも覚えています。

読者は本を読むことで救われますが、救われるのは読者だけではなく、作者も同じだと思います。
少なくても僕は小説を書いていることで救われている気がします。

神秘的な話ではなく、心理学的な話です。
自分の中にあるもやもやしたものを物語として整理して吐き出すことで、心の中がスッキリした気がします。
物語るためには、心にあるものを人が理解できる形に仕立て上げる必要があります。その前に、自分が抱えているもやもやの正体を突き止めないといけません。
それらの作業の過程で、自分が思い悩んでいること、つまづいていることの正体が見えてきます。
それらを物語として心と体の外に出すことで、スポーツで体を動かしたように晴れ晴れします。

心が壊れてしまう要因のひとつは、自分の中で抱えてしまったものが心を傷つけることだと僕は思っています。
会社員時代にメンタルヘルスに罹った人と話す機会が多々ありましたが、共通するのはみんな真面目な人だったということです。悩みや心配を吐き出せずに溜めてしまうことで起きる症状のように思えます(それだけが原因ではありませんが)。
だから、物語ることで、自分の心を守ることができると信じています。実際に、患者に自分の気持ちや現状を話をしてもらい、傾聴することは、心療内科医の治療法のひとつです。
作者は、物語ることで、自分の心を修復しているのかもしれません。その割には、古今東西で心を病む小説家が多いのは、物語ることがうまくいかず、自分の中に溜めてしまうからですかね?

初の商業出版です。よろしかったら。



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