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小説家は暗闇を歩いている

新作「夏のピルグリム」の刊行が迫ってきました。新しい本が出版されるのは嬉しいことなのですが、時々胸がヒヤリとする瞬間があります。まるで道標が見えない暗闇を歩いているような。
それは新作の評価がわからないからです。出版前に読んでいるのは、プルーフやゲラを読んでくれた書店関係者と編集の方々など限られた人たちだけです。もちろん、そういった方の感想は嬉しいですし、参考になりますが、一般の人たちがどのような評価を下すのかはとても気になります、胃が痛くなるぐらいに。

もちろん、作者としては、読者の方に楽しんでもらえるような作品にしたつもりですが、それがどこまでのレベルに達しているのか、どれだけ多くの人に刺さるのかはわかりません。
多くの読者を想像して、最善を尽くして書いたつもりでも、そのときの雰囲気や、さまざまな偶然の要素によって人の心は移ろい、好みも変わります。

本を何冊も出している作家だと、評価も定まっていますし、一冊の評価で一喜一憂しないのかもしれません。先輩作家さんたちの中には、小説を作るまでが仕事で、それが売れるかどうかは自分の力の及ぶところではないので、書き終えたらすぐに次の作品の執筆に向かうという方もいますが、僕はまだその境地に達していません。
夏のピルグリム」が二冊目の商業出版ですので、まだ一冊ごとが勝負の作品になります。

売れないことよりも、読者が望む物語を生み出せなかったことが辛いのかもしれません。クリエイターである以上、より多くの人に喜んでもらえる作品を作ることが、大袈裟に言えば使命だと思っています。
それができていない現実を知ることは辛いことです。
ただ、自分が全力を尽くした結果であれば、それが今の自分の実力なわけです。この先にできることは、自分の筆力を高めて、新たな物語を作ることだけです。

しかし、現実はシビアです。人が手に取らないような小説の作家は新しい本を出版することができません。
手に取ってもらえないのは実力が足りないと考えることもできますが、特に新人作家にとっては本の存在を知ってもらうことがまず大事です。知らない本を手に取ろうとする人は少ないですからね。
作家の考えや人となりを知ってもらえれば、本に興味をもってくれる人がいるかもしれません。
そのために、今日もnoteに記事を投稿しています。

著者初の単行本形式の小説「夏のピルグリム」がポプラ社より発売中です。「ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作です。よろしかったら書店で手に取ってみてください。善い物語です!


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