見出し画像

けんごさんが語る出版業界の未来について

小説紹介クリエイターけんごさんが、出版業界の未来について語っていました。ご存知の方も多いと思いますが、けんごさんはTikTokなどのショート動画で小説を紹介している第一人者です。
一度イベントでご挨拶させていただいたことがありますが、無名の新人作家である僕にも丁寧に接してくれて、とても誠実な方でした。

動画でけんごさんは、書店がどんどん減っている、このままでは書店がなくなってしまうと危機感を訴えていました。
けんごさんは、今の書籍のPRのやり方が時代に合っていないのではと語っています。

例えば、様々な本の帯にある「なんとか1位」は期限を作れば簡単にできるので、訴求効果は低いのではと言っていました。
また、けんごさん自身の経験として、「7万部突破」の帯を書店で見た友人に「こんな数字を書いて恥ずかしくないの?」と言われたそうです。
コミックでは7万部どころか数百万部のヒット作も珍しくありません。映画やアニメなどのエンタメと比べて、小説の売り上げは比較にならないほど少ないが現状です。
けんごさんが憂いているのは、そうした小説の売り方が、他の業界とずれてしまっているのではということだと思います。
TikTokなどのショート動画やSNSを使った売り込みをされていますが、まだまだ工夫できる余地があるのではと動画で語っています。

「1位戦略」も「数万部突破」をPRせざるを得ないのも、出版社が広告費が捻出できないからで、広告費がないのは本が売れないからです。出版業界はわかりやすくネガティブスパイラルに陥っています。
だったら、もっとお金がかからないSNSを活用すべきだという意見には同意です。
僕は、自分の本を手に取ってもらうために、noteに記事を毎日投稿しています。僕が知っている限り、小説関連の投稿を毎日欠かさず行なっているのは岩井圭也さんしか知りません。
とはいえ、僕がやっているのも、このnoteだけです。YouTubeで配信したり、TikTokに動画をアップしたりしていません。作者がもっとやれる余地はあると思います(作者自身がPRすべきかどうか議論はありますが、自分の本を手に取ってもらうために、できることはなんでも僕はしたい派です)。

「数万部突破!」というPR手法は、他のエンタメに比べれば数字が「しょぼい」かもしれませんが、これが出版業界の現状です。小説は映画やコミックと肩を並べるエンタメではすでになくなっています。
三宅香帆さん著「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」に詳しく書かれていましたが、明治から昭和にかけて「教養」のために人は本を読んでいましたが、ネットや他の情報が大量かつ気軽に入手できる現代では、教養のためとしての本の役割は縮小します(もちろん、ゼロではありません)。
ざっくり言うと、昭和までの本の売り上げが「バブル」だったわけで、今はバブルが崩壊し、読書は数ある趣味のうちのひとつに位置しているのだと思います。
ひとつの趣味の範囲で、他の作品よりヒットしたのであれば誇って良いですし、他のエンタメと数字を競う必要はないのではと思います。

ただ、書籍に求められているものが変化している過渡期の中で、多くの書店がなくなり、業界全体が縮小していくのは中の人たちには辛いことだし、業界にお金が入ってこなくなれば、高品質な書籍を出版できなくなってしまいます。
僕個人としては、もっと多くの人に本を読んでもらえたらと思いますし、小説の灯火を次世代に繋げるために、一冊でも多く本が売れるように努力をしていきたいです。

著者ができることは、善い小説を書くことだけだと思っていましたが、けんごさんの動画を観て、もっと僕もPRしていかないといけないなと考えを改めました。動画にも挑戦してみようかな、、、。

著者初の単行本形式の小説「夏のピルグリム」がポプラ社より7月18日に刊行されます。「ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作です。よろしかったら予約してください。善い物語です!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?