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珍獣、アイロンビーズ職人になる㊦/おやこで通う小学校⑯


「学校は時間で動いています!!!」

「◯◯さーん。そろそろ4時間目、終わり。給食の支度するよ―」

アイロンビーズに没頭する珍獣(兄)に、B先生が声を掛けた。
そう…D君に続く第二関門は、“時間の制約”。

「学校は時間で動いています!!!」

以前、支援級で授業に集中できずにいた5年生のEちゃんに対して
応援に来ていた、普通学級担当を受け持つある先生が、叱る意図でこんな一言を放っていた。

そうそう。学校って、そういう所だよね…。

学校では45分✕4〜6時間という時程に沿って、すべての物事が動いている。
そこにいる『ひと』ではなく、『システム』に合わせて動いている。
なぜなら、もしも個々がそれぞれの意志や考えに基づいて行動してしまったら
収拾がつかなくなり、学校の現場は回らないから。

…その論理は理解できるんだけど、もう少し、融通が利かないものかな…。
集団生活という大枠を崩すことなく、メリハリあるスケジュール感もだんだんと身につけながら
その過程である小学校生活においては、もう少しだけ、個々の気持ちや意欲に寄り添ってあげられないものだろうか。

わたしはつい、そんなことを考えてしまう。
そして目の前の珍獣(兄)は、

「あとちょっとだから!!」

と言い張り、頑としてビーズ並べをやめない。( ゚д゚)
なんなら逆ギレしている。

わたしは普段、親が側にいることに伴う先生のやりづらさをなくしたい思いから
特にこういった事態に際しては、傍観に徹するようにしている。
目標は『空気』だ。 モクモク((( (-h-) )))モクモク・・・☆、。・:*:・` ドロン

※とか言いながらリレーは走る テヘ

この時もチラ見しながら、息を詰めて壁と同化していた。 壁→ |_・) チラリ
B先生の対応は…

B先生は数秒、珍獣(兄)を黙って見つめ
次に、隣の部屋へと姿を消した。
隣では、皆が給食の配膳の準備を始めている。

集中してビーズをつまみ上げ、眼光鋭く並べ続けていた珍獣(兄)は
しばらくして、「出来た!」と声をあげた。
すると達成感に浸る間もなく、慌てながらも慎重にプレートを運び
先生に「これ、アイロンかけてね」と託してから
せっせと、ビーズを片付け始めた。

アイロンビーズに没頭しながらも
「もう終わらせる時間だ」という意識は、ちゃんと頭の片隅にあったのだ。
その上で、「アイロンビーズを完成させる」道を選んだけれど
完成させた後の仕草や行動を見ていると
集団生活・行動の中に、うまく『自分のやりたいこと』を織り込む術を
これから身に付けていけそうだな…と感じた。

『特別支援教育』は先生によりけり

そう予感できたのは、頭ごなしにスケジュールを守らせるのではなく
珍獣(兄)の「今、アイロンビーズを仕上げたい」という気持ちに寄り添ってくれたように
随所で“大目に見てくれる”、B先生のスタンスのおかげだ。

特別支援教育といっても、その具体的な実践の仕方は先生によってかなり違う。
B先生のスタンスが、正解かどうかは分からない。
でも、わたしはB先生の考え方と実践方法を、心から信頼しているし
B先生の元でなら、珍獣(兄)がその個性をもっと輝かせながら、集団での過ごし方も学べると思っている。

…だからそろそろ、母子登校は終わりにしませんかね。珍獣さんよ。


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