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ー拾弍話ー 決着


──俺はこの日、長年俺達家族を苦しめてきた悪霊と決着をつけることを決心した。




俺「除霊師さん、出来れば今日中にお祓いまで行ってもらえると助かるのですが…可能でしょうか?」




除霊師「かしこまりました。その予定でいきましょう。」






俺は除霊師さんに今日中に除霊まで行えるか確認し、了承を得た。






そして数分後、除霊師さんから霊視鑑定の返事が返ってきた。






除霊師「今霊視していますが、これ普通祓えない所か普通の霊媒師では返り討ちに合うレベルですよ。」

除霊師「確かにお話で聞いた通り、お婆さんの見た目をしていますが別のものと融合した存在がいます。」

除霊師「それの同族も含めて合計5体を確認しました。」






なんだ...?憑いているのは俺が幼い頃に見たお婆さんだけでは無いのか?
融合?見た目だけはお婆さん?
意味がわからない...

普通の霊媒師が祓えないレベルの霊が5体?
やばすぎるだろ...







除霊師「なんじゃこりゃ...」

除霊師「こんなの人でも無ければ動物でもない、神でも無い、妖怪でもない」

除霊師「都市伝説級の怪異に近いけどあいつらこんなに強くない。ただいまひとつ、正確に何であるか判別がしきれません。」

除霊師「力の規模の中でいうと、五体とも
神のレベルに達していますね…..」






人でも無ければ動物でも妖怪でも神でも無い?都市伝説級の怪異?
そんなの存在するのか?
聞いた事がない...

神のレベルまで達している?
そんな事ありえるのか?やばすぎるだろ.….






迫り来る命の危険を察した俺は
恐怖とパニックで震えが止まらなくなっていた…









…..だが何故か俺の頭の中で疑いの感情が過ぎる












.….もしかしたらこの人は俺を騙して金を巻き上げようとしてるんじゃないか?



そうだ、麗奈さんとこの除霊屋さんは二人で裏で組んで俺を騙そうとしているんだ。



そうに違いない。
今回の件は全て嘘だった、騙されていた。
霊なんて存在しない。それで終わりにしよう。


…..そう思い携帯を閉じた。
















..…俺は止まることのない激しい動悸と、左足の激痛に襲われながら


「なぜ俺はこんな目に合っているのだろう」




薄暗く長く続いていく通路で
激痛に襲われる左足を引きずりながら俺は思った。



恐怖と激痛に襲われながら
俺はこれまでの事を思い出した…..












麗奈(金縛りに合ってる時、知らないお婆ちゃん見なかった?)






・幼い頃に金縛りにあっていた事実
‪・一緒に暮らし始めてから父親が本性を現した、という昔から聞いていた母親の証言
・母親の原因不明の病。生死の境を一週間彷徨った事。

そして麗奈さんからの「金縛りに合ってる時、知らないお婆ちゃん見なかった?」という言葉


これを一発で当てられたこと。
これが‪”‬強い根拠‪”‬となった。






これらは‪”‬紛れもない事実‪”‬であり
俺の‪”‬左足の激痛‪”‬と‪”‬激しい動悸‪”‬は
今、「現実」に起こっている事だ。











間違いない。‪”‬奴ら‪”‬は確実に存在している。






俺はようやく冷静に戻れた。
そして決意した。






俺「お祓いの依頼、お願い致します。」






俺は麗奈さんの‬この人なら‪”‬絶対に祓える‪”‬という言葉を思い出し
除霊師さんへ除霊依頼の入金を完了させた。






除霊師「かしこまりました。入金ありがとうございます。確認できました。」

除霊師「肉体での殺し合いと似たようなものと捉えて頂くと分かりやすいですが、勝てる場合は数分で済みます。」

除霊師「手付金確認できましたので、これから倒しに行きます。」



俺「よろしくお願いします…..」











──数分程のお互い無言の時間が訪れた。




信じられない話だったが…
俺にはこの人しかいない。
この人に頼るしかない。




恐らく、激しい殺し合いが行われているのだろう。
俺はそう思った…




俺の母親は、父親と離婚してから女手一つで俺を育ててきてくれた人だ。

何でもっと早くに気づいてあげられなかったのだろう。
何でもっと大切にしてあげられなかったのだろう。
恐怖と後悔でいっぱいいっぱいだった。
絶対にこんな形で死なせたくない。











俺は祈るしか無かった。











───そしてついに、除霊師から返事が返ってきた。











除霊師「終わりました。お母様はご無事ですよ。」






良かった.....本当に良かった.….






ー2024年4月2日0時頃ー



──長年に渡る俺達家族の戦いに決着がついた瞬間だった。






俺「良かった…..終わったんですね…」


除霊師「はい。もう安心して大丈夫ですよ。」


俺「母親に憑いてたその5体は、もう完全に
消滅したんですか?」



除霊師「そうですね、もういませんよ。」 

除霊師「老婆の魂は仏の所へ送ってあります」






除霊師さんは話を続ける






除霊師「それと...分解して分かった事なんですが」

除霊師「‪”‬都市伝説怪異のような存在‪”‬が老婆の魂を利用して取り込み、化けた存在が5体いました。」

除霊師「‪”‬魂のない怪物”‬が魂をとりこんで一層強くなった、という感じです。」






悪霊になったお婆さんの魂を
また別のものが吸収して、更に怪物になった存在だったって事か...?
理解が追いつかない。






俺「そんな事あるんですね...」

俺「もしかして、その怪物の影響って自分も受けてたりしましたか?」

俺「自分、持病を持ってまして、もしかしたらその影響かな?と」




除霊師「はい。そうですね。」

除霊師「精神的にも肉体的にも影響を受けてます。周りにも影響を及ぼす、かなり危険な存在です。」

除霊師「人を殺せるレベルかどうかでいえば、殺せるレベルには達していますね。」

除霊師「精神崩壊させて発狂させたり、精神誘導して自殺まで持っていくルートなどやりようならいくらでもあると思います。」




俺「そんな恐ろしい霊だったんですね...」

俺「そこまで力があるにも関わらず、我々家族をすぐに殺さなかったのは、取り憑いてエネルギーをもっと吸収したいとか
じわじわ苦しませて死なせよう、とかそんな感じですかね?」




除霊師「あいつらにそうゆう目的意識があったかどうか...」

除霊師「少なくとも私の見解ですと、苦しめるとかそうゆう‪”‬人間的な感情‪”‬のこだわりは無かったと思います。」

除霊師「単に餌(エネルギー)をたくさん吸収していく為に殺さなかったのでは?と考えてます。」






‪”‬肉体のある生物‪”‬は、食べ物や水分を接種してエネルギーを供給して自らの肉体を保持し、生存していく事ができる。

‪”‬生霊‪”‬は生きている人間からの念である為
エネルギーの供給元がある。だから‪”‬死霊‪”‬よりも強いと言われる。

‪”‬神社の神様‪”‬は、生きている人間の信仰心や参拝者からのエネルギーと交換で
参拝者にご利益をもたらしたり、困っている人に力を授けてくださったりする。

‪”‬守護霊‪”‬は守っている人間からエネルギーを供給し、本人を守る。

だが成仏せずに
現世に留まっている‪”‬死霊‪”‬などの霊体となれば、エネルギーの供給元が無い為
生きている人間に取り憑いていてエネルギーを吸い取り、自らのエネルギーを供給していくのだという。
エネルギーを供給する理由の大半は生きている人間に悪さをする為。




今回のケースでいくと、その‪”‬怪物‪”‬がお婆さんの魂を吸収し、母親に取り憑いて自らのエネルギーの供給元としていたのだという。

そして彼いわく、悪霊や生霊、悪魔や鬼よりも遙かに強い存在であったようだ...






それが除霊師さんの見解だった。






俺「そうだったんですね...」


除霊師「そちらに霊感が多少でもあるなら、何か変わったとかいう変化分かりませんかね?」


俺「いえ、自分霊感あまりないので分からないんです。」


除霊師「では神城さんのご友人に確認して頂いてみてはどうでしょうか。」

除霊師「元々そのご友人に祓ってもらう予定だったんですよね?」






確かにそうだ。
明日、麗奈さんに母親の状態を視てもらおう。






俺「そうですね。分かりました。明日友人に母親の状態を確認してもらいます。」

俺「こんな夜遅くにご対応頂いて、本当にありがとうございました!」

俺「感謝の気持ちでいっぱいです。」



除霊師「いえいえ。また何かあれば、お気軽に何でも聞いて下さい。」



俺「ありがとうございます。そうさせて頂きます。」






──そして除霊師さんとのやり取りが終わると、自然と左足の激痛は収まっていた。





何だったんだろう...




だが動悸の方はまだ収まらなく
その後三日程続いた。






──こうして朝日が昇り、長い夜が明けた──


⇒(次話)ー拾参話ー   導かれし者

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