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ー零話ー 幼少期


ー2024年4月1日ー



時刻は23時を過ぎた頃───







──俺は止まることのない‪”‬激しい動悸‪”‬と‪”‬左足の激痛‪”‬に襲われていた。


迫る‪”‬命の危機‪”‬による恐怖


激しい心臓の音が叩きつけるように全身に鳴り響く。




「なぜ俺はこんな目に合っているのだろう」





薄暗く長く続いていく通路で
激痛に襲われる左足を引きずりながら俺は思った。






無情にも鼓動が荒くなり、息が詰まるほどの速さで俺の胸を打ち続ける。

それに合わせて
左足に悲鳴のような痛みが
まるで赤信号が点滅しているかのように断続的に続いていた──。

俺の体は動悸と痛みで震え、だんだんと目の前がぼやけていった…..







…..恐怖と激痛に襲われながら
俺はこれまでの事を思い出す────











…..時は遡り2024年から31年前

俺の名前は「神城 真」



ー1993年ー


とある産婦人科にて俺は生まれた。


産婦人科で母親の出産を部屋の前で心待ちにする父親。

産まれたばかりの俺を抱き抱え、半泣きしながら嬉しそうにする家族達。
そんな家庭に俺は生まれた。

当時の様子はビデオテープで保存されており、
その様子を俺は幼い頃テレビで流していたからよく覚えている。 







──時は経ち四年後──






ー1997年ー


俺は4歳になった。
この頃の俺は、物事をはっきり他人に言えない
いわゆる内気と呼ばれる性格だったのだろう。
周りに馴染めないからか、同級生からは虐められているような子供だった。



幼い頃の俺は生き物が好きであり
夏場は、父親や母親にセミ取りやザリガニ釣りによく連れて行ってもらっていた。




父親「真、今日セミ捕りに行こう!」

俺「うん!!」




俺の住んでいる地域では、セミの種類の中でも少しレアなものがあり
みんみんゼミと呼ばれる種類のセミがいる。


幼い頃の俺は、このセミを何とか捕まえたくて
夏場に父親と母親を連れ回していた。
父親と母親は、みんみんゼミを捕まえるまで
俺に付き合ってくれた。






他にも仕事が休みの日には父親とキャッチボールをしたり、凧揚げをした記憶がある。



俺の父親はふっくらとしていて背が高い。
いわゆるガタイのいい体格だったが
子供の面倒見が良く、笑顔が優しい。
そんな父親だった。






──冬になると俺の住んでいる地域には雪が積もった。


雪が積もった日には父親と母親と俺
家族三人で一緒に雪だるまをつくった。






そしてある日のこと
父親が仕事から帰ってきて
俺の大好きな新作のプラモデルを買ってきてくれた。






父親「じゃーん!真、これ今日買ってきたけど一緒に組み立てるか?」




俺「え!?買ってきてくれたの!?」

俺「うん!!一緒につくろ!!」






この時は今でもはっきり覚えているくらい
本当に嬉しかった記憶がある。






母親「真は将来何になりたいの?」

俺「昆虫博士!!」

父親「かっこいいなぁ〜!真ならきっとなれるよ。」






両親は、当時の俺の夢を‪”‬かっこいい‪”‬と言ってくれていた。




今となっては本当に幸せな家庭だったと思う。











…だが、この頃になって
母親が原因不明の病に倒れ
一週間生死の境を彷徨った。






なんとか一命を取り止めたが、後遺症は残ってしまったという。
この病が今後も響いていく事になる。 






──その約一年後──





ー1998年ー


俺は5歳になった。
俺達家族は、この頃からアパートで三人暮らしをする事になる。
薄いブルー色の綺麗なアパートだ。







そしてこの頃から
俺は少しずつ‪”‬不思議な体験‪”‬をすることになる。



周りの人が見えていない人が見えたり
嫌な気配を感じたり
この時は素直に気のせいだと思っていた。







──そして時間は流れ






とある日の夜、ある出来事が起こる。
父親と母親の大喧嘩だ。




俺は子供ながら二人の喧嘩を止めようと必死だった。






「お父さん、お母さん、お願いだから喧嘩しないで…」






家族三人で撮った写真を抱え、涙を流しながら俺は訴えかける。
だがその願いも叶わず────







数日後、二人は離婚することになった。
まだこの頃の俺は離婚という言葉を知らない。




母親に引き取られた俺は
「お父さんは仕事が忙しくてしばらく帰ってこないんだよ」
と聞かされていた。

そして三人で住んでいたアパートには父親がいなくなり、俺と母親の二人暮らしとなった。 











──それから一年後──











ー1999年ー



俺は6歳になった。
この頃から俺は、自分の住んでいたアパートにある強い気配を感じていた。

"髪の長い女性の気配"である。
冷たく尖ったような気配。
子供の頃の俺は本当に怖かった。
その女性を  "一度も見た事が無かった"  が、‪
何故か”‬髪の長いの女性の気配を強く感じる‪”‬
といったイメージだった。




寝ていた時に頻繁に”‬金縛り‪”‬にもあっていた。
恐怖で無理矢理全身を抑え込まれて全身身動きが取れない、そんな記憶が強く残っている。






そんな事が続いていたある日
不思議な出来事が起こる。







──とある日の夜、俺はいつものように布団の中で寝ていた。











──そして、朝目覚めると
‪”‬優しそうなお婆さん‪”‬が俺の目の前に座っていた。


歳は恐らく70〜80歳くらいで
着物を着ていて正座をし、少し下を向いていた







俺の方には気づいていない。







俺(誰だろう?)







じっと見ていると、そのお婆さんは俺の事に気づく。




ハッとした顔、びっくりしたような表情を見せてから
スッと消えていなくなった。



約2秒程の出来事だった。











「え??」
俺は困惑する。











──それからのこと、そのお婆さんを見てから俺は金縛りに一度も合わなくなった。




そしてずっと感じていた‪
”‬髪の長い女性の強い気配‪”‬
それもいつの間にか無くなっていた。






(…もしかしたら僕のひーおばあちゃんが、悪い幽霊から助けてくれたのかも?)


俺はそう思い、母親と母方の祖父母にその事を伝えた。







そしてその事がきっかけとなり、祖父母と母親、家族皆で九州まで旅行することになった。






九州に‪”‬曾祖母のお墓‪”‬があるからだ。







「ひーおばあちゃん、いつも守ってくれてありがとう。」






 
俺達家族は曾祖母のお墓に手を合わせた。







これが俺の‪”‬幼少期‪”‬である。



⇒(次話)ー壱話ー   青年期〜社会人

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