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わたしたちに翼はいらない


あらすじ

同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。マンション管理会社勤務の独身――園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。

選出理由

タイトルに負けたのと帯を飾る前田敦子さんと窪美澄さんの感想に気にならざるを得なかったからです。
寺地はるなさん作品自体は
「川のほとりに立つ者は」
の1作しか読んだことがなく
去年発売の「白ゆき紅ばら」も読もうと試みましたが合わなくて
もう1冊読んで寺地はるなさんの作品を合う合わない判断しようとしていました!
今作はとても良かったのでもう一回「白ゆき紅ばら」読んでみようと思います。

感想

自分を殺さないともっと惨めになる。
生きるために本音すら隠して生きる莉子
過去を清算できず今も尾を引いているのを感じる園田
「翼がある」と言われても地べたを歩いていく朱音
この3人が交わる瞬間何が起きるのか

依存か復讐か前進か
きっかけは些細なことだけれども蓄積されたものが過去を思い出させ満たされた何かを干上がらせる。
積み重ねられてきた自尊心が外に出ることで打ちのめされ、
自分を殺してきたことに気付く。
過去の自分に似た青年に自分を重ねて復讐を肯定してしまう。

現状打破の為の一歩はとても重く踏み出せばいつも簡単だ
ページ数にしたら227ページ
今年読んだどの本よりも内に秘めているものへの核心に迫っている気がした。
それは重厚感があり、見たくないのに見える世界のようで
見ようとしないと見えない世界も広がっていました。

(家族とも友人とも肝心なところで言葉が通じなかったが本の中の人とは通じた。
虚構には現実よりもたしかな手応えがあった)

「犀の角のようにただ独り歩め
雲に届くように高く飛べ、きみには翼がある」

なるほど確かに加害者や傍観者を守るために用意された物語だ。構図は変わらないと言うのも納得してしまう。
1人でいくら強く生きたところでいじめをした人に加害者に罰が下るわけではない不平等。

「曖昧な物言いが命取りになるんです、」
言葉のやり取りで傷つく。
大丈夫ってどっちの意味なのか
思わせ振りであったり、女の子は特に気を付けるみたい
男は単純ですしね笑

最後に

この目で見えるものだけを追おうとするから
視界が曇る
擦ってクリアになり
俯瞰する
被害者ぶるつもりはない
肯定するのは簡単だ
心のそこから
うんって頷くことは難関なこと
口にすれば惨めだ
独り言ならまだしも第三者に言えば
出来上がってしまう構図
欲しい言葉なんてない
現状を打破したいだけ
魂の籠った言葉なんてない
冬に見掛ける白い吐息のように
空中で消えていくだけ
そうしていじめられた結果が残る
清算の仕方なんて知らない
引き摺って今を生きる
歩くペースが緩んだ今
復讐がはじまる

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