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ブリッジ愛好家で知られる小説家サマセット・モームの作品の中からブリッジが登場するものを探してみた

前回の「ミステリ作家エラリー・クイーンの作品の中から「コントラクトブリッジ」が登場するタイトルを探してみたという話」という記事で、国立国会図書館デジタルコレクションを利用して「ブリッジ」がワンフレーズでも出てくる文学作品探しをしたのですが、今回はイギリスの小説家サマセット・モームの作品を対象に検索してみました。
過去に当方のnoteで紹介したことがありますが、モームはブリッジ愛好家としても有名で、自身の作品にもブリッジを登場させることがしばしばあったようです。とりあえずですが、現時点で調べがついた作品をご紹介したいと思います。
なお、タイトルの邦訳は出版社ごとに異なる例があるため、文献探索の際はご注意ください。また、Amazonで購入して読むことができる書籍へのリンクは入手しやすそうなものの一例ですのでご参考まで。

長編に登場する例

『The Moon and Sixpence(月と六ペンス)』1919

イギリスでの人生を捨て、フランスで画家として生きようとする男を描いた物語です。過去記事「ブリッジやホイストが出てくる名作文学」でもご紹介しましたが、主人公の男が妻に内緒で外出をする口実として「ブリッジクラブに行く」ことを利用しています。

『The Painted Veil(彩られし女性、五彩のヴェール)』1925

中流階級の女性キティが疫病研究をしている夫と関係を深められず他の男と不倫をするが、2人の関係はどうなるのか。この作品ではキティが自分の夫を評して「ダンスもピアノもテニスもブリッジもみんなダメ」という趣旨の記述があります。
(過去には映画化もされているよう。)

『Ashenden: Or the British Agent(アシェンデン、など)』1927

ジャーナリスト兼情報部員の主人公アシェンデンの手記という形式をとった短編作品の連作集です。登場人物たちの社交の一つとしてブリッジが行われています。

『Cakes and Ale(お菓子とビール、お菓子と麦酒)』1930

作家である主人公が亡くなったとある文豪の伝記執筆に情報提供するため、文豪とその最初の妻ロージーとの思い出を語る回想録。本書のメインヒロインでもあるロージーがブリッジを嗜んでいます。

『Theatre(劇場)』1937

ベテランの舞台女優が主人公の愛憎劇。ブリッジを嗜む登場人物が複数登場します。
(比較的新しい出版例は以下の新潮社版と思われますが中古品になります)

『The Razor's Edge(剃刀の刃)』1944

第一次世界大戦で友人を亡くし、自分探しの旅に出る男の物語。長編のようで内容をちゃんと読めていないのですが、ブリッジを嗜む登場人物がいるようです。
(翻訳本は過去に新潮社や筑摩書房から出版されていたようです。)

短編に登場する例

「Rain(雨)」

長雨に理性を乱される宣教師の悲劇を描いた短編。冒頭で「喫煙室で昼も夜もポーカーやブリッジをして酒を飲んでいるような連中」という言い回しが出てきます。
(『The Trembling of a Leaf』(1921)に収録)

「Footprints in the Jungle(密林の足跡、など)」1931

イギリスの植民地であったマレー半島にあるクラブでブリッジを通じて知り合ったカートライト夫人の秘密とは。
(『Ah King』(1933)などに収録)

「The Book Bag(書物袋、など)」1932

こちらもマレー半島が舞台。冒頭で、主人公の作家とその地で出会ったマークという男がブリッジをして親睦を持ちます。
(『Ah King』(1933)などに収録)
(上記2作品はちくま文庫『アー・キン』に収録されていた模様。)

「The Three Fat Women of Antibes」

こちらは過去記事「ダイエットとブリッジの絆で結ばれた仲良し三人組の友情とは?〜「アンティーブの三人の太った女」」でご紹介したことがありますが、ダイエット仲間でありブリッジ仲間でもある3人のご婦人たちの友情を描いた短編です。
(『The Mixture as Before』1940に収録)

以下は内容未確認ですが、検索でヒットしたタイトルを列記しておきます。(余裕ができたら追記予定)

「The Treasure」

(『The Mixture as Before』1940に収録)

「The Facts of Life」

(『The Mixture as Before』1940に収録)

「Appearance and Reality」

(『Creatures of Circumstance』(1947)に収録)

「A Woman of Fifty(五十女)」

(『Creatures of Circumstance』(1947)に収録)

「WINTER CRUISE (冬の船旅)」

(『Creatures of Circumstance』(1947)に収録)

まだ調査途中ではありますが、ほんの一言でも「ブリッジ」が登場するモームの作品の例として、これだけの作品があることがわかりました。
現在では翻訳本が入手しづらいものもありますが、古い訳のものであればどれも国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができますので、気になる作品があったら読んでみてくださいーではー。

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