"見たつもり"が、通用しない映画の話。

おうちシネマ録#2

昨夜、レイトショーを会場しました。上映作品は、こちら。

今夜、ロマンス劇場で(2018)/ 武内英樹監督

土曜に地上波で放送されたようですが、我が家は録画機能のないテレビなもので案の定、見逃してしまい…

その後、どうしても、見たい気持ちが募り、Amazon primeにておうちシネマを会場したという運びです。

この作品と出会う機会は幾度もあったにもかかわらず、見るには随分と長い時間を要してしまいました。もう少し早く見ればよかったのに…

その要因は、他でもない大衆人気作品に対する私の悪い思い込み。

ちゃんと見ていないのに、「(内容を)わかっている、つもり」になっている件。今回の作品は、私のこの作品鑑賞前の思い込みが、何度となく覆されました。

つまり、とてもとても良かったのです。

以下、ネタバレあり✂-----------------------------------------------------

以下あらすじ

映画監督を夢見る青年・健司が密かに想いを寄せるのは、通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた古いモノクロ映画のお姫様・美雪。今は誰も観なくなったその映画を、毎日のように何度も繰り返し観ていた健司の前に、ある日奇跡が起きる。美雪が健司の前に突然現れたのだ。その日から2人の不思議な同居生活が始まった。モノクロの世界しか知らない美雪にカラフルな現実世界を案内する健司。同じ時間を過ごす中で、2人は次第に惹かれあっていく。しかし、美雪にはある秘密があった。現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうのだ。そんな中、美雪は映画会社の社長令嬢・塔子が健司に想いを寄せていることを知る。好きだから触れたい、でも触れられない……。この切ない真実に2人はどう向き合い、どんな答えを出すのか――(C)2018 フジテレビジョン ホリプロ 電通 KDDI (amazon prime 冒頭説明文より)

この映画の魅力の一つとして、何度となくオマージュを感じさせる作り。

先月、個人的に「ニュー・シネマ・パラダイス」を見たこともあり、映画全盛期の客の盛り上がりや映写室のシーンが重なりました。

時折、オードリーを彷彿とさせる美雪、そしてそのクラシカルな衣装たちが乙女心を擽ります。京映の社長令嬢・塔子のお嬢様衣装も悶えるくらい可愛い。映画の中から飛び出してきた美雪の衣装が場違いに目立つことなく、溶け込みます。60年代のファッションってほんと、魅力的ですよね。

それと、忘れてはいけないのが、美雪の色への好奇心。ドロップを投げつけたり、ペンキをまき散らしたり(これだけ聞くと違うドロップ?)、蛍、かき氷に惹かれたり。

とてつもなく、気持ちが分かる…

私自身、大学で色の研究をしているほど、色彩が大好き。その美雪への共感の意味を込めてもこの作品が好きになりました。

ドロップ缶、私も部屋にまき散らして眺めたい…

…とこの具合に視覚的にも十分に満足感を得られるわけですが。


この作品の肝となる、”触れられない愛のカタチ”

これがやっぱり印象的でした。

終盤、ビビビと来てしまい、ハンカチを用意していなかったことに後悔しました。

地上波での、放映意図はここにあるのでしょうか。そんなことに、ふと気づき。

昨今の状況でより引き立つ、といいますか…この作品から得るものをより自分や世の問題としてリアルに感じた人も多いのではないでしょうか。

愛していても、触れられない。

触れられないのなら、愛せない?

その、難しい問いにこの作品は、二人の人生の歩み方から、一つの答えを届けます。説教がましく、語るのではなく、自然と伝わるような形で。きっと、伝わる人にはこれが単なるファンタジー・ロマンス映画とは思えないのではないでしょうか。

私には、なにかこれからの人や大切なものとの向き合い方の一つを教えてもらったと感じ得ました。


伏線回収(視聴者に伝わりやすい形の)、ストーリー性、映像。すべてが見事で、丁寧に丁寧に作られているのが映画初心者の私にでもひしひしと伝わってきます。

今回は、どちらかというと精神論的な部分を読み取る、という形で見ていたので、二度目の再生は、一度見ただけではわからなかったオマージュや伏線、小道具に着目したいなぁ。

この作品のラストは、私にとっては今まで見た中での一番のハッピーエンドでした。

運命には逆らえないの、で終わらせないのです。

触れることのできない、その運命を受け入れ、ただ共に生きることで愛を育み続けたふたり。

「もののあはれ」とはまた違う、新しい形の結末。


運命受け入れ、どうするか、


それを問い続けることの大切さをこの作品を通して、想いました。


※あくまでも、個人的な見解、感想です。表現が至らない点ございましたら申し訳ありません。どうか、お手柔らかにお願いします。







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